第9話 ナイス・ガイ

俺たちは公園から離れて近くの路地裏を歩いていた。


【…どうやら追ってはこないみたいだな。】


「ん?なにが?」


ノキアが急かすから急いで公園から立ち去ったのに、今度は追ってこないって…


「あっ!もしかして、さっきの試合で俺にファンが!?そのファンが俺を追っかけてるってこと!?」


マジかよ!まだ一試合しかしてないのにもうファンができたのか!?いやーつらいわ。優秀な男ってつら


【貴様は何もしていないだろう。そうではなく、あそこにいたオリジンのことだ。】


オリジン?さっき倒した奴のことか?


「ああ。さっきのオリジンか。なかなか強かったよな。」


【違う。。あの男、オリジン使いだ。】


えっ!?あの人もオリジン使いなの!?なら敵じゃん!


「じゃあなんで俺と戦わなかったんだ?」


【そう、そこだ。あの時点で今の私が使えるスキルは2つ知れ渡っていた。スキルの付け替えは時間がかかる。今回は家を出る前に私が決めたがな。】


ああそれで俺の知らないスキルをノキアが知ってたのか。って勝手に決めてたのかよ!


「あのさぁ、別にスキルを決めるのはいいんだけどせめて事前に教えてくれよ。戦闘中いきなり言われても、反応できないかもしれないだろ。」


【…先ほどの少年もそうだが、プレイヤーがスキル名を言えば私たちの意志に関係なくスキルが発動する。もし貴様が勝手にスキルを発動させたら、勝てる試合も勝てなくなるかもしれんだろう。】


うっ。確かにさっきの試合、マコトがあそこで毒霧ポイズンミストを発動させてくれたからこっちの勝利は決まった。俺があんなミスをするかもしれないとノキアは言っているんだ。でも…


「相手の目の前でスキル名を言ったら、こっちがスキルを使う前に対策されるかもしれないだろ?さっきの閃光だって、目を閉じてたら防がれてたかもしれないのに…。」


【それは…まぁ、確かに。貴様の言い分もわかるが…】


「ならいいだろ?別に。スキルの練習は帰ってからするからさ。」


【…いや、やはりダメだな。教えるわけにはいかない。】


うーん、頭の固いやつだな。そりゃ確かに勝手に使われたら困るかもだけどさ、相手に知られるよりかはマシじゃないか?だがノキアも相手に知られるのは得策ではないと思ったらしく…


【…そうだな。今度から合図するときはイニシャルを使う。加速クイックならばQ《きゅー》といった具合にな。スキルは教えるが、勝手に使うことはゆるさん。】


…まぁ教えてもらえるならいいか。いつか俺のいうことを聞いてもらうからな!


【むっ、待て。この気配、オリジンだ。】


えっ!?どこどこ!?きょろきょろ周りを見渡すが誰もいない。


「誰もいないじゃないか。ほんとにいるのか?」


【ああ。間違いない。上だ!】


上?首を上げると、少年と青年がビルの上からこちらを見ていた。


「おっ。こっちに気付いたぜ。ナイス。」


【ケケケ。そうみたいだな、ガイ。】


2人は笑いながらビルから飛び降りた。ってちょっと待って!


「や、やばい!ノキア!あの2人が!」


【落ち着け。よく見ろ。】


よく見ろって…え?顔を上げると、少年から黒い翼が生え青年を抱きかかえていた。


「探索はするもんだな。まさかこんなところでオリジンが見つかるなんてな。」


【ケケケ。さっさと勝負しようぜ。】


少年は青年を降ろし俺らに勝負を挑んできた。


「ノキア。どうする?」


「おいおい、まさか勝負を挑まれて逃げるのか?男の風上にも置けないやつだな。まぁそんな顔つきじゃ仕方ないか。」


むっ。言わせておけば。確かにこの人、なかなかのイケメンだけどさ。


「ノキア。こっちもやるぞ。」


【待て!アスカ!】


いいや!待たないね!俺はスイッチを押す!俺はゼクト起動ボタンを押してノキアを呼び出した。


【…はぁ。】


ノキアは俺の顔を見てため息を吐いた。いやなんでだよ。


「なんだよその顔。相手がいるんだから別にいいだろ。」


【もういい。それで?お前は何者だ?】


ノキアは少年に向けて問いただした。


【ケケケ。人に尋ねるときは自分からって習わなかったか?】


少年はケタケタ笑いながら聞き返していた。


【…ノキアだ。】


【知ってるよーん。さっき公園で戦ってたやつだろ?ケケケ。】


…なんだこいつ。めっちゃ腹立つ。


「おいおいいきなりバラすのかよ。人がせっかく探索して見つけたっていう嘘までついたのによ。」


【ケケケ。悪い悪い。つい口が滑っちまった。】


さっきの話嘘だったのかよ!


【ケケケ。俺はナイス。】


「俺はガイだ。よろしく頼むぜ。」


そうして俺とノキアの2回目の対戦が始まった。あれ?そういや俺、スキル教えてもらってないんだけど…ノキア?おい、ノキアー!?

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