空の国へ

@papico8300

第1話

 空から人が落ちてくるのを見たことがある人はこの世界でいったいどれくらいいるのだろうか?それは空想の世界だけで起こりえることだと思われている。しかし、空想の世界で起こりえることは実際の世界でも起こりえる。


 カンナが空を見上げたとき、空から何かが落ちてくるのが見えた。それが徐々に近づいてくるにつれ、カンナはそれが人間の形をしていることに気づいた。金色の程よい短さの髪の毛、160くらいの背丈で華奢な身体をしたきれいな顔をしたその人間の形をした物体はカンナの前にゆっくりと落ちた。


 カンナはゆっくりとその物体に近づいた。物体は動かない。彼女は恐る恐るその頬に触れた。温かい。造られた温かさではなく生の温かさだった。もしかすると、これは本物の人間なのかもしれない。だが、本物の人間が空から落ちてくるだろうか?仮にもし本物の人間であれば、空から落ちた時点で即死であろう。しかしこの人間はまだ温かい。加えて身体には一切の傷や損傷がなかった。なので、これは人間型のロボットだとカンナは結論付けた。


 そうなると次の質問が頭の中に浮かんだ。なぜ人間型のロボットが空から落ちてきたのだろうか。そもそも人間型のロボットは空にいるのだろうか。おそらく飛行機が輸送しているときに誤って落ちてしまったのかもしれない。カンナの頭の中は実際はひどく混乱していたが無理やり結論をこじつけこれ以上考えないようにした。とりあえずはこのロボットをどうにかしなければ。


 彼女は再びそれを見た。ロボットならどこかにスイッチがあるに違いない。それを探してスイッチを押せば起動するだろう。彼女はそう思いスイッチを探し始めた。しかしどこを探してもスイッチはない。新型のロボットはもはやスイッチなどなく自分自身で起動するのかもしれない。カンナはまた自分で結論付けた。


 ひとまず家に戻りなにか役に立ちそうなものをとって来ることにした。ロボットならバッテリーやオイルなどが役立つかもしれない。彼女はそれらをバックにいれて再びさっきの場所に行った。すると、ロボットは姿を消していた。


 もしかすると場所を間違えたのかもしれない。戻るときに目印をつけておけばよかった。カンナは記憶をたどりながらロボットが落ちていた場所を目指した。しかし、場所は同じだった。


 ロボットが落ちていた場所はかすかに地面が荒れていたがそれ以外に目立った違いはなかった。


 そうか、これはきっと夢だったんだ。そもそもロボットが空から落ちてくるなんてことはありえない。きっと自分は疲れていたんだ。そういえばここ最近あまりよく眠れていなかったから。カンナはまたも勝手にそう結論づけ家に戻った。

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