隣人愛⑤

「ふむ、ちょっと奴らと話をしてみよう」

「ええ? やめた方が良いですよ。話の通じる相手じゃありませんって」

「汝の隣人を愛せと言うだろう。彼等にだって、何か理由があるはずだ。それも知らずに全て悪だと決めつけるのは総計ではないか?」

「はあ、まあ言いたいことは分かりますが……」

「というわけだ、行ってみよう」

「ああもう、どうなっても知りませんよ」

 マスティマの言うことも聞かず、ルシフェルは戦士集団に一歩近づいた。

 そして気がついた。


「あ」

 っと言う間だった。一瞬にしてルシフェルは屈強な戦士たちに囲まれて、ボコボコに殴り殺されてしまった。あまりにも一瞬過ぎてつまらなかったのか、初心者狩りの戦士は倒れて動けなくなったルシフェルを、いつまでも蹴り飛ばし続けた。


 一方で、ルシフェルの巻き添えを食って標的にされたマスティマは、必死に戦士たちの魔の手から逃れようと草原を駆け回り、隣の席のルシフェルに叫んだ。


「だから言わんこっちゃないじゃないですか!」

 マスティマがなんとか別の街にたどり着き、逃げ延びたころになってさえ、ルシフェルは倒れたまま攻撃を受け続けていた。マスティマがルシフェルのモニターを覗き込み、呆れたようにため息をついた。


「あー、とんでもない奴に捕まっちまいましたね。こいつ、悪名高いPK野郎ですよ。

 噂だと、二十四時間ずっとオンラインに張り付いてるとか。こんなヤツ相手じゃ、隣人愛も何もありゃしませんよ。廃人です。廃人」


 ルシフェルはいつまでも、ゲーム画面の中で殴られ続ける自分の分身を見ていた。

 おそらく、誰が相手だろうと、彼らは同じように攻め立てるのだろう。しかし、ルシフェルにとっては実に頭の痛い光景であった。

 

どこかで見たような白い鎧の戦士は、頭の上に「☆唯一神☆」の文字を輝かせ、いつまでも攻撃の手をやめなかった。


「これで神を名乗ってるんですから、ホントバチあたりな奴ですよ。まったく、プレイヤーはどんな顔してるんだか……」

 マスティマが言う隣で、ルシフェルは何を言うこともできず、無言でうなだれるのであった。

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