祝!300PV突破! 第3話 創世

 無数のコンソールの前に響は、


「ちょっ、こんなに沢山、どう扱えばいいんだ?」


「落ち着きなさい」


 ルナは人差し指を立て、


「まず何を作りたいか、漠然とでもいいからイメージするのよ」


「わ、わかった」


 俺は意識を集中する。

 すると、無数にあるコンソールの中から一つだけ大きく浮かび上がり、『空』と表示された。


ルナは横から覗き込み、


「空か。いいんじゃない?」


「宇宙のほうがそれらしかったかな?」


 ルナはにやり、と笑って、


「真空と絶対零度と気圧変化で瞬死したいの?」


「この世界で死ぬとどうなるの?」


 ルナは腰に手を当て、


「もちろん死ぬわ。あなたという『意識』をダイレクトに電脳空間に入れたから」


「そういう大事なことは早く言え!」


 ルナはふっと息を吐いて、


「人の生き死になんて些細なことよ」


「俺、もう帰ります」


 ルナはがっし、と響のシャツを掴み、


「やめてごめんなさいまた上司に絞られるの!」


 上司とかいるのか。こいつ実はダメな奴では。

 仕方なく俺は作業に戻る。


「この『空』ってボタンを押せばいいのか?」


 ルナはストップをかける。


「ダメ、どんな空かイメージしながら押さないと。普通の空になっちゃう。あなただって自分だけの世界にしたいんじゃない?」


「それもそうか・・・」


 響は考え込む。

しばらく沈黙の時間が過ぎ、


「よし、空は青緑色にしよう」


 ルナは顎に指を当て、


「いいんじゃない?やってみましょう」


 響はコンソールをタップする。


 次の瞬間、真っ白なだけの空間が一面、青緑のグラデーションで包まれた。


「おお!」


 響が感嘆の声を上げる。


「1回で創造、2回タップすれば消去されるわ」


 ルナは両手に腰を当て、ふんぞり返る。


「次はどうしたい?」


 ルナが聞いてくる。


「天ときたら次は地だろ」


 響は集中してコンソールを操る。

『大地』のウィンドウが拡大する。


「よし、これで天地創造だ!」


 響はコンソールをタップする。


「あっ!馬鹿!」


 ルナが止めようとするが間に合わない。


 次の瞬間、はるか眼下から青い雑草が生えた果てしなく続く大地が姿を現した。

 それと同時に、なぜルナが止めようとしたのかを理解した。


 落ちているのだ。真っ青な大地に。

 どうやら大地ができるとともに重力が働く仕組みになっているらしい。まあ大地にふわふわ立たないようにとの仕様だからではと響は推測するが。


 そんなことを想像し、悲鳴にならない声を上げながら落下していく。


「もう、手が掛かるわね!」


 ルナが空を飛びながら響をキャッチする。

 ルナの背中には妖精の羽のような羽が出現していた。


「すげー!お前、空飛べるのか!?」


「あなたも設定すれば飛べるわよ」


「なんと!」


 ルナは響を大地に降ろす。


「さっそく飛べるようにしてくれ」


 ルナは指を立て、


「その前に『マスター権限』を発動させる必要があるわ」


「マスター権限?」


 響は首をかしげる。


 ルナは指を立てたまま、


「一つ、創世開発機構。これが世界を管理する最上位の権限」


 ルナは二つ目の指を立て、


「二つ目は管理者兼アドバイザー権限、つまり私の権限ね。これが二番目に偉いの」


 ルナは胸を張り、三つ目の指を立てる。


「最後はマスター権限。三番目の、つまりあなたの権限」


 響はうなずいて、


「で、なんで空を飛ぶのにマスター権限が必要なんだ?」


「危険だからよ。マスターは自らが作り出したものに対してその変化から命を守る必要が出てくるの」


 ルナは髪をかき上げ、


「とは言っても私のアドバイスをきちんと聞いてれば、さっきの様に空から落ちるなんて無様な事にはならないんだけどね」


 くっ、響は呻く。


「まあいいわ。では次のステップは空を飛ぶということでいいわね」

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