朝ご飯


 豪華な朝ご飯が立ち並び、テレサさん、ミラ、ニーナ、そして俺は食卓に座る。


「さあ、召し上がれ」


 いつも通り、テレサさんが笑顔で俺たちに声をかける。いつも通りの朝。まったくいつも通り……


 レイの冷たい目さえなければ。


「あの……マヨネーズいる?」


「……いらない」


 すっかり、嫌われてしまったようである。


「て、テレサさん! そう言えば、なんで、あなたが俺のベッドに? 寝ぼけてたんですかぁ! 自分から俺のベッドに入ってくるなんて! あはははは」


 必死に自分悪くないですよアピール。俺は、別に、なにもしようとしていないよアピールを敢行する。


「えっ……マー君が『寝れない』って言うから」


 !?


「い、いつ俺がそんなことを言いましたか!」


 レイ……そんなジト目で俺を見ないでくれ。


 と言うか、そのナイフを手から離してくれ。


「だ……って、昨日マー君がハイハイで部屋に入ってきて。『牧草だ! 寝れないから牧草を食べるしかない!』って叫ぶから。なんとかしなきゃと思って、マー君のベッドで子守歌謳ってあげて。そしたら、マー君は、『逆に馬扱いしないでくれ!』って言いながら、頑なに牧草を貪りだすものだから。私はグリーンサラダを作ってあげて。で、マー君が『逆立ちしてなら食べてもいいっ!』て急に裸になってエスカルゴまいまいの殻をフンフン言いながら――」


「それは夢です! 全て夢なんです!」


 逆に現実だったら、そいつヤバすぎます!


「そ、そうなの? 妙にリアルな夢ね」


「……っ」


 現実の俺の評価が。


 そんな時、ギルドのドアが開いた。


 目の前にいたのは、血まみれの男。その眼差しは鋭く、頑強な防具にも関わらず、至る所に穴が開いてボロボロだった。


「だ、大丈夫ですか!?」


 慌てて駆け寄るったが、人の姿が見えて安心したのか、俺に寄りかかるように崩れ落ちた。


「……ぐふっ……俺はもう……助からない……それより……これを……魔王……の」


 吐血し、そう言い残して力尽きる男。


「……死んでる」


 脈はすでに止まっていた。出血も致死量を大きく超えているだろうし、さすがのテレサさんも、手の施しようがないだろう。


 残していったものは……宝石だろうか……


「売ればワイン何本ぐらい買えるかな?」


「ニーナ……お前は一回死んだ方がいいな」


 安定のクソ女だ。


「これまでとは、なにか……様子が違うよ、この件は」


 今までのようなクソ依頼とは違う。


 俺たちの、運命さえも変えるような。


 物語が大きく動き出すような。


 彼が託した宝石を眺めながら、ただ、なんとなく、そう思った。




 













 30分後、テレサさんが、蘇生に成功した。

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