第4話 ドスケベシティにて

それは、いつからあったのか。


海岸線からおよそ20キロの位置にある小高い丘の上には奇妙な形の建造物があった。

太陽が昇っている間は一見白いアリ塚のようにも見えるその建物は、近づいてみるとその幅は数キロに及び、高さは優に数百メートルはあろうかと思える。

外側を白く塗り固めた泥のようなものは、その壁に触れればところどころに紙繊維の切れ端のようなものが見えるだろう。

しかしそこにたどり着けるのは一体何人か。

建造物の周囲には無数のドスケベアーミーが常時巡回しており、不審な人間や不審なトラック、戦車に至るまですぐさま排除されるレベルの警備が行われていた。

ドスケベアーミーたちが各地から略奪したドスケベを積んだトラックのみが、その巨大な建造物の根元にぽっかりと空いた穴から中に入る。

そこから先は少なくともドスケベアーミーたち以外は構造を知る者はいない。

ドスケベアーミーの中でもその建物の全容を知るのはごくごく一握りであろう。

ここが―――城塞都市ドスケベシティである。


「またドスケベマン、だと」

まっくらな部屋の中、無数のろうそくの中で黒い影が揺らめいた。

この者こそ、数多くの争いを勝ち抜き、この関東地方の頂点に立った者。

城塞都市ドスケベシティを作り上げた、その者―――ドスケベキングだ。


斥候のドスケベアーミーは思わず震えた。

各地でのドスケベ略奪を邪魔する謎の男、ドスケベマン。

何人もの兵が遭遇しているがその正体の手がかりとなりそうなことは何一つ掴めないままだった。

ただ一つ、わかることは。

「ワシにたてつく、羽虫めが」

黒い影の手のグラスがぴしりと音を立ててひび割れた。

「分かっておるな、おぬしら」

その言葉に空気が揺らぎ、別の黒い影が4つ、音もなく歩みでた。


そう、彼らこそドスケベ四天王である。


「東の将、悪書セイバー、ここに」

「西の将、アーマード倫理観、参じました」

「南の将、マリリン参じておりますわ」

影のうち3人が名乗る。

「……ジョー!ドスケベジョー、挨拶せよ!」

悪書セイバーと名乗った影が、最後の影へ忌々し気に声をあげる。

それに対して、ドスケベキングは手をあげ制した。


「……ドスケベマンを、殺せ」


他の3人が立ち去った後も、北の将、ドスケベジョーはその場にしばしの間佇んでいた。

ドスケベキングにたてつく男。

超人的な身体能力で、各地のドスケベアーミーを倒し、ドスケベを守ろうとする。

途方もないドスケベキングの兵力に何一つ恐れることなく、反抗する。

ジョーにはその男の心当たりが1人だけあった。

「あいつ――生きていたのか」

少しだけ唇を歪めて笑い、ジョーも闇の中へ姿を消した。

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