第15話 15 初登校




九月一日。今日から学校です。数ヵ月ぶりの学校。そして新しい学校。しかも、性別変わってから初登校。馴染めるかなあ。心配です。

俺は、そんな事を考えながら制服に着替えた。


「あー違和感バリバリ。俺がスカート穿いとるって変なわ」


違和感ありまくりだ。スカートに慣れてないせいもあるんだけどさ、数ヶ月前まで男子の制服着てたんだ。女子用の制服なんて変な感じです。

今は、九月という事もあり制服は夏服。半袖の白いブラウスに黒いプリーツスカート。ブラウスの襟元には、中等部の生徒である事を示す赤いリボン。高等部は、黒いリボンだ。ブラウスの上に黒いベスト。ちなみにベストは、着ても着なくてもオッケーだ。

スカートとブラウスには、やや抵抗があるな。

特にブラウス。小学校やほんの数ヵ月通った前の学校は、白いポロシャツだった。 ポロシャツって動きやすいし、夏は汗をかいても肌に貼り付く事はなかったけど、ブラウスは動きにくいし、汗をかいたら生地が肌に張り付きそう。

あとスカート。心もとないよ。パンツ見えちゃうの嫌だから、短いスパッツ穿いてるけど、それでもスースーするのはいただけない。

と、姿見の前で制服のチェックしてると、制服に着替えた雫ちゃんが呼びに来た。


「 夕陽、準備出来た? はよせんと(早くしないと)遅刻するよ」

「分かっとる。ちょっと待って」


俺は、机にかけてた鞄を提げて、雫ちゃんの側に駆け寄る。


「 夕陽、ちょっと待ちんさい。髪、結んであげる」

「 えっいいのに」

「ええけ、すぐ出来るけぇ待ちんさい……はい出来た。」


雫ちゃんは、手早く耳から上の髪をまとめてくれた。前に晶もしてくれた髪型ハーフアップって言うらしい。ホラと、雫ちゃんから、手渡しされた鏡を見ると、ボサボサ気味だった髪の毛がきれいに纏まってる。


「 もうちょい長けりゃええんじゃけど。色々いじれるし、まあこんくらいが、夕陽らしくてええかも」

「 ありがとう、雫ちゃん」

「おーい、姉貴、夕陽。早くせんと、バス乗り遅れるよ」


晶に呼ばれて、俺と雫ちゃんはあわてて、部屋から飛び出した。


「 多いねやっぱり」

「 まあこの時間、学生が占領しちゃうからね」


隣に立ってる雫ちゃんとそんな会話をかわす。

通学には、駅前から出てるバスを利用する。私立の学校によっては学校専用のバスを用意する学校もあるみたいだけど、旭ヶ丘学園には専用のバスは無くて、生徒は普通の路線バスを利用してるんだ。

今乗ってるバスにも、旭ヶ丘の生徒が沢山乗ってるし、職場に向かう大人に混じって旭ヶ丘の生徒以外にも、近隣の公立高校や中学校の生徒でバスはぎゅうぎゅうだ。

身長が145センチの俺は周りの人に潰されそう。学校まで十分くらいなんだけど、圧死しないよね?

校門で、雫ちゃんや晶とは別れて職員室に向かう。事務のお姉さんに待つように言われて待ってると、四十代くらいの女性の教師がやって来た。



「 あなたが、夕陽さんね?」

「 はい、俺、じゃなくて、わたっ私が音無夕陽です」

「 担任の田中です。あなたの事情は、お母様や実のお兄さんから聞いてます。無理して、『 私 』を使用しなくてもかまいません。本来なら、使ってほしいけど、慣れないし、徐々に使うようにすればいいわ。……それにしても、リアルで、『僕っ子』と『 俺っ子』同時に拝めるなんていいわぁ うふふ」


僕っ子に俺っ子って、なんだろう? って言うか、先生一人ニヤニヤ笑ってちょっと怖い。大丈夫だろうか? ヤバくないか? 俺が、そんな事を考えながら、見ていたせいか、田中先生は、気まずそうに、咳払いをし『 教室へ行きましょうか』と言って、俺を教室へ連れて行く。

先生に言われて、教室の外でしばらく待機してた。ちなみに、クラスは一年C組。晶と同じクラスだよ。


「はいじゃ、入って」


俺が教室に入ると、三十人近い生徒の視線が、一斉に向けられた。大半は、この娘どんな娘なんだろう? という好奇心に満ちた視線なんだけど、一部ねちっこいというか、妬みを込めた視線を送ってくる連中がいるな。初日から、喧嘩売ってくるとか、やな奴らだな。


「えーと、俺は、音無夕陽です。晶とは、義理の姉妹になります。よろしくお願いします」


自己紹介をして、席に座る時、こそっと、『 女の子なのに、俺だってうける』って言ってるのが、聞こえた。思わず聞こえた方を睨んじゃったよ。


この行為が、後々とんでもないトラブルになるなんて、この時は全然思ってなかったのだった。


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