デザートを愛でるヴァリアッテ


 ヴァリアッテ・スノーホワイトはデザートをまずは目で楽しむようにしています。


 お気に入りのお皿の上にのせて、様々な角度から眺めて、まずはデザートを目で愛でます。

 その時に、どんな味がするのか、最初の一口目の感触はどうなのか、といった事を想像するのが、ヴァリアッテの楽しみの一つでした。

 当然、久能が持ってきたデザートも同じようにお皿の上に載せて目で愛で始めました。


「焼き菓子……か」


 久能が頼まれたのは、クッキーに似た焼き菓子でした。

 しかし、形が久能が知るクッキーとは異なり、ペンタグラムの形でした。星形かと思ったのですが、微妙に違う事からよくよく見てみると、ペンタグラムだったので驚いたほどです。

 どうやら、この惑星ではその形のクッキーが一般的なようでした。


「形状は華麗で、焦げ目もない……なるほど。して、味は……」


 見る事に満足したのか、ヴァリアッテはクッキーを一つ手に取り、口へと運びました。

 一口かじったとき、カリッと爽快な音がしたように久能は感じました。


「人気になるのも頷ける。ほどよい甘みであるな。甘過ぎなところがなお良い。これならば、いくらでも食べられそうだ」


 ヴァリアッテははそう言いながら、一袋のペンタグラムクッキーをペロリと平らげてしまいました。


「ヴァリアッテ、僕の分も食べる?」


 食べ足りないのでは、と思ってそう提案すると、ヴァリアッテは久能をギロリと睨み付けました。


「それでは、余が接収したようではないか」


「でも、足りたの?」


「うむ。久能の世界では、腹八分目というのではないか? 余はそれで良いのだ。満足してしまっては、これで終わってしまうのでな」


「なるほどね」


 ですが、久能は自分の分を食べずに屋敷に持ち帰り、夕食の時に一緒に出すようにとメイド長・アッサンに渡したのでした。


 ヴァリアッテがデザートを愛でる仕草をもう一度見たいと思ったからでした。



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