第4話

「やった…」


 仲島孝彦(32)はピエロを殺害した。


 カタカタカタと操り人形のように痩せたピエロは顎を鳴らす。


 カタカタカタ。

 カタカタカタ。


 カタカタカタ。

 カタカタカタ。


 天井の丸穴から太ったピエロはその光景を見ていた。ただ見ていた。


 カタカタカタ。

 カタカタカタ。


 あなたの後ろから太ったピエロがあなたを見ている。


 その死角から、あなたの首筋を見ている。


 カタカタカタ。

 カタカタカタ。


 カタカタカタ。

 カタカタカタ。


 仲島孝彦の視界の端にはいつも痩せたピエロが居た。


 そして遂に仲島孝彦は痩せたピエロを退治した。

 

 太ったピエロの存在に気付かない。

 あなたも気付いていない。


 カタカタカタ。

 カタカタカタ。


 仲島孝彦は睡眠時を狙った。


 部屋の片隅にいつも痩せたピエロがいた。


 自らを扉にして赤い世界を見せてくる。


 夢の中でいつも仲島孝彦は赤い世界にいた。


 太ったピエロはそれを死角からいつも見ていた。


 首筋を見ていた。


 ゴロン。


 仲島孝彦の首が胴体から離れ落ちる。


 カタカタカタ。

 カタカタカタ。


 赤い夢は絶望の入り口。


 太ったピエロは首筋を冷やす。


 フゥッと息を吹き掛けると首筋が切れていく。


 首筋がヒヤリとした時、あなたの魂は斬られている。


 カタカタカタ。

 カタカタカタ。


 仲島孝彦の顎が鳴る。


 痩せたピエロと仲島孝彦。


 太ったピエロは満足そうにそれを見詰めていた。


 絶望の世界。 

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