ヒロインの親友やめます!

四宮あか

第1話 ヒロインの親友辞めます。

 ティアナ・フォーマット・マーグレイヴ

 6歳

 王都から距離はあるけれど、辺境伯の令嬢だけあって、広大な領地もちの家柄。

 母譲りのすみれ色の髪、父親ゆずりの濃いブルーの瞳の持ち主だ。

 乙女ゲーのヒロインの親友という、なんともおいしいポジションだった女の子である。

 ヒロインのように困難に次々直面することもなければ、悪役令嬢のように、最後は国外追放や死刑ということにはヒロインが誰とくっつこうがならない。

 家柄もよければ、顔もそこそこ可愛い。


 私はステータス画面をひらき、よっしゃぁぁーとガッツポーズをした。


 見事私は転生に成功したのだ。

 神様のうっかりという、異世界転生ではわりとメジャーらしい死因の私。

 地球ではない場所でという条件でもう一度人生をやり直せると言われ。

 乙女ゲーに目をつけたのだ。

 女性で、恋愛がこれからできる年齢とおおざっぱな指定しかできなかったためどうなることやら。

 もし……悪役令嬢に転生したら、悪役令嬢が追放されないように奮闘?とかも思ったけれども。

 私は勝負に勝ったのだ。


 ステータス画面と女の子の憧れの詰まった部屋ににやにやしてしまう。

 6歳となっていたから、私が知っているゲームでの外見とは違い子供の外見なのだろう。



 私の自室として与えられてるだろう部屋は、1Kのアパート暮らしとは大違い。

 広い、角部屋、南向き、窓どころかバルコニーまである、簡易なキッチン、ウォークインクローゼット付きと……明らかに私が住んでたアパートで勝ているところは、シャワーとトイレがあったことくらいで、後は全部負けている。

 家具も天蓋つきのベッドを始めとしてその辺にある机もとても質のいいものそうだ。



 私は大きなベッドに飛び込んだ。

「すごいフカフカ、ひろいー。三人は寝れそう」

 ごろごろと転がってみる。

 楽しすぎる、けどこんなことしてる場合ではない。


 ステータスを開いてっと。

 今後のことを冷静に考えていかないと。

 せっかく、私はこの先に起こることを知っているというアドバンテージがあるし。

 ステータスをみることができるのだから。


 ティアナ・フォーマット・マーグレイヴ

 6歳

 称号 お人好し


 レベル1

 魔力適性 水 風


 HPやMPはみれないのか。

 レベル1はおそらく、お嬢様で子供だから何もしたことがないからだとして。

 称号 お人好しってなんだろう。

 もともとの、ティアナが持っていたものだろうけど…。


 お人好し……………。

 ヒロインの親友のティアナ、彼女だけは何があってもヒロインの味方で。

 困ったときは、必ず救いの手をさしのべてくれた。


 私はイベントを思い返した。

 ヒロインとの出会いは、学園に入学してすぐだった。


 庶民の出であるヒロインは、一定量の魔力を保有していたことで学園に入ったのだ。

 基本貴族は魔力を保有しており、庶民で魔力を持つものはほんの一握り、学生の大半は貴族だった。

 13歳の下町育ちで貴族の礼儀をしらない彼女は悪役令嬢アイリスの婚約者に馴れ馴れしく話しかけてしまう、そこを私が仲裁に入ってから仲良くなったはず。


 彼女はルールを知らなかったのでしょう、私に免じて一度目は許していただけませんかと。

 アイリスは私の顔をたてて、庶民の出では知らぬことも多いでしょうとその場では、自分の婚約者になれなれしく話しかけてきた女がいたにも関わらず大人の対応でひいてくれたのだ。



 その後も貴族のルールを無視、知らないを突き通して次々と攻略対象と出会うヒロイン。

 攻略対象の大半にはライバルとなる婚約者がいた。

 私はその度に仲裁にはいり、ヒロインの味方をしてきた。


 あるときは騎士候補生の彼と二人っきりになれるように、アリバイ工作をし。

 あるときは王子と二人きりになれるように………。

 ヒロインが頼むことに対して、いつもこういうのだ。


 もう、仕方がないわね、なんとかするから心配しないでっと。




 ん?



 んん?




 お人好し


 ティアナはお人好しだったのだ。

 他の令嬢は立場をわきまえて、ルールを破るようなお願いはしてこない。


 だけどヒロインは違った。

 この庶民も少なからずいる学園でヒロインだけが貴族のルールを学ばず入学し。

 ルールを守らず、私にお願いすることで辺境伯というバックボーンの私を通して膨大な我がままを通してきたのだ。


 私って、いい役ではなくて、ヒロインにとって都合のいい役だったんじゃないの?

 一度頭によぎった疑問。

 それはイベントを思いだせば出すたびに確信へと変わっていく。

 どのシナリオを選んでも、ヒロインを助けることはあっても、私がヒロインから助けられる場面はない。

 学園生活での楽しいイベントの数々、最後の一年に至っては、ヒロインがすんなりとお目当ての相手と二人っきりになれるように。

 そして、二人っきりだとばれないためにもティアナは数々のアリバイ工作をしたのだ。


 ということは、ティアナは最後の年の思い出は?

 二人っきりではない、私もいたのってことにしたティアナは?

 他の誰かと一緒にいれば、ヒロインの嘘がばれてしまう。

 ティアナはずっと一人っきりだったのではないだろうか。


 前のティアナはお人好しだったからお願いされたら手助けしてきたけれど。

 私はちがう、ルールもマナーも守らないヒロインを助ける理由がない。



 よし、ヒロインの親友辞めよう!!


 私の第二の人生はヒロインの親友に転生したけれど。

 ヒロインの親友をやめることにしたのだ。



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