第5話 寝起き

「今日のところは遅いからここにいてもいいよ。」

俺がそう言うと雫ちゃんは首がもげるんじゃないかと思うくらいに何度も頭を下げた。

警察に連絡することも考えたがめんどくさいのでやめた。明日のことは明日にでも考えればいいだろう。俺はそう思い、今日のところは雫ちゃんを家に置いておくことにした。



目を覚ますとあれだけ散らかっていた部屋が綺麗になっていた。はて?妖精さんかなぁ?なんて寝起きの頭で馬鹿なことを考えていると、視界の端に小さく動き回る影が見える。好奇心にかられ後ろから抱きついつ見ることにした。


ガバッ すりすり???


きゃーー⁉︎


突然の悲鳴に寝ぼけていた頭が覚醒する。そして今の状況のヤバさに気づく。男子高校生が(おそらく)女子小学生に抱きついている光景なんて側から見なくても犯罪ものだ。


俺はすぐに雫ちゃんから離れると五体投地で謝る。


「ごめんなさい!出来心だったんです。」


我ながらフィギアスケートだったら満点が出るんじゃないかと思うくらいに綺麗な回転土下座だった。とくに土下座の前に軸足から踏み切り、4回転するのがコツだ。

ってそんなことは今どうでもいい。顔を上げて雫ちゃんを見てみると耳まで真っ赤になっているので恐る恐る聞いてみる。

「怒ってる?」

「お、怒ってはいませんよ、ただびっくりしただけです…大きな声を上げすみません。」

雫ちゃんはこんな俺を許してくれるどころか逆に謝ってきた。罪悪感が…

「そ、それであれだけ汚かった部屋が綺麗になっているのは君のおかげかい?」

「はい、昨夜泊めていただいたのでそのお礼にと…ご迷惑だったでしょうか?」

と上目遣いに聞いてくる。この世界に幼女の上目遣いに勝てる奴がいるだろうか!いやいない。それにこのゴミ部屋を掃除してもらって文句を言うほど外道でもない。

「ありがとうね、雫ちゃん。」

そう言って雫ちゃんの頭を撫でるとほわぁ〜って感じの顔になっている。可愛ゆし。

このまま学校ふけて雫ちゃんを愛でてもいいなと思っていた時、


ピンポーン


と、インターホンが鳴る音がする。


や、やばい、もしかして全国の最寄りの交番に24時間駐在していらっしゃる青い制服のあの方達ですか!さっきの悲鳴が原因で通報されたのか?いや、昨日幼女を連れ込むところを誰かに見られたのか?


ピンポーン


と、再度インターホンが鳴る。俺は戦々恐々と扉に近づく。そうだよ、俺なにも悪いことしてないし。幼女保護しただけだし。うん。明日の朝刊の一面にはならないはず!

意を決して扉を開けると…


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