自分が何者なのか、知るために。旅をした。友と出会った。血も涙も流した。

血の宿命に縛られるとはどういうことなのか、と。
終始一貫して、この物語は読者に問い掛けてくる。
銀色と赤色、正反対の性質を呈する魔族の血は、
銀色の少年と赤色の少年の友情を弄ぶかのようだ。

銀色の髪を持つ少年メルロイは村でも異質だった。
そんな色をした人間はいない。魔物かもしれない。
でも、村は彼を育て、日々は穏やかに過ぎていた。
ある日、突如として彼に銀色の角が生えるまでは。

親しい人々と別れ、メルロイに旅の仲間ができる。
赤色の髪と目の、誇り高き魔族の少年ギルティは、
メルロイの前に気紛れな優しさと残忍さを見せる。
ギルティの複雑で強い願いが、過酷な旅の道標だ。

次第に明かされていく歴史と宿命は痛ましい程で、
その渦中に自ら身を投じるメルロイとギルティの
物悲しい覚悟に幾度も、やるせなさが込み上げた。
作り込まれた世界観の幻想異郷譚、堪能しました。

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