帝都大学付属中学校
episode零 「あ、あった。」
「あっ、あった」
そんな空虚な言葉しか発する事は出来なかった。
そこそこ有名な名門中学校『帝都大学付属中学校』を受験し、今日がその合格発表。ちなみに掲示は受験を届け出た順番の番号で、私の番号は受験者の中で割と最初の方。なんかおにーちゃんが朝早くに起きて届出に行ってくれたんだっけ。
そして、冒頭でも言った通り、私の番号は確かにあった。てことは帝大付属に入学するんだ。
その事実のみが頭の中を支配する。
私が帝大付属への受験を考えたのは些細なことで、小学の時の自分の二の舞を踏みたくはなかったのだ。周りの人、環境。全てを変えて私はゼロから生活を始めたかったのだ。あ、これそんなに些細なことじゃないかもね。
受かった、というか受かると思ってはいた。
これは慢心でも何でもなくて、普通に模試とかでもA判定しかもらったことはなかったのだ。自己採は一応したが、例年のボーダー点より100点以上は高そうだった。400点満点の中での100点だから相当だろう。頭の出来は小さい頃から無駄によかったのだ。だから正直合格はほぼ約束されていた。だから、合格が分かっても感極まって泣き出すなんてことはしないし、そこにいる男子達みたいにガッツポーズして駆け回るなんてこともしない。
ただ、これでやっと、6年間一緒だった小学校の時の馬鹿みたいな群れからは外れることはできると認識したのは、やはり自分の番号を見た時だった。若干の安堵感を感じたのは事実だ。
「……、おにーちゃん、別に合格発表こなくていいって言ったじゃーん。」
「あ、やっぱりバレたか。我が深淵の刻から出でて盟友の行く末を確認するのは盟友としての義務なのだ……。」
こんな感じで
「つくるちゃんね!受かったよ!!やったぁ!!」
私は女優だ。相手に応じてキャラを使い分けるのなんて造作ない。おにーちゃんには基本ハイテンションである。
「おおー、やっぱりそうか、おめでとうな。まぁ、我が神聖なる魔の力で祈っていたおかげかな……フッ。」
「はいはいありがとうございますその力のお陰ですねはい。」
「フッ、もっともっと感謝するがよい…」
「え、おにーちゃんマジでつくるちゃんに感謝されてると思ったの……?」
「してないの!?!?」
「まーいいや、いつもありがとね」
そう言い残し私は家路につく。おにーちゃんは今から学校へ戻るらしい。おにーちゃんは学校をサボってまで私の結果をこっそり見に来てくれたのだ。まぁ、ただサボりたかっただけかもしれないが……。
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