陰謀w 6

 アイリンク・タウン エレベーター前


長谷部はせべサ、本当にヒーローなるノ?」


「あぁ、俺はこの街のヒーローになるんだ」


「現実見た方がいいヨ」


「現実は見てるさ、近未来的な機械を使って来る敵だったり、宇宙から襲来してくる敵を相手にしようなんざ考えていないさ」


「じゃあ何するノ?」


「そうだな〜ゴミ拾いとか、落し物を届けたりとか?」


「それただのボランティア活動ヨ」


 一人前の料理人を目指している太った中国人のファングと、ヒーローを夢見るニートの細身な身体の長谷部はせべ健太郎けんたろうは、駅中にある松屋に向かう為、矢印が下に向いているボタンを押し、エレベーターが来るのを待っていた。


 エレベーターに向かう為に通った、鮮明に汚れ一つ感じない廊下を、『左胸に不自然に穴が開いている女性』や、『首から上がない子ども』とすれ違ったことを知らずに。


「待て待て、勿論悪い奴と戦うさ」


「悪い奴ってどんナ?」


「子どもや女性を襲う悪い奴らとか?」


「警察に任せれば大丈夫ネ、てか男の人も助けなきゃ駄目ヨ」


「……」


「はぁ……真面目に就職考えた方がいいヨ」


 会話をしているうちに、エレベーターが到着、扉が開かれ、中へと入る。


 『乗客』がいたことも知らずに。


 1階のボタンを押し、二人はエレベーターの透明な壁から市川市の街並み眺めていた。


 『壁越ししから覗いている眼光が開かれた中年男性』の姿を知らずに。


「しかしよファン、今更だが本当によくこんな高層マンション何かに俺らが住めたよな、偶然にも部屋が一つだけ開いていて、家賃10万とか、何か出来すぎた話しだよな」


「そうだネ、でも不動産の人が何も言ってなかったシ、怪しいと思ったから色々ネットとかで調べて見たけド、特に無かったヨ」


「そうか、じゃあ大丈夫だろ」


「そうネ、まぁ僕はどっちかって言うと、親友である長谷部の将来が不安だヨ」


 彼らは知らなかった。


 このアイリンク・タウンで起こった出来事を。


 彼らは知らなかった。


 いわく付き物件の場合、不動産屋はそれを説明する義務があるということを。


 彼らは知らなかった。


 この物件を紹介した人物が、この『世の者ではない』ということを。


 偶然なんかではない。


 彼らは導かれたのだ。


 ただの『暇潰し』のためだけに。


「はぁ……俺にも能力があったらな」


「デ〇ドプールみたいに人体実験の被験者にでもなったラ? 運良く能力が手にはいるかもヨ」


「不死身な能力は確かに便利だが痛いのは御免だ、あと一応言っておくがデ〇ドプールはXー〇ENな」


「どっちでもいいヨ」


「お前な! ア〇ンジャーズとX-〇ENは全然違うメ……おいおいなんだありゃ!?」


 長谷部はエレベーターの透明の壁から、ある一定の方向を見つめ驚嘆していた。


「どうしたネ? 宇宙人でも襲来して来タ?」


 長谷部が見たものは襲来してきた宇宙人でもなく、アイリンク・タウンに巣食う『 亡霊』達でもなかった。


「お、おいファン見ろ! 広場のクスノキが植えられてる所!」


「なにネ想像し……チョ!? あ、あの幼女は何ネ!? あの小さい身体に白衣って見たことない属性ヨ!?」


 黄は透明な壁に顔に押し付け、クスノキが植えられている広場、正確にいえば、白衣を着た幼女を凝視していた。


「お、おいファン落ち着けあのガキもそうだが俺が言ってんのは……」


「これが落ち着いていられないヨ! 長谷部はあっちの茶髪のお尻が大きい人ネ? 尻好きの長谷部はあの幼女の素晴らしさが分からな……」


「違、違うって、よく見ろファン! 確かに白衣着たロリと美人なケツがでけー女には目がいくが、あの『 黒い奴』の方が異質で目行くだろが!」


 長谷部が見た『黒いもの』、それはあまりにも異質な存在だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る