第3話

「ねえシロちゃん。明日って暇かな?」

食後の片付けしていたレイラさんが聞いてきた。

「別に特にはありませんけど」

明日は土曜日だったが、予定は無かった。

「そっか!実はね、知り合いから遊園地のチケットを貰ったんだけど・・・」

「だったら1枚しか無いんじゃ」

「その・・・彼氏と行けって2枚もらったんだよ」

私とほぼ毎日いるのだ、彼氏などいないのだろう。

「それなら是非行きたいですけど、私の前に友達っていう考えは無かったんですか?」

「・・・考えはしたよ」

(また地雷踏んだかな)

「べっ、別に友達はいるよ!でも忙しそうだったから」

その人以外に誘う人は居ないのか、という言葉は飲み込んだ。

「分かりました。明日の朝また来ますから」

私はそう言い残し、家を出た。

(レイラさんと出かけるなんて初めてだな)


「おはようございます」

私は合鍵を使い勝手に部屋に上がり込んだのだが、返事が返ってこなかった。

「レイラさーん」

私はおそるおそる普段入らない寝室に入った。

「・・・にゃ・・む」

「レイラさん!起きてください!」

「・・・!デンプン!」

どんな起き方だ。

「あれ?シロちゃん、今日は早いね」

「遊園地行こうって誘ったのレイラさんでしょうが。顔洗って来てください、朝ごはん作っておくので」

私はレイラさんが完全に起動したのを確認すると、キッチンに向かったー

「着替えも終わったよ」

「そうですか、朝ごはん出来てるので座って下さい」

「「いただきます」」

今日の朝は、レイラさんがあまり食べないことを知っていたので目玉焼きとトーストだ。

「そういえばレイラさんは何か乗りたいアトラクションってありますか?」

「何があるか忘れちゃったけど、お化け屋敷とか行ってみたいなぁ・・・」

「そんなにうっとりした表情で言うアトラクションではないと思うんですけど・・・」

ともかくお化け屋敷は確定だ。

そうして遊園地の話をしながら食器洗いを済ませると、身支度を整え家を出た。


最寄りの駅から遊園地まで電車で15分、その間もレイラさんとの会話は弾んだ。

「シロちゃんってやっぱりモテるの?」

「私はそういうのは」

実際、私はそこまで男子に告白はされてこなかった。

「どちらかと言うと女子から告白されることが多かったので」

「やっぱりそうよね~シロちゃん男装したら良さそうだもの」

さんざん褒めちぎられてしまった。

(このままだとまたレイラさんのペースになっちゃう)

「レ、レイラさんこそ学生の頃とかモテてたんじゃないですか?」

レイラさんは街を歩けば通行人が絶対に振り向くレベルの美人だ。学生時代にモテていたわけがない。

「ん~あんまり告白はされなかったかな」

「本当ですか?そんなわけはないと思うんだけどな・・・」

「あっ!でも何回かはラブレター貰ったんだけど、放課後に約束の場所で待っててもいっつも来なかったなぁ」

「冷やかしですかね?」

「でも、いつも友達が制服を真っ赤にして迎えに来てくれたよ」

私は死を覚悟して告白していった男の人たちの勇気に感動を覚えながら到着を待った。

「着いたね!遊園地!」

駅前の遊園地ということもあり、とても混んでいたが私も少し興奮を抑えられなかった。

「さっそく行きましょうか」

「うん!私ジェットコースター乗りたい!」

「順番に乗っていきましょう」

私に着いてくるようにレイラさんが歩いてきたので、そのままジェットコースターに行くことにした。

「楽しみですか?」

「う~ん私は別に」

「ならどうしてジェットコースターに?」

「シロちゃんが怖がるところが見たいんだよ。というかそれがメインまであるわ」

「私そんなに怖がりませんよ」

「え~何なら怖がるの?」

「怖がるもの・・・あることにはありますけど」

なんとなくこの人に弱みを見せたくないため、黙っておくことにした。

それからは、ジェットコースターに乗り、シューティングのようなアトラクションでレイラさんが超えられない記録を作ったりと充実した一日となった。

「・・・せっかく最後の大本命にしてたのに」

「お互いが驚くと思っていたんですから」

私たちは最後にとっておいたお化け屋敷に入ったのだが、私とレイラさんがお互いが思っていたほど驚かず、ただの暗い道を体験していた。

「シロちゃん今日は楽しかった?」

「はい、いつも友達と行く遊園地とは違った楽しさがありました」

「そう言って貰えると嬉しいよ」

私たちはそう言って笑顔でお化け屋敷を出た。

(((あのお客さんたちお化け屋敷笑顔で出ていきやがった)))

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る