第14話 コスチュームプレイ

コスプレ衣装の装着は、案外簡単だった。衣装かと思ったそれは、なにやら機械を内蔵した樹脂製のもので、着るというよりは潜り込む要領だ。

「なんなんです、これ?」

ハヤマが呆れて言う。

「これはパワードスーツです。最新の宇宙服の技術を応用したものですね。まあ生命維持装置が必要ないぶん、かなり小型軽量ですが」

「小型、ね」

小型というにはちょっと大きいのでは。ミコトは言葉を飲み込んだ。着込めばかなりマッチョな体型になりそうだし、だいたい女性一人で持ち運べるような重さではない。ここまでだって、男性隊員が2人で担いで運んでいる。

「それでも倍力装置はありますから、着てしまえば軽々動きますよ。人間の何倍もの力持ちなフレンズに紛れるには、これくらいないと」

「野生動物相手にしたら、じゃれつかれただけでも大怪我ってわけか」

「それに、人間はここにはいないことになってますから。うっかり見つかってもいいように」

「で、これですか」

ミコトは頭の上の大きな耳とお尻の尻尾を指差した。

「俺たち三人が女性なのは、このためだったんですね」

「それは偶然なんですが、まあ都合はいいですね」

ハヤマはなにか犬に似たフレンズのようだ。

「フレンズは基本的に同種が一度に現れることはないとされているので、現在までジャパリパークで確認されていないフレンズのデザインにしてあります。ミコトさんはスナドリネコ。海辺で魚を捕るネコ科の動物です」

言われればネコ科は納得だ。頭に縦のライン模様が入り、なかなか精悍な感じがしてミコトの好みである。

「ハヤマさんはオオミミギツネ」

「おお、オオカミ、いいね」

「オオカミ、じゃなくてオオミミ、シロアリを主食とするアフリカの犬です」

「シロアリかよ!」

ハヤマは少し不満そうだ。

「そして私はナマケグマ、長い爪と短い尻尾、好物はハチミツです」

大柄なヤマザキは、意外にもフレンズの姿が似合っている。

「なんだか黄色いクマさんみたい」

「でも、トラと戦って撃退した例もあるそうですよ。じゃあ、ジャパリパークの探検に、出発しましょうか」

音を立てない人工筋肉のパワードスーツは、しっかりと歩き出した。

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