猟奇的な短編作品集

Free

初恋男

食べ物の好き嫌いと恋は似ていると思う

缶コーヒーを飲みながら、なんとなく思い付く。



僕はコーヒーが苦手だった。

皆が普通に飲む中、僕は何度缶コーヒーを買ってチャレンジしてみても、まったく美味しく感じなかった。

一度、喫茶店で挽きたてのコーヒーを飲んで驚いた。

初めて美味しいと感じたし、コーヒーのどこが美味しいかに気付けた。

それから缶コーヒーをよく飲むようになった。

コーヒーの美味しい所に気がつくから。



恋も同じだ。

いままでなんとも思ってなかった人の、素敵な所に気がつく事がきっかけなんだ。

きっかけが出来たら、次の日からその人の全てが愛おしくなる。



とかなんとか適当な事を考えたけれど、自分はまだ一度も恋をした事がない。



「ねぇ…」



大学生になったら自然と恋愛をして彼女が出来ると思っていたが、そんな事はなかった。



「ねぇっ」



コーヒーみたいに良さに気付くための努力が必要なのかもしれない。



「ねぇねぇ」


後ろで声が聞こえる。肩を叩かれたので後ろを向いた。



「こ、この前の講義の内容教えてくれてありがとう。」



高木さんだ。



「いや、いいよ。たまたま詳しかった所だから。」



「そ、それで…」



「次の講義行こうか 缶と一緒に捨てておくよ。」



「あっ…」



高木さんの空になったペットボトルを掴む


ラベルの下部分が剥がされ、上に巻き上げられている。

水平に固定されて、これはまるで…



「あ、あ! あのっそれはその!

 なんとなくカバーって外せるんだって思って!

 そ、その全部剥がせば良かったんだけれど…

 剥がしている最中に…」



言葉に詰まっている。なんとなく次の言葉が気になって黙って顔を見る



「マ、マ、マリリンモンローみたいだなぁとか思って…」



マリリンモンロー?

予想外の言葉に返事に戸惑う。

高木さんは顔が真っ赤で、熱を冷ますように頬を両手で隠す



「そ、その 7年目の浮気って知らない?

 めくれ方が妙に艶っぽくて…その…

 あの…その…変だよね

 …ごめんなさい」



目を合わせず下に俯く彼女がやけに可愛かった



「あっはっはっは マリリンモンローの件、言う必要あった?」



高木さんは顔を上げて目を見開く



「なんとなく剥がしたで良かったじゃん」



「あ、あぁ…ああぁ…」



混乱を表現するように両腕は上下に振られ、両手が閉じたり開いたりする。

小動物を思わせる姿を見続けていたかったけれども時間が気になった。



「大丈夫だよ。それより次の講義行こっ」



「は、はい」



「マリリンも一緒に捨てておくね」



からかう様にペットボトルをマリリンと呼ぶ。



「ご、ごめんなさ… ありがとう」



背中を向けて早足で歩く。

今の僕の顔を見られたくなかった。

高木さんの赤面が、僕の顔にもうつってしまった。

僕は初恋をしてしまった。



一度好きになると、意識してしまう。

なんとなく高木さんの後ろの席で講義を受ける。

彼女をずっと見つめてる。

整っている顔立ち。

透明感のある肌。

細くて華奢な体。


変なきっかけだが、初恋をしてしまった。



「マリリンモンロー…か」



高木さんが先程と違うペットボトルのお茶を飲む姿が見える。

きっと小さな口で飲んでいるんだろう。

心臓の鼓動が早くなり、あれからまともな記憶がない。

気がついたらあたりは暗くなり、自宅の最寄駅にいた。

今日の授業はよく覚えていない。

ドキドキする。早く家に帰らないと。

胸が苦しい。

なんでいままで彼女の魅力に気がつかなかったんだろう。

自宅に戻り、彼女を招き入れる。



「ようこそ…我が家へ」


バッグから彼女を取り出す。

出したのは高木さんが飲んでいたペットボトル。

いや、マリリンモンローだ。

高木さんのペットボトルを一緒に捨てると言った時、自分が飲んでた缶コーヒーだけ捨てた。高木さんが飲んでいたペットボトルは、こっそりラベルを畳んでバッグに入れていた。

ボトルを机の上に置き、慎重にラベルを持ち上げる。

静かな自宅にピキパキとラベルの音だけ鳴る。

水平にまで持ち上げ、初めて見た時の姿にしてあげる。


凄く魅力的だ。この姿が美しい。

小さいその姿。触り心地の良い透明感のある素肌。

綺麗な体の曲線。そしてスカート。



僕はペットボトルに恋をした。


あれから2週間新しい趣味が出来た

何かあるたびにペットボトルを買っている。

種類によって色んな形があるんだなぁ

持ちやすさのためのデザイン 内容量の都合で変わったデザイン

ペットボトルが女性だとしたら、古い姉より新しいデザインの妹の方が好きだな

この魅力にもっと早く気が付けばよかった。

洗練されたデザインは美しさを感じる。

何度も見てると初見では気付けない新たな魅力に出会う 角の丸みが他よりも若干鋭利でボーイッシュだ



「けれども…」



この娘の衝撃は超えられそうに無い

スカートと言う発想は僕には無かった

やっぱり初恋って言うのは特別なんだろうな…

あれからコンビニやスーパーで違う子を探し、買って、触って、感じてみたけれど、あの衝撃は超えられそうにない

今日もマリリンはスカートを横に広げて机の上に立っている。

時間が経って埃を被ってしまわないように、頭をつまみ、形が変わらない程度に軽く振った後、机の上を軽く拭く。



日課も終わった頃には寝る時間になっていた。今日は期間限定のペットボトルの子を手に持ち、布団に着く。

枕元に彼女を置いて可愛がる。足元を親指と人差し指でつまみ、頭にかけてゆっくりとなぞる。特徴的なくびれに性的な魅力を感じながら、焦らすように時間をかけて指を這わせた。


本当はマリリンと寝てみたいが、

もし壊してしまったらと考えると、とてもじゃないが一緒に寝られない。

このくびれて丸いふくよかな女は代わりがいる。

何度かマリリンと同じ子を買ってはスカートの切り口を切り、持ち上げながら広げてみたけれど駄目だった。同じペットボトルで同じスカートの形にしているハズなのに、マリリンとは何故か違うのだ。


彼女の代わりは居ないのだ。


もし潰したり、スカートを傷つけてしまって失ってしまったらと考えると震えてしまう。本命のマリリンの事を考え、上の空でこの女を愛撫をしていた。

気が付いたらくびれに指が掛かっていた。

好きでもない女を可愛がる行為が馬鹿らしくなる。

どうでもいい奴でこんな事をしても虚しいだけだ。

馬鹿らしくなってペットボトルを玄関に投げつける。



…寝よう

明日は1限目からだ。



「あ、あのっ 朝倉君って… 彼女とかいるんですか?」



高木さんには最近勉強を教えている。

今日も大学でばったり出会い、誘われた。



彼女か…

マリリンと付き合うなんて…無理なんだろうな。



「彼女はいないよ」



高木さんの大きな瞳が更に大きくなる。

小さな口は逆にぎゅっ小さくなる。



「あのね… もし良かったら… 私と」



詰まりながら喋る高木さん。

何が言いたいか何となく察するが黙って聞く事にした。

なんとなく机の上のボトルの女を乱暴に掴む。


よく考えたらこの子と高木さんはよく似てる。

小さくて細い体で服装も似ている。

掴んだ女を親指でなぞる。

パステルカラーの服が動いて水玉模様が縦につぶれる。

高木さんの顔は、このキャップのように赤くなる。



「つ、付き合いませんか?」



…何となく予想はついていた。

どうしたものか。家にはマリリンがいる。

…ふと、昨日玄関に投げつけた子を思い出す。



「いいよ。高木さん素敵だなって思っていたんだ。付き合おっか」



仮に高木さんと付き合ったとして、今となんら代わりない事に気がついたからだ。

マリリンを愛したいが、傷つけるのが怖くて他の子を愛している。

本命を愛せないなら…いや やっぱり僕は少しおかしかったのかもしれない。

ペットボトルなんかじゃなく、人間と恋愛をしないと駄目だ。

高木さんと他愛のない話をして、適当に喋り、その日は終わった。



家に帰り、2週間買い続け、溜まったペットボトルを袋に詰める。

馬鹿らしい。何でこんな物にハマったんだろう。虚しいだけだし、やっぱりペットボトルにハマるとか、おかしいって思っていたんだよ。

独り言をブツブツ呟きながら乱暴に詰めていく。


どうせ実らない恋ならペットボトルより、人との恋愛の方が良いに決まってる。

いや違う。そもそも物に恋とか欲情するのがおかしいんだ。

たった2週間だけだったが、僕は狂っていた。


最後にマリリンを捨てようとして手を止めた。

詰めていた時から気がついていた。

意識的に彼女から目を逸らしながらゴミを詰めていた。


「…一つだけ残してても邪魔にはならないか」


別れるのが辛く、惜しかった。

せめてと思い、彼女を棚の高い位置に置いて視界に入らないようにした。




高木さんと付き合ってから二、三ヶ月が経った。

付き合ったからといって特別変わった事もない。

授業は隣同士で受け、分からないところは教えあい…



「ねぇ…ウチに行こっか」



たまに高木さんの家に遊びにいく。



「お邪魔しまーす」



「もぅっ

  何回も来てるんだし、ただいまって言って欲しいな」



「ごめんごめん …ただいま」



「ふふっ ただいまー

 今からチャチャっと作っちゃうね」



高木さんは料理が好きだ。



「今日は朝から煮物を仕込んでたんだ。」



「へぇ…そうなんだ …おいしい」



「でしょー?」



高木さんはニヤニヤしながら、食べている間ずっと僕の顔を見ている。

食べる姿が好きらしい。

だから僕が食べ終わるまで、高木さんはほとんど箸を付けない。

食べ終わったら、今度は僕が高木さんの皿が空になるのを待つ。



「恥ずかしいから見ないでっ」



眉は困りながらも口元が緩むのを我慢している。高木さんは表情がころころ変わる



「そう言えば何で最近缶コーヒーしか飲まないの?」



「ん?あぁ…今ハマってるんだよ

 ペットボトルのコーヒーなんてないだろ?」



「ふーん…」



「気になった?」



「なんとなく。なんでだろうね」



高木さんに申し訳なくて、付き合ってからペットボトルは買っていなかった。

そうだよな。普通はなんとも思わないよな。


そうしているうちに高木さんが食べ終わり両手を合わせる。



「ごちそうさまでした。」



「ごちそうさま。洗い物は僕がやるよ」



「いつもありがとー」



「いいよ ご飯のお礼だし」



台所に食器を持っていく。

スポンジで皿を洗っていると、背中にドンと何かに当たる。暖かい感触だ。



「もー危ないっていつも言ってるでしょー」



「でもこれ好きー」



「はいはい」



高木さんが両手を腰に回してる。

僕の事が好きなんだろうなぁ… 何故か他人事のように感じた


洗い物が終わっても抱きつかれたまま、部屋に戻る。


勢いよく体重をかけてベッドに押し倒される

高木さんがこれをやる時は、何をするか決まっている。

押し倒した本人は顔を胸に埋め、目を合わせようとしない。

僕は高木さんの首に手を掛け、お互いの顔を近づける。

はじめはぎこちなかったけれど、今はお互い慣れたものだ。



キスをしながら徐々に服をお互いに剥いでいく。

生まれたままの姿で抱きしめ合う。



「…いつもごめんね」



「ううん。誘ってるの私だし…」



「いや、でも…」



「…私って魅力ないのかな…?」



「そんな事ないよ」



「でも…その…大きくならないし」



細くて小さい指で触る



「ごめんね。多分そのうち大丈夫になると思うから」



「うん…ごめんね」



次の日の朝に自分のアパートに帰る。

昨日の夜中の出来事を思い出し、台所の戸棚を開ける

醤油のボトルを取り出す。


いま家にあるのはこれくらいか…

包むようにボトルを撫でる。上下に動かすたびに段差の感触が指に伝わる。

指の動きに連動して、大きくなる。指が溝をなぞるたびに、脈をうつ。



「高木さんの時はなんで…いや」



我慢が出来ずに頬を擦り付ける。

目をつぶり、感触だけに集中する。



醤油のボトルなんかじゃなく、ペットボトルだったらもっと…

いや、直さないと やっぱり普通じゃない。

自分に対して説教するようにひとりごちた

やめないとと思いつつ、頬からボトルが離れない。

2週間ずっと我慢してきたんだ。少し位良いじゃないか

僕は自分に性欲があった事にひとまず安堵する。


両手で抱きしめるように感触を確かめる。

もしかしたら僕は甘えられるより、甘えるほうが好きなのかもしれない。

キスをしよう。

冷たくて固い感触が唇越しに感じる。



あぁ高木さんの唇って、柔らかくて暖かいんだな。



高木さんと付き合っていなかったら、このキスに特別感はなかったんだな…

何度もキスをする。



お腹がなる。



しまった。高木さんの家で朝ご飯を食べ忘れた…

コンビニで適当にパンでも買おう


僕は再び上着を着て、家を出た。


歩きながら考える。

高木さんだと性的に思えないのだろうか…

どうやったら、この報われない思いが解消されるだろう。


コンビニの前では知らないおじさんが沢山のペットボトルをゴミ箱に入れていた。

僕みたいに… いやそんなわけないか

きっと家庭ゴミで出したくないんだ 知り合いでもひとりいる

普通の人にとって大事なのは中身でペットボトル自身を特別に思う人なんていない


なんとなく目が離せずにいた。彼女らの行く末を見守りたい。

おじさんは途中でペットボトルを入れるのをやめた。

ゴミ箱がいっぱいになったからだ。


かと思ったら勢いをつけて無理矢理ねじ込もうとしていた。

ガンガン痛そうな音が鳴り響く。



やめてくれ、可哀想だろ。

もう入らないんだ。

心臓の鼓動が早くなる。


痛そうだ。

3人ならまた別の日に連れて来たらいいだろう。



おじさんが音を鳴らすのをやめた。

良かった。安堵したのもつかの間。

手を離して重力に負けた彼女達が地面に転がる



その瞬間足で潰される彼女。



背筋が冷たくなり、頭に冷たさが駆け上がる。

何度も踏みつけ、他の2人も同じように足で潰す。

骨が折れるような音が早朝の静かな住宅街に響き渡る。

心臓が早くなり、冷えて真っ白になった頭に徐々に熱がこみ上げる。

怖くて震えてた体が、熱さで汗が出始める。

体は熱いのに震えが止まらない。


多分一瞬だったのだろうか

潰れた彼女たちが乱暴に押し込まれる。

おじさんは満足したようにコンビニとは逆の方に歩き出す。

しばらく呆然とその様子を見ていた。

はっと僕は思い出したかのように入店する。


空腹は感じない。

目の前のパンコーナーを見向きもせず、奥まで早歩きをする。



「久しぶり。」



沢山の並ぶ彼女達に挨拶をする。



気がついたら彼女達5人を袋に入れて持っていた。

コンビニを出てすぐ右に歩き出す。



「…もうだめだ」



キャップを開け、中身をコンビニ横にある水道に放り込む

買って1分も経たずに本来の役目を失う飲み物。


遅い。イライラする

早く全部出し切らないか


空になった彼女を乱暴に地面に投げ捨て、かかとで踏みつける

一瞬で平らになる彼女

何度も何度も踏みつける

踏むたびに本来の美しさが消えていく

醜く歪み、もう踏んでも砂利の音しかしなくなる

静かな住宅地に僕の心臓の音だけが耳に入ってくる。


今までこんな事はしなかったし、考えたこともなかった

綺麗な女性が無抵抗に壊される。僕が好きなだけ一方的に痛めつけられる。

潰れた彼女をゴミ箱に突っ込む


笑みがこぼれた。


家に帰ったら上着を乱暴に投げ捨て、買ってきた彼女達を机の上に並べる

僕が好きに出来るんだ。彼女達を。


ミネラルウォーターの中身を捨て、柔らかいボトルを潰してみる

今度は両手でゆっくりと、さっきは一瞬だったが、徐々に形が変わっていく様はとても良かった

僕の気分で彼女を好きにできている事に満足感を感じる


思いっきり噛んでみる

そこだけ強い歯形の折り目が出来上がる

僕が傷跡を作ったという思いがより一層征服感を満たしてくれる。


綺麗だよ。美しい。

もっと触らせてくれ。


褒め上げれば褒め上げるほど、醜く醜悪で不細工なその体が際立つ。

素敵だ。

僕のエゴだけで汚れていく様は言葉で形容できない。

興奮で鼓動が早くなり、熱くなる体に対して、後頭部は冷えて、鋭く伸びた独特の冷たさを感じる。


次はこの子だ

カッターを持って台所に向かう。

中身は入ったままで、刃で穴を開ける


君はどんな姿を見せてくれる?


少し硬かったが、何度もなぞったらそこから血のように中身がじわりと漏れ出る

そうか、飲む以外にもこんな楽しみ方があったんだな…

少し握ると白い液体が勢いよく飛び出る。

じっくり楽しみたかったので、握る手を緩める。


小さな穴から出る液体をひたすら眺めた

中身が少なくなって勢いが落ちるたびに、一撫でして穴を広げる

少しずつ出る水が、開けた穴の存在を強調してくれた。


かわいい。

君の傷跡は凄く良い。ドキドキするよ


決して一思いにいかない。

中身が見えるのでどこまで彼女で楽しめるか見えるのがいい

急に終わったら興ざめだ

まだかまだかと残り少ない状態で楽しむ

まだギリギリ楽しめる。もう少しで空になる。

その状態を楽しむのが良かった


気がついたら部屋が暗くなる

4人の彼女達は見る影もない

そう言えば結局朝から何も食べていない…


立ち上がると、ぶつかった棚から何かが落ちる。


忘れてた…

いや、忘れたフリをして見ないようにしていた。


彼女を手に取り、挨拶をする。



「久し振り。マリリン。」



久々にみた彼女は埃を被っていたが、それでも誰よりも美しかった。

やっぱり君じゃないとダメだった。



インターホンの音がする。



「朝倉くーん」



高木さんだ



「マリリンとの時間を邪魔しやがって…」



不機嫌に玄関を開けるといつもと違う彼女がいた

白くて透明感のあるワンピースに、アイロンをかけ、明るくカールしたセミロングの髪。

いつもより明るい赤のリップ

普段の雰囲気と違う高木さんがそこにいた


これはまるで…



「高木さん…」



「ごめんね 急に来ちゃって 会いたくなっちゃって」



あの時の感覚と似ている。



「今日はとても可愛いね」



褒めると一層愛おしくなる。



「き、急にどうしたの?」



「いつもと雰囲気が違っていて、つい口から出てしまったんだ」



「あ、ありがとう… その…あのね、今日は…と、友達に誘われて…

 友達が服とか見立ててくれて… 朝倉くんに見せたくて…

 …どうかな?」



「素敵だと思う。すごく可愛い。ドキッとした

 いままでで1番綺麗だよ。」



「わっ」



両手で彼女を抱きしめる。

背中を指先で一撫でした後、ゆっくりと両手の抱きしめる力を強くする。



「い、痛いよ」



「ごめん。可愛くて力が入ってしまった。」



「そうなの…?

 う、嬉しい…」



「中に入ってよ。」



「…うん」



玄関を閉める。


両手で高木さんの顔を包みながら、顔を近づける。

耳を手の平で栓をしながら乱暴なキスをする。

少しだけ髪が乱れる。

腰に手を回すと動きに合わせて服にシワができる。


整っている顔立ち。

透明感のある肌。

細くて華奢な体。



僕は彼女に恋をした。

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