葬星行進曲

 楽園から飛び立ち、今度こそ私達の創造主の元に戻る為に翼を広げる。

 途中、見慣れた紅が視界に入り羽を休める事にする。

 地上では、2人の男女が紅い水溜りの上で倒れている。

 水溜りは太陽の光に反射してキラキラと輝いている様に見えた。

 小さな粒のその光は、虹輝から貰った砂糖菓子ではなくて…。

『小さなお星様のうた』を連想させ、気がつけば椛と共に謳っていた。

 謳い終わり視線を地上へ戻すと、先程まで倒れていた人間の男女の姿はそこになく、代わりに人形が2体立っていた。


 地上を眺めていると、妖精達に先を急かされる。

 仕方なく再び翼を広げ飛び立つ。


「ねぇ、椛」

「ん?」

「……ううん…。でも、ありがとう」

「変なの。」

「私、すっごく楽しかったよ。だから、ありがと」


『私の夢を叶えてくれて』


ーーーーーーーーーーーー


 ある昼下がり。

 1人の女性が窓辺で紅茶を飲んでいた。

 テーブルの上には、表紙に小鳥のイラストが描かれている1冊の本と、数枚のクッキーが乗った皿。

 そして、開いている窓枠に1羽の小鳥が止まると、女性はにこりと微笑み小鳥に話かけるのだった。


「お帰りなさい。貴女の大好きなクッキーを用意して待ってたのよ」


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