忘れし温もり

ガルガード

無口な青年の悲しみ

土砂降りの雨の中


彼はただ冷たくなっていく仲間の体温を感じながら光を失った………






黒雲(こくむ)視点


依頼主「依頼の最初にまず「話をしてほしい 必ず無言でないこと」を入れる」


黒雲「言われなくとも分かります」


依頼主「口の利き方に気をつけろよ殺し屋」


黒雲「時間が押しています」


その日 黒雲は依頼主の元に赴き依頼内容を聞かされる


依頼主「八九(やく)」


依頼主「…………」


依頼主「すまないね………何分抗争直前で」


黒雲「問題ありません」


黒雲 本当に早くしてくれ………時間が押してるんだ


依頼主「で 依頼主なんだが」


依頼主「敵組織の有力な情報を盗んできてほしい」


黒雲「1時間300万スタートで1つの情報につき200万の上乗せ、戦闘になった場合上乗せとして1人につき30万の上乗せ、予定時間に遅れた場合私の時は遅れた分を料金から削除し、お2人が遅れた時は200万ずつ上乗せをします ここまでの説明で何か質問はありますか」


依頼主「いくらなんでも高すぎる 1時間50万」


ここで黒雲の値切りタイムに突入


黒雲「300」


依頼主「………80」


黒雲「300」


依頼主「100」


両者譲らない


依頼主「150」


黒雲「………150でいいでしょう」


そして半額になったところで黒雲がそれでいいと言うのでそれで決定


黒雲「時間はどうしますか」


依頼主「4時間」


黒雲「後払いになるので4時間後にまた」


依頼主の言われた通りに黒雲は4時間後までに仕事を終わらせようと予定を調節


構成員「あれ One Wolfじゃん」


構成員「首領が依頼したらしい 値切りに値切って1時間150万だってさ」


構成員「たっか?!」


黒雲 元々俺は100万スタートだからな……まぁ今回の依頼は値切ったとしても元は取れるからいいけどな


そんなことを思いながら依頼主の城の食堂で持参したパソコンで情報を集める


黒雲 数にして20個か………この時点で2億で150万………まぁまぁだな


情報を集めだして1時間で20個も情報を得た黒雲はパソコンを閉じ当初予定していた会合へ


情報屋「なんだ 仕事中か?」


黒雲が来たのは情報屋と殺し屋が集う会合


黒雲「…………」


情報屋「予定通り1時間で終わらせるから座れよ」


黒雲「…………」


情報屋「「ありがとう」って?どういたしまして で頼まれた内容なんだけど………」


情報屋の多くは無口すぎる黒雲の言葉を理解しており喋らずとも通じ合う


黒雲 数にして30って所か………3億加算っと


情報屋「もう行くのか?」


黒雲「…………」


情報屋「次の会合は20日後な 同じ時間………つか送るよ」


黒雲「…………」


黒雲が情報を得て時間丁度だったので立ち上がると情報屋の面々が送ってくれるらしく、唯一黒雲の過去を知る情報屋が一緒に依頼主の城へ赴くとのこと


情報屋「ほんと無口だよなお前 言葉わかるからいいけどさ」


黒雲「…………」


情報屋「「そもそもなんで通じるんだ?」って?なんでか分かるんだよ お前は俺の友人に似てるからかもしれない」


黒雲 「友人に似てる」………か………


黒雲「…………」


情報屋「俺の友人は生きてるのかって?いや………もう随分と前に死んだよ 戦闘中に息子庇って」


黒雲「…………」


黒雲 地雷踏んじまったか………


黒雲「…………」


情報屋「謝んなよ 気にしてない」


完全に一方的に話している感じしかしない2人だが会話は通じている


黒雲「…………」


情報屋「迷惑料?それお前のポケットマネーじゃないのか?」


黒雲「…………」


情報屋「別に気にしなくていいぞ?」


黒雲は情報屋に煙草を渡すとその煙草の箱の後ろには札があり、情報屋は「気にしなくていい」と言うが黒雲が譲らないので結局受け取りポケットにしまう


情報屋「お前さ 墓参り行ったか?」


黒雲「毎年行ってる」


情報屋「お前普通に声出るのか………60年来の付き合いだが初めて聞いたぞ」


珍しく黒雲が依頼以外で声を発したので仲のいい情報屋も初めて声を聞いた


黒雲「………俺がもっと強く言っていればあいつは死ななかったのかもしれない」


黒雲 もう62年前の話だが………それでも俺はあいつを失った日から声を出さなくなった………元々仕事では無口だったが余計に………


62年前………黒雲は恋人でもあった相棒を戦闘によって失った………土砂降りの雨の中黒雲がその人の元に駆け寄った時にはもう………その人は既に事切れ心地よかったはずの体温が失われていく最中だった………その日を境に黒雲は前よりも無口になり仕事であろうとなかろうと声を出さなくなり………情報屋には声がなくても通じるのだが他の人達はほぼ通じない


構成員「黒雲さん」


黒雲「…………」


構成員「いやあの………勝手に殺さないでくださいよ………生きてます」


黒雲 たまにいるんだよな………声を出さない俺の言葉が通じるやつ………まぁあいつの弟だからだろうけど………


声をかけてきた構成員は62年前に失った人の弟でその人も声を出さずとも話が通じていた、だからなのかその弟も黒雲の言葉が通じるらしく普通に会話が可能


黒雲「で お前はなんでこの城に赴いたんだ?」


情報屋「普通に情報提供………」


黒雲「確かに声を出すのは珍しいけどそんなに驚くな」


情報屋「すまん………」


黒雲 まぁ普通は驚くよな………普段声出さないし


構成員「よかったらどうぞ」


黒雲「お前よく俺の好み知ってたな」


情報屋「ありがとう」


構成員が気を利かして軽食と飲み物を持ってきてくれて礼を言う


黒雲「そう言えば今日ラミがいなかったがあいつ今何処にいるんだ?」


情報屋「なんか海外に行ってるらしい 明日には帰ってくるってさ」


黒雲 まぁ世界各地にラミの情報を求めてるやつはいるからな………


などと思いながら黒雲は手に入れた情報をわかりやすく書類に書きクリップで止める


〜予定の4時間後〜


黒雲「4時間で600万に情報数50で5億、戦闘と予定超過無し………5億600万です」


黒雲は最初に入った部屋で依頼主2人にそう言いつつ書類を渡す


依頼主「この書類の分も入ってるのか?」


黒雲「入っていません こちらの好意です」


依頼主「わかりやすい………」


黒雲「それなら良かったです」


依頼主にも満足してもらった黒雲は全額きっちり払ってもらい待っていた情報屋と城を出ていく


情報屋「俺こっちだから じゃあ20日後に」


黒雲「また」


途中情報屋と道が違う黒雲は情報屋と別れて貰った報酬金の9割をある場所に振り込む


黒雲 まだ足りないか………後2兆………頑張らないと………


黒雲は9割を振り込んでも尚足りない金額に頭を抱えながらある場所へ


黒雲「兄さん」


黒雲は病で入院している兄 黒葉(くろば)の元に来た


黒葉「黒雲 仕事帰りに来てくれたのか?」


黒雲「うん 体調どうかなって」


黒葉「良くなってんだかなってないんだか分からないな けど動けるようにはなったよ」


黒雲 早くお金を振り込まなきゃ………兄さんが危ない………ただでさえここは闇………光ならまだしも闇の中では兄さんの名前を知る者が多い……


実は黒雲のいる病院は光の世界ではなく闇の中で黒葉のことを知るものが多い………故に黒雲は身を削ってでもお金を稼がなければならないのだ


黒雲「良かった 俺明日から3日間仕事で来れないから………ごめん」


黒葉「謝るな ………分かった気をつけてな?」


黒雲「うん」


黒葉は黒雲が無理をしてお金を稼いでいるのを知っていた………でもそれを言ったら黒雲が苦しむのではないかと思い言えない


黒雲「それじゃあ俺もう行くね」


常に20分未満の時間で見舞いに来て退室する


黒葉「分かった 仕事頑張れ」


黒雲「………うん」


兄相手に黒雲は涙は見せない………それこそ声が震えていようと関係無しに………


黒雲「………雨………降ってるな………なぁ………夜月(ないと)………」


黒雲は雨が降る中傘もささずに1人で墓場に来ていた………生まれて初めて兄以外で自分を愛してくれた人の墓に………


黒雲「夜月………なぁ夜月………教えてくれ………俺はこれからどうしたらいい………?お前のいない世界でどう生きていけばいいんだ………?」


膝立ちをしながら黒雲は泣きながらそう今は亡き恋人の夜月に訴えた………「お前のいない世界でどう生きていけばいい?」と………


黒雲「お前だけだったんだ………俺の「光」は………お前が俺を変えてくれたのに………結局また戻っちまった………なぁ夜月………もう1度………もう1度でいいから………俺の名前………呼んで………夜月………」


黒雲は両手を顔につけて何度も何度も返事のこない夜月の名を呼び続ける………誰よりも愛していた人を失った悲しみは何年も経った今でも変わらない


黒雲「夜月………」


黒雲はただ泣き続けた………今は亡き恋人の夜月へと………

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