1-3)関係変化について

 さてそういうわけで、関係変化の結論Bをどうするかによって、相方の方向がさらに決まっていくことになります。粗野で目的のためなら手段を選ばない人。手段を選んだら目的が達成できなかった人。ここまで考えれば簡単なもので、元々ベースがクトゥルフ神話という創作界隈の題材としても有名なホラー小説です。こちらは神話生物のもたらす狂気がいかに恐ろしく、それと比べたら人はいかに矮小かを描いていますので、それを書いて行くにはこの人は家族が神話生物によって破壊された人なのかもしれないと考えられます。

 家族全員を失った唯一の生き残り。悲劇の人間とするには安直かもしれませんが、安直くらいがちょうどいいでしょう。ややこしい人間だと横須賀の描写に時間が割けないので。

 さて唯一の生き残りなので、名前を山田太郎と決めました。どうして山田太郎かというと、全国の山田太郎さんに怒られそうですが偽名としてわかりやすいからです。よく書類記入の例文に使われるイメージですね、山田太郎さん。

 この人は家族を失った復讐者です(実は復讐についてはそうでなくなりますが、しかし因縁は同じものなので気にせず読んで構いません。この段階ではそうした、というだけです)。クトゥルフ神話での復讐なら神話生物だし偽名など必要ないかもしれませんが——このあたりは作り手の趣味ですね。私は基本、怪異への恐怖よりも人間の方が怖い、という感覚です。そのためわかりやすく、この復讐は神話生物を利用した狂信者への復讐としようと考えました。人間相手なら名前をごまかす必要があります。それでいて偽名をわかりやすくするのは、それ以上探られないためです。偽名であることを隠すのではなく、偽名で何が悪いと言うような態度でもって、本当に隠したいことをさらに奥底に隠す訳です。

 さてでは関係変化のBが明確になってきました。山田と横須賀の関係は、当初は利用するされるだけだったでしょう。横須賀はずっとそういうスタンスだと思います。

 けれども山田の性格は復讐のために作ってきたものです。そのため役に立つ横須賀にだんだんと情がわく。また、自分の復讐劇に横須賀を巻き込みたくないと考える。

 結果、横須賀を最後の事件のときに拒否するとしたらどうでしょうか。事件が関係してくるので、このあたりで山田太郎は探偵と決定します。探偵の相棒は探偵助手ではなく、横須賀が記録することを好むため記録者としましょう。ここで個人的趣味として、シャーロック・ホームズの話題を使いたいと思いました。これを使い彼らの信頼関係と山田の本来の気質をあらわそう、という感じです。ぼんやりと、ここでシャーロックホームズを好んでいたのは山田の失った家族、兄と決めます。

 さてそういう妄想をして、最後の事件を考えます。お前は役に立たない、出て行け。そういった山田太郎。山田は横須賀を自身の目として使います。サングラスをずっと使っていて視力も落ちているからです。それをよくわかった横須賀が山田が何故自分を使わないのか、自分が役立たずではない理由なのでは——? 最後の話は、探偵山田太郎を記録していた横須賀一が探偵になる話、ともいえる形にしたいなと思いました。このあたりで終盤に横須賀があばくことが決まります。また、最初に山田が横須賀に伝えることも決まります。

A①山田が横須賀に最初に伝えること

→ワトスンにしてやる/(ワトスンについて)ホームズが有名だから言っただけだ、興味は別にないね

B①横須賀が山田に終盤に言うこと

→ワトスンはシャーロックにとって大切な友人です。……俺はワトスンになれたんですよね、山田さん/(A①の後半の台詞を再び言った山田に対し)シャーロック・ホームズの「ワトスン」は有名ですが、映像作品など日本では「ワトソン」と呼ばれる方が多いです。でも貴方は「ワトスン」と言いました。貴方にとってシャーロック・ホームズは大切な思い出なのでは?


 以上は横須賀が謎を解くための最初の口上のようなものとなります。謎解きはここからはじまり、最終的に解く謎は「山田の家族、過去」です。しかしここで問題があります。証拠がないとごまかせる状況、より、証拠があった方がわかりやすい。しかし横須賀は、当人が隠したいだろう証拠を集めるような性格ではありません。

 とすると一番いいのは隠しようのないこと。——身体的特徴。

 ここで山田のもう一つが決定されます。性別です。山田太郎は、女性、としましょう。身長も決まります。150前後。背丈の小さい女性です。サングラスで覆い隠したのはその穏やかな顔立ち。オールバックにするためハードワックスでがっちりと固めたのは、柔らかい黒い髪。狭い肩幅、薄い体。高身長の横須賀と並べば随分小さい女性が、過去を隠すため女性であること、名前すらも捨てて不遜げに口の端をつり上げ笑う。

 本当なら推理物トリックのほうがいいのでしょうが、私は推理物をかける頭をしていないのでこれがいいな、と思いました。隠しようのない証拠を山田は持ち続けます。山田太郎という名前が示唆する物もわかりやすくなりました。偽名の奥に隠れたのは家族であり性別であります。女性なので、復讐相手は男性にしましょう。淡い恋心が昔あっても良いですね。

 さて、以上のような考えから

A②山田太郎は不遜で尊大である

から

B②山田太郎は家族のために必死に復讐を願ったか弱い女性である

ということを終盤で暴くという目標が出来ました。

 以上のB①B②を実行した上で、横須賀一は山田太郎の相棒として最後の話に挑みます。

 ああ、このことが決まったため山田太郎の名前も決まります。元々作っていたキャラクターを使う予定だったのですが、横須賀に関係するキャラクターたちの名前を私はある程度のルールで揃えていました。

 彼らの名字は平塚藤沢三浦横須賀とひーふーみーよーで揃え、名前は一仁奏茜と一二三四としてあります。なのでここで、山田太郎の名前は五月(さつき)としました。名字はひふみよが作った逆順ですが五が切りいいので逸見(いつみ)としておきましょう。ここは事前にキャラを知っていればメタ推理で読み手が想像できるかもしれない本名にしておきます。最終話の謎解きのために姿の見えない依頼人をサツキとして出すので、勘のいい人は気づくかもね、ぐらいのあれです。(としましたが依頼人は性格上架空でもださないな、と思いましたので名称は事前にわからないことになりました。内容自体にあまり差異はないので問題ないですが。プロット立てないのでこういう書く時に変えることがままあります)

 といってもはじめから山田太郎を女性として私は描くので、気づく人は先に気づくかもしれませんね。イラストであれば私は現在も山田に喉仏を描いていません。絵がかけないのであれですが、基本描く時は男性は寸胴、顎が広め、喉仏、肩幅広めで描いています。(子供は別ですがね)

 山田は低身長なので子供とうまく勘違いされているとラッキーかなくらいですが、喉仏がなく、腰はくびれており、顎が狭く肩幅も狭いですね。また描写の際防刃ベストを中に着せておきます。これは危ない事件と関わっているから、に見せかけて、本当はスタイルをごまかすためです。普通ワイシャツの中に着ないで上にきますしね、ベスト。中に着るのは下手に脱がされるまたは脱げと命令される状況を減らす為でもあります。

(画像資料:https://www.pixiv.net/artworks/65858352(外部サイト))

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