運命の振り子は今でも揺れている

扉が閉まるまでの十七秒。
そのわずかな時間の葛藤、逡巡、焦り、諦め。
閉まった瞬間の、ほんの一瞬の無音。
そこから静かに始まる電車の発車音。

雨上がりの湿った空気。
傘の先から滴る水滴。
雲の隙間から細く差し込む光。

ステンカラーのコートと魔法の杖。
揺れ続ける運命の振り子。

この物語は静けさとひんやりした空気に満ちている。

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