頭の上に選択肢が浮かぶのは案外いいことばかりじゃない

小椋鉄平

第1話

 足元から淡々と鳴り響く砂利を踏む音……。

 一定のリズムで目的の場所へと俺は向かっていた。

 今日は、特に初詣とか特別な日ではない。けれども、ここに訪れる人はわりかし多い。

 桜花おうか御霊みたまの神社。それが今まさに向かっている場所だ。

 数年前まではただ森に囲まれているせいで地元民ですらよく分からない神社だったのが、近頃、有名人が訪れたとかで少しずつ人気を集めている。

 ただ、俺はそういった物珍しさにつられて来ているのではない。

 隣ではハッハッハッと荒い息を立てている柴犬がいた。

 そう。ただの犬の散歩コースなのだ。

 何も面白くなくて、逆に申し訳ないけれどもそういうことなのだ。

 ポケットから五円玉を取り出し賽銭箱に放り投げる。これもルーティーンといわれればそうなのかもしれない。

 そして、二礼二拍手一礼を行う。

 ここで、何気なく思ったことを軽々しく願ってしまったことが今後の人生を大きく変えようとは、俺は思いもしなかった。

 その願いとは……。


「ああ、頭の中に選択肢が浮かんだらなぁ……」


 だった。

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