第11話 あなたと受粉したいとか言われても困るよ!

『異世界プランターズ編 前編』



 残念な事に俺こと本城庄一郎には人間用の生殖器はあっても、雄しべ、雌しべはない。

 そもそも俺は植物ではないのだから当然といえば当然と言えた。


『あなたと受粉したい』


 そんな事を言われても、できないものはできないのだ。



 * * *



 教室でいつものように居眠りをしていたはずなのに、目を覚ますとそこは異世界であった。


「……ん?」


 目の前に広がっている異世界には、草木しか見当たらず、人の息吹を感じさせるものが一切なかった。

 建物もなければ、人が通るような道さえなく、ただただ草原が広がり、遠くには森が存在し、果ては山々が屹立していた。


「誰だ、俺を召還したのは」


 俺が召還されたという事は、召喚士が存在しているはずだ。


『私です』


「ッ?!」


 俺の脳に直接話しかけられたように錯覚した。


『私があなたを召還した召喚士です』


「また脳に話しかけられている!?」


 もしや、俺は覚醒してしまったのだろうか、ニュータイプに。

 とうとう人類の次のステージであるニュータイプにまで上りつめたというのか、この俺が。


『それはあなたの錯覚です。口を持たない私たちは、あなた方の言う脳で直接会話をし合うのです』


「口を持たない? 何者なんだ、お前は」


『目の前にいます。目という器官を使い、私を見てください。すぐ傍にいます』


「俺の視界にあるものは草原……。もしや……草か。草なのか!」


 この草原にある一茎の草と話をしているのだろうが、見分けが付かないので、誰と話しているのかが全くもって見当が付かない。


『草とは失礼な言い方です。私たちは自らをプランターズと命名し、この大地に根を生やして生活している種族です』


「俺たちの世界で言うところの植物に召還されたって事なのか」


『植物という概念が私には分かりかねますが、おそらくはあなたの思っている通りなのでしょう』


「で、プランターズの召喚士さんが俺に何を求めているんだ? 俺には、やれない事はたぶんないぜ」


 外来植物の討伐か?

 待てよ。外来動物がプランターズを食い荒らしているから退治しろとかか?

 それとも、雨がしばらく降っていないから降らせろとかか?

 俺にできる事なら、いつものようにさっさとやって、さっさと帰ってやる。


『あなたと受粉したい』


「……」


 言葉の意味が分からない。


『私たちプランターズは進化しなければいけないのです。そのためにも、あなたと受粉したい』


「あなたと受粉したいとか言われても困るよ! 俺、ち○ちんしか持ってないし!」


 残念な事に俺こと本城庄一郎には人間用の生殖器は持っていても、雄しべ、雌しべはない。

 そもそも俺は植物ではないのだから当然といえば当然と言えた。


『あなたと受粉したい』


 そんな事を言われても、できないものはできないのだ。

 やろうと思えば、俺のち○ちんでできたりするものなのだろうか、受粉とやらを。

 だけど、できるか分からないがやれ、と言われたらさらに困る。


 今回のミッション、俺は達成することができず、戻る事さえ許されないのだろうか……。



異世界プランターズ編 前編終了

後半の第12話へと続く

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