第13話 勝負

 クリストファーが本家と繋がる廊下を歩いていると、真ん中に一人の青年が正座していた。


 青年は正座したままクリストファーを見据えると冷めた声で言った。


『ここより先は本家となります。関係のない方は入られぬよう、お願いします』


 その言葉にクリストファーは先ほどまでの雰囲気を消して爽やかな笑顔を作った。


『おかげ様で、怪我も良くなり動けるようになりました。そろそろ帰ろうかと思うのですが、その前に長にお礼を言いたいので、通してもらえませんか?』


 爽やかな笑顔で言っているのだが、背後には邪魔をすれば喰らうぞ、と言わんばかりの獅子の幻影がある。


 一方の青年は背後に龍の幻影を背負って冷徹な微笑みを浮かべた。


『では、私からその旨をお伝えしておきます。客人はお部屋へお戻り下さい』


 獅子と龍のにらみ合いという古来よりよくある構図が完成する。


 お互いに一歩も引く様子がない状況に後ろから追いついてきた綺羅が場違いなほどの明るい声で言った。


「何しているの?」


 クリストファーが青年から視線を外さすに答える。


「長に直接会って礼を言いたいと話しているのだが、会わせてくれなくてね」


 人を射殺しそうな鋭い視線をしている青年に綺羅が軽い口調でお願いをする。


『長とは一度、会っているし、もう一回ぐらい会ってもいいだろ?』


『駄目です。本来、長があなた方のような異邦人と顔を合わすなど考えられないことです。今回は特例ということで渋々了承しましたが、これ以上はお控え下さい』


 青年の言葉は丁寧だが、異質者は失せろ、という雰囲気を発している。その態度を見て追いついたアクセリナが不機嫌そうに胸の前で腕を組んだ。


「なんかムカつくわね。燃やしてやろうかしら」


 アクセリナが物騒なことを言いだしたところで女性の叱責が飛んだ。


『寛鐘、客人に対して無礼でしょう。あなたにそんなことをする権限はありませんよ』


 その声に青年が正座をしたまま慌てて後ろを振り返って頭を下げた。


『失礼いたしました。ですが、長が二度も異邦人と顔を合わすなど汚れてしまいます』


 青年が頭を下げた先には五十代ぐらいの女性が立っていた。その斜め後ろには伊織を幼くしたような女の子が立っている。


 女性は凛とした声で諭すように話した。


『人種の差で汚れなど世迷いごとです。それは、この方を見れば分かるでしょう』


 そう言って女性がアクセリナを示す。そのことにアクセリナは優雅に微笑んだ。


「あら、見る目がある人もいるのね」


『この方の力は質も量も伊織と同等です。そんな中、一切の汚れもなく世俗を生きてこられた。これは称賛に価します』


「細かい内容は分からないけど、褒められているみたいね」


 アクセリナが満足そうにしている一方で青年が悔しそうに両手を握りしめた。


『では、この方のみ長と面会をされれば……』


『寛鐘』


 女性の一言で青年が頭を下げる。


『出過ぎたことを言いました』


『客人、不快な思いをさせて申し訳ありませんでした。さあ、こちらへどうぞ』


 女性が道を示すように歩き出す。その後ろを女の子がついて行く。クリストファーは綺羅とアクセリナを見て頷くと歩き出した。


 本家といっても家の造りはクリストファーが使っていた部屋と同じであり、特に変わった感じはなかった。だが、アクセリナは周囲を見回しながら感心している。


「さすが、本家ね。清い力で満ちているわ」


 綺羅が首を傾げながら周りを見る。


「そうなの?」


「ま、綺羅とクリストファーは何も感じないでしょうけど」


「うん」


 素直に頷く綺羅に対してクリストファーは無言だった。迷路のようにグルグルと歩いて女性は三人を一つの部屋に通した。


『こちらでお待ち下さい』


 そこでは数人の男性が部屋の両端に正座していた。部屋に入ってきた三人に一斉に鋭い視線を向ける。普通の人ならその視線に居心地の悪さを感じるが、ここにいる三人はそんなに弱い心臓はしていなかった。


 三人は案内されるまま堂々と部屋の真ん中に座ると前を見た。そこは一段高くなっており、金糸が使われたいかにも高級そうな座布団が置いてある。


 綺羅がどこかウキウキとした様子で話し出した。


「なんか時代劇に出てくるような感じだな」


 そんな綺羅にアクセリナが肩をすくめる。


「時代劇っていうのを知らないんだけど」


「日本の侍時代の劇だよ」


「侍なら少し知っているわ。その話に出てくるの?」


「そう、そう」


 綺羅が頷いていると咳払いが響いた。そして、咳払いをした男性が三人に向かって言った。


『客人、ここは日本です。日本語でお話し下さい』


 横柄な物言いだがクリストファーはにっこりと笑顔を向けた。


『失礼いたしました。ですが、アクセリナは日本語が話せないので、ご容赦下さい。かという私もこの家に来てから日本語を学んだゆえ、言葉足らずなところが多々あると思いますので、そちらもご容赦下さい』


 穏やかにスラスラと話すクリストファーの後ろに獅子の幻影が現れる。表情が笑顔なだけにギャップによって迫力が増している。


 咳払いした男性は少し顔を青くしながら視線をそらして頷いた。


『は、話せないのでは仕方ありません。では、お静かにお待ち下さい』


『はい』


 そのやり取りを見てアクセリナと綺羅が内心で苦笑する。今のクリストファーを敵に回してはならない。それが二人の共通認識となった。


 少しして部屋の襖が開いて長の影光が部屋に入ってきた。


『お待たせしましたな、客人。して、ご用件とは?』


 影光が豪華な座布団に腰をおろす。クリストファーは人受けが良い爽やかな笑顔で話を切り出した。もちろん背後に獅子は出していない。


『おかげさまで怪我もよくなり動けるようになりました。私たちは礼をしたいのですが、何か必要ものはありませんか?』


 クリストファーの申し出に影光が軽く笑う。


『ほっほっ。そんなに気を使われなくてもいいですぞ。我々は当然のことをしただけのこと。それより、そなたのほうが欲しいものがあるのではないのかな?』


 影光の単刀直入な発言に腹の探り合いを止めたクリストファーが爽やかな笑顔のまま言った。


『では、正直に申します。あなたの孫である伊織を私に下さい』


 堂々とした申告に周囲の男性陣がざわつく。影光は長いひげを撫でながら頷いた。


『ふむ。それは運命で決まっていることだからの。わしに異論はない。ただ、一つだけ条件がある』


 影光があっさりと受け入れたことに内心驚きながらもクリストファーは平然と訊ねた。


『条件とは?』


『伊織とそなたの間に生まれた子のことじゃ。その子は世界の命運を握る。しかるべき時がくるまで守り通さねばならぬが、そなたが守り通せぬと思ったときは即座にここに連れてくることじゃ』


 アクセリナからも出なかった言葉にクリストファーが軽く首を傾げる。


『世界の命運を握るとは?』


『そなたと伊織の子はこの世界の安定を脅かす存在の進攻を防ぐことができる唯一の存在となる。しかるべき時がくるまで何がなんでも守り通さねばならぬ。できれば生まれたことさえも周囲に知られず、存在自体を隠して育てるのだ』


 影光の説明にクリストファーが神妙に頷く。


『それは私の家業の力を使えば可能です。ですが、世界の安定を脅かすとは、どのようなものでしょうか?それが分かれば守りやすくなります』


 クリストファーの質問に影光が首を横に振る。


『我が一族の総力を持ってしても、これ以上のことは分からなかった。だからこそ守ることは容易ではない。それでも、そなたは守れるか?』


『私が持っている全ての力を使って守り抜きます』


 その言葉を聞いて影光が立ち上がる。


『では、伊織を連れて行くがよい。出立は明日の朝でよいかの?』


『は、はい』


 あっさりと了承した影光の態度にクリストファーが少し拍子抜けする。そこに青年の声が響いた。


『私は反対です!』


 クリストファーが振り返ると寛鐘と呼ばれていた青年が部屋の端で立ち上がっていた。


『龍神家に異邦人の血を入れるなど言語道断です!それに守り抜くと言っても、本当にそのような力があるか怪しいものです!』


 寛鐘の言葉に部屋にいる男性陣もしっかりと頷く。影光は反対が出ることを予想していたようで驚くことなく困ったように言った。


『では、どうすれば納得するのかの?』


『私と勝負をして勝つことが出来れば納得しましょう』


 寛鐘の言葉にアクセリナが呟く。


「それで本当に納得するのかしら?それとも自分が負けないっていう絶対の自信があるのかしら?」


「負けないって自信があるから勝負しろって言っているんだろ?クリフが圧倒的に不利だと思うけど、どうするの?」


 綺羅に訊ねられてクリストファーは不敵に笑った。


『いいでしょう。ここで負けるようなら伊織を守るなど無理な話です。その勝負、受けて立ちます』


「おぉー、クリフ男前」


 称賛する綺羅をクリストファーは踏みつけながら立ち上がった。


『勝負の内容は?』


 クリストファーの質問に寛鐘が余裕の表情で答える。


『弓はどうでしょう?』


『弓?』


 初めて聞く単語の説明を求めてクリストファーが綺羅を見る。綺羅は体を起こしながら言った。


『アーチェリーみたいなものだよ。アーチェリーより弓が長いんだけど矢を的に当てるところは同じ』


 綺羅の説明を聞いてクリストファーが頷きながら寛鐘に視線を向けた。


『わかりました。それで、いいです』


『では、こちらへどうぞ』


 寛鐘の案内で一同は弓道場へと移動していく、その道すがらアクセリナが綺羅に声をかけた。


「クリストファーは弓が出来るの?」


「弓は分からないけど、アーチェリーなら得意だよ。クリフは高校生の時に全米アーチェリー大会で上位入賞している腕前だから。的に矢を当てるだけなら問題ないと思う」


「見かけによらないわね」


 肩をすくめるアクセリナに綺羅が苦笑いをする。


「まあ、クリフの特技を考えると大抵のスポーツはこなしちゃうんだけどね」


「特技?」


「もしかしたら今から見られるかも。あ、着いたみたいだよ」


 到着した場所は広い芝生とその先に的がある屋外と繋がっている部屋だった。


 寛鐘が小部屋から弓と矢を持ってくる。


『これが弓と矢だ。ここから矢を放って的に命中させる』


『矢を的の中心に射た者の勝ちですか?』


 クリストファーの質問に寛鐘が鼻で笑う。


『弓とは、そんなに単純な競技ではない。射位に立ってから矢を放ち終わるまでの一連の動作も評価対象だ。総合得点が高いほうが勝者になる』


 提案した寛鐘よりクリストファーのほうが優位のような勝負に思えたが、思わぬルールにアクセリナが吠えた。


「それって卑怯じゃない!クリストファーは今日、初めて弓を見たのよ!それなのに、その動きも採点されるって不利に決まっているじゃない!ほら、訳して!」


 アクセリナが綺羅の背中を叩く。綺羅が慌てて通訳をすると影光が頷いた。


『確かに初めて見るのに練習もなしとは平等ではないのう。教える時間と練習時間ぐらいはあってもよかろう?』


 影光は寛鐘に声をかけたのだが、弓と矢を触っていたクリストファーの方が先に答えた。


『いえ、練習は必要ありません。ただ、この中で一番上手い人に見本を見せて頂きたいのですが、よろしいですか?』


『それはかまわぬが……本当に練習をしなくてよいのか?』


『弓に実際に触れて感覚はなんとなく分かりました。あとは、どのような動作で矢を放つのかを見せて頂けたら出来ます』


 クリストファーの断言に男性陣が訝しむ。だが影光は側にいた男に指示を出した。


『伊織を呼んでこい』


『はい』


 男が立ち去る姿を見ながら綺羅が軽く口笛を吹いた。


「伊織ちゃんが一番上手いんだ」


 アクセリナが綺羅の服の裾を引っ張る。


「それより、いいの?練習なしって」


「クリフが本気になっちゃったってことでしょ?ま、大丈夫だと思うよ」


 まったく心配している様子がない綺羅にアクセリナが頬を膨らます。


「何?何か秘策があるの?」


「見ていれば分かるよ。今はクリフの邪魔をしないことだね」


 そう言った綺羅の視線の先ではクリストファーが真剣に弓と矢を色々な方向から触って観察している姿がある。


『お爺様、どうされました?』


 弓道場に入ってきた伊織はいつも着ている着物ではなく道着姿になっていた。影光がこれまでの経緯を説明すると、伊織がクリストファーに心配そうに声をかけた。


『どうして、このようなことに。私は……』


 伊織の言葉を塞ぐようにクリストファーが微笑む。


『心配しなくていいよ。すまないが、見本を見せてくれないかい?これで出来るかな?』


 クリストファーに差し出された弓と矢を伊織が受け取る。


『問題はありませんが……本当によろしいのですか?』


 なおも心配そうな伊織の頭を撫でながらクリストファーが安心させるように笑う。


『あぁ、大丈夫だよ。私を信じて』


 まっすぐな深紅の瞳を見て伊織は穏やかに頷いた。


『わかりました。動きの説明はいりますか?』


『いや。いつも通り、普通に矢を放ってくれればいい』


『はい。では、始めますね』


 そう言うと伊織は射位に立った。しっかりと的を見据えて体勢を整え、そこから静かに矢を構えてギリギリまで弓を引いていく。そして限界まで弓を引いた後、矢を放った。矢は的の中心に命中したのだが、伊織の顔に喜びはなく、そのままの姿勢で静かに的に当たった矢を見つめている。


 そして数秒後、軽く息を吐いてクリストファーの方を向いた。


『これが流れになります』


 顎に手を置いて瞬きさえもせずに伊織を見つめていたクリストファーが穏やかに微笑む。


『ありがとう。よく分かったよ。美しい動きだった』


 そう言うと影光に言った。


『いつ始めてもいいです。先攻はどちらからしますか?』


『そなたは先攻、後攻どちらが良いかの?』


『どちらでもいいです』


 クリストファーの余裕ある発言に寛鐘が手を上げる。


『では、僕からしてもいいですか?』


 先攻で完璧な姿を見せてクリストファーの気を削ぐ作戦らしい。


 影光が確認するようにクリストファーを見る。


『よろしいか?』


『はい』


 その言葉に寛鐘以外の人が後ろに下がって正座をした。クリストファーたちも同じように後ろに下がって座る。


 周囲からの注目に臆することなく寛鐘は堂々と射位に立つと、自然な動きで矢を放った。


 その動作を眺めていたアクセリナが呟く。


「伊織ちゃんとの違いが分からないわ。あれで、どう評価するのかしら?」


「オレもよく分からないなぁ」


 ただ二人でも分かる違いは伊織が放った矢は的のど真ん中に命中したことに対して寛鐘が放った矢は的の真ん中より少し右にずれていた。それ以外の動きは同じようにしか見えず、どう評価しているのか不明だった。


 振り返った寛鐘が勝ち誇った顔でクリストファーを見る。だがクリストファーは静かに俯いたまま瞳を閉じていた。


『な……失礼な人ですね。対戦相手を見もしないとは』


 寛鐘の文句にクリストファーの瞳が開いた。


『私の敵は私自信です。君など関係ありません』


『なにを……』


 反論しようとした寛鐘を血のような深紅の瞳がまっすぐ射抜く。その視線の鋭さに寛鐘の口から声が出なくなった。


 そこに影光が入る。


『確かに弓とは己と向き合い、己との戦いになる。客人の言うことも正しい。影光、お主は勝負にこだわりすぎて体の重心が揺らいでおったぞ。それが、あの結果じゃ』


『……はい』


 長としての影光の言葉に寛鐘は渋々口を閉じて下がった。


 そんなやり取りをクリストファーは気にした様子なく静かに立ち上がり射位に立った。初めてとは思えない堂々とした姿に全員の視線が集中する。そして、ゆっくりと弓を引いたのだが、その姿に周囲から驚きと感嘆の声が漏れた。


 それは初めて弓道を見たアクセリナも同じで、驚きで口を押えながら呟いた。


「伊織ちゃんと、そっくり……」


 体格差はあるがクリストファーの動きは伊織が見せた見本そのものだった。弓を引く早さ、位置、動き、そして呼吸までも寸部たがわぬ動きで、クリストファーはそのまま矢先の角度だけを微妙に修正して矢を放った。そして見事に矢は的のど真ん中に命中した。


 数秒後、クリストファーが軽く息を吐いて射位から離れた。茫然としている男性陣へ近づいて影光に声をかける。


『勝敗は?』


 声をかけられて意識を戻した影光が慌てて立ち上がって判定を下す。


『そ、そなたの勝ちじゃ』


 クリストファーが軽く笑って寛鐘を見た。


『では、これで納得してもらえますね』


『な、な、なんなんだ、今のは!?』


 震える指でクリストファーを指す寛鐘に綺羅が苦笑いをしながら説明をする。


『クリフの特技、その一。相手の動きの完全模写。長時間は出来ないけど、あれぐらいのことなら一度見たら、そっくりな動きが出来るんだよ。ちなみにクリフの特技は、あと九つあるよ』


 お茶目に説明する綺羅をクリストファーが蹴る。


『勝手なことを言うな。あと九つも特技は持っていない』


 そう言いながらクリストファーが肩をまわす。


『相当な集中力がいるから滅多にしないが、やはり疲れるな』


 驚きで声が出ない男性陣の中で影光が感服したように言った。


『なんという観察眼じゃ。我々の中にも、そのようなことが出来る人間はおらん。寛鐘、諦めよ』


『で、ですが、土地神様の許しがありません!』


 寛鐘がなおもしつこく食い下がっていると伊織から高笑いが響いた。


『なかなか面白い特技を持つ童だのう。こんなことが出来る人間がいようとは思わなかったぞ』


 妖艶な笑みを浮かべる伊織に影光が頭を下げる。


『これは、これは、土地神様。ご機嫌なご様子で、いかがなされましたか?』


『なかなか面白いことをしておるから見ておったのだが、思いのほか楽しめた』


 土地神が乗り移った伊織が満足そうに微笑みながらクリストファーを見た。


『わらわが許す。この娘を連れて行け』


 土地神の決定に男性陣から小声で不満が出る。その言葉を聞き逃さなかった土地神が男性陣の方を向いた。


『ん?異存があるものがおるのかえ?』


 土地神の問いに男性陣が不自然に黙り込む。お互い何か言いたげに視線を向け合うのだが誰も土地神に意見など出来ない。


 土地神は勝ち誇ったような顔をするとクリストファーを見た。


『そなたたちの行く末、楽しみにしておるぞ』


『楽しみにされるようなことは何も起きませんよ』


 クリストファーの発言に男性陣が顔を青くするが土地神は面白そうに笑った。


『言うのう。そなたとは、また会いたい。長生きせいよ』


 そう言い終わると同時に伊織の体が崩れる。予測していたクリストファーは伊織の体を難なく支えた。


 伊織が黒い瞳を開いて微笑む。


『お疲れ様です。お見事でした』


『君の見本のおかげだ。ありがとう』


 クリストファーの言葉に伊織は少し照れたように顔を赤くしたが、嬉しそうに笑った。


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