第9話 Ⅰ 魔法

「魔法とは、瞳の色で属性がわかります。レイウスのように赤系の瞳は攻撃の魔法が得意です。青系の瞳は治癒の魔法が得意です。黄系の瞳は状態以上など補助の魔法が得意です。」


 僕と鈴音は講習会のように黒板を背にしたスレイアから魔法の基礎を学んでいた。


「レイウスのように純粋に赤、青、黄の瞳は珍しいです。多くの魔法使いは私やガーウィンのように二色が混ざっています。例えば私の紫色の瞳は赤と青、攻撃と治癒の魔法が程よく使える目安になります」


 背後にはレイウスとガーウィンが立って待機している。


「瞳の色の明るさも重要です。暗い色ほど多くの魔法力を持っていることになります。明るい色ほど魔法に耐性が有ります。この法則でいくと創生の神子以外には確認されていない黒の瞳は三色を混ぜ、さらに暗い色です。どの魔法も使え膨大な魔法力を持っていることになります」


 やけに瞳の色を気にしていたことに納得した。黒目=創生の神子である見極めの基準でもあったから執拗に気にしていたんだ。


「レイウス、私、その魔法ってやつを見てないんだけどなんで?命奪いあう戦場だったのにこの国の兵士は魔法を使っていないかった」


 鈴音が質問をする。


「リンネル様には申し訳ないことに、王都城にいらっしゃった時にガーウィンの無力化の魔法を体験して頂いております。それに加え、リンネル様が行動を共にされた部隊は魔法使いと人間のハーフを集めた部隊です。ハーフは人間の血が入っているため魔法が使えないのです」


「リンネルって誰よ」


 鈴音の突っ込みはスルーされた。


「魔法力の強い人たちが召喚の儀式をしていたから、魔法力が無いハーフ部隊が戦場に出ていた……ということですか」


 僕の予想は半分裏切られた。


「それもございますが、領主の中にはハーフを良く思っていない者もいます。純潔主義です。そういった者がハーフ部隊を優先的に特攻として前線に向かわせています」


 

「バカらし」


 鈴音は席を立つ。


「この10年で10あった領地が半分にまで減っているのに。さらに生まれの差別で部隊の人員配置?滅べば?」


 鈴音はハーフ部隊と戦ったんだっけ。人、殺しちゃったかもって落ち込んでたけど、結構肩入れしているな。


「鈴音、最後は言い過ぎだよ。でも、僕もそんな考えの人はごめんだな。スレイアとガーウィンとレイウスはどうなの」


 軽く切れた鈴音は窓際で外を見ている。


「我々は差別をしておりません。差別とする者もいれば、中立の者、ハーフを擁護する者などそれぞれおります。人間の侵略により人間に対する憎悪、嫌悪をハーフに向ける者が増加したことは事実ですが」


 レイウスが答える。

 

「魔法使いが何かしているわけじゃないなら、どうして人間はこの魔法使いが集まってできた国を攻めるの」


「何かあれば魔法を使って人間を服従させられるのではないか、という恐怖心から民衆を言葉巧みに操り反魔法使い感情を高めたのです。私たちは魔法が使える。だからと言って魔法で人間を傷つけようとは考えていません。少数ですがそういった過激派もおりますが、魔法使いは魔法使いが律する法が有ります」


 僕の素朴な疑問にスレイアが丁寧に答える。


 席に戻った鈴音はポーカーフェイスを装っているけれど、何かいたずらを思いついた時と同じ雰囲気が微かにして僕は どうか二人で無事に帰れますように と切に願った。

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