<16> Raquel

 そして、あたしはあたしが望んだあたしの名を世に知らしめた女の娘に、待ち望んだ装いを着せかけられた。

「どうかロベルティーネ夫人の品の代わりに、殿下」

 高貴な少年の装いに、やっとあたしは身を包む。

 並び立った三人の女当主たちが、いつかあたしを王子様みたいと呼んだことを思い出す。

 ようやっと、ようやっと。

 ロベルティーネが裾を裂いたドレスは、ロディアの手で脱いだけど、髪は短いままだった。リベカとリュトとルフィーナは、あたしのことを王子様と囀った。過労と足の傷の激痛に朦朧とするロディアに、あたしは男の名前を吹き込んだ。

 だから、これで、ようやっと。

 “あたし”は“私“になれるのだ。

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