第43話 戦闘スタイル

「うおりゃあああ!!!」


 怒号と共にセリオスパーティーの特攻隊長ことミロシュが、愛用の刀を振り回して襲い掛かる火吹き鳥を蹴散らしている。


 今現在、俺たちは43層の細い通路上にいる。

 通路の両サイドを灼熱の溶岩地帯が広がり、容赦なく熱気が俺たちの肌にまとわりつく。

 そんな過酷な状況で、次の階層へと急ぐ俺たちを嘲笑うかのように溶岩から次々とモンスターが飛び出してきたのだ。


 大量に出現したモンスター、火吹き鳥の襲撃を受け、俺たちはやむなく足を止め応戦することにした。


 ジッとしているだけで体力が削られていく苛烈極まりない環境で、少しでも早く下の階層に辿り着きたいってのに。


 焦りつつも、無視して進むと背後を取られて余計ヤバい状況になるってことは少しでも冒険者稼業に携わった者ならわかる。

 火吹き鳥は空中を自在に飛び回るし、火炎ブレスで遠距離から攻撃してくるから、背中を見せたら最後、あっという間に餌食だ。


 だから仕方なく俺は片手剣を鞘から抜き、火吹き鳥と交戦する道を選んだのだ。

 まあそれしか選択肢はなかったが。


 溶岩による熱気と高濃度の魔障によるダブル攻撃でただでさえ消耗しているのに、この上更に大量の火吹き鳥。


「くそっ……」


 なかなか俺の攻撃射程に入ってこない火吹き鳥に苛立ちを覚え始める。

 仕方ない、ここは……。


 すると、ミロシュが愛用の刀『白竜刀・真打』を鞘にしまい、弓に持ち替えた。


「だからお前はダメなんだよ!」


 勝ち誇ったようにそう叫ぶと、ミロシュは火吹き鳥に狙いを定め弓を放った。

 それが見事一匹の火吹き鳥に命中。

 甲高い悲鳴をあげて弓矢を受けた火吹き鳥が高度を下げてきた。


「今だ!」


 火吹き鳥が射程に入ってきたのを見届けると、素早く弓をしまい再び刀を鞘から抜いて構えるミロシュ。


「うおりゃあああ!!!」


 あっという間に間合いを詰め、火吹き鳥を刀で滅多斬りにしてしまった。


「どうだ! これがオレのやり方だ」


 自信に満ち溢れた顔でこちらを一瞥するミロシュ。


 ミロシュは刀使いだが、それにこだわっているわけじゃない。

 刀では上手くいかない局面になれば、迷わずサブ武器である弓に持ち替えて局面の打開にでる。

 脳筋に見えて意外と器用な戦い方ができる奴なのだ。

 正直言うと俺はミロシュが嫌いだが、戦闘における立ち回りのセンスは認めざるを得ない部分もある。

 伊達に勇者パーティーのメインアタッカーをやっていない。

 後は冷静さを失う場面があるという欠点さえ克服できれば、王都随一の冒険者になれるのにな。


 それはそうと、火吹き鳥はまだ残っている。

 リディやリュミヌーがそれぞれ魔法銃と弓で撃ち落とそうとしているが、火吹き鳥の動きが素早くて彼女たちの腕では上手く当てられない。


 よし、ここは。

 別にミロシュに対抗心を抱いているわけじゃないが、俺の戦い方も見せてやろう。


 俺はあくまで片手剣を手放さず、挑発スキルで火吹き鳥の注意を引き付ける。


 火吹き鳥が俺めがけて急降下し突っ込んできた。

 俺は盾を構えながら、


「リディ! リュミヌー! 今だ!」


 俺の叫び声を聞いて、慌ててそれぞれ武器を構えるリディとリュミヌー。

 火吹き鳥の突進攻撃を『カーバンクルの盾』でガードする。

 そこをリディの魔法銃による光線とリュミヌーの放った弓矢が火吹き鳥に一斉に襲い掛かり蹂躙した。


 そう、これが俺の戦い方。

 俺はあくまでも、この片手剣であらゆる局面を打開する。


 ミロシュは「ふん」と言って俺に近づき、


「女の子に助けてもらうなんて、情けない戦い方だな」


 馬鹿にした様な口調で言った。


「言ってろ」


 口喧嘩する気はないのでそう返した。

 情けなかろうが、勝てばいいんだよ。

 心の中でそう呟きながら、残りの火吹き鳥を片付けた。

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