心と本の配達人。

名前:デリバリン・ドリムリード
通称:思い出の配達人
誕生日:1月3日
座右の銘:思い出と本を大切に。
紹介文:
 芸術の街に生まれたデリバリン。
 紙を浮遊させて自在に操ることが出来る。
 能力を買われて図書館司書として街で一番大きい図書館で働いていた。
 しかし、古くなったり汚れや破れなどで読めなくなったりした本を処分する作業を任されると、常々それに寂しさを覚えていた。
 ある日、いつものように廃棄される図書を処分していたところ、とある少女が近づいてきて一冊の本を手にとった。ページが幾枚か抜けた古本だった。
「この本、好きで何回も読んでいたの。捨ててしまうならくださらない?」
 お世辞にも綺麗であるとは言いにくい本を手に、優しい微笑みをたたえた少女を見て、デリバリンは作業する手を止めた。
「どうしてもその本が欲しいのならば、別な新しいものを取り寄せることも出来るよ」
 ここまで古くなってしまえば、開くたびにページが落ちて読めたものではない。
 しかし少女は首を横に振る。読んでいた時の思い出が蘇るから、同じ本でも新しいものではなく、これが欲しいのだと。
 デリバリンは眼の前のもやが晴れた。
 そうだ。この捨てられる本に居場所を作ろう。
 デリバリンは少女にありがとう、と感謝を伝え、呆気にとられる少女を背に捨てる予定だった本をまとめて街へと繰り出した。

 以来、捨てられるはずの図書を街中の人に見せて巡り、必要とする人に渡す仕事を始める。
 しばらく続けていると、本をもらった途端に破き始める男性がいた。
「どうしてそんなことをするの?」
 破かれた破片を集めようとすると、彼はデリバリンから紙片を掠め取った。
「この本を見るとあの日に図書館で愛の告白に失敗したことを思い出す」
 彼は顔を真赤にしてその恋愛小説だった紙片を胸に抱いている。
 そういう思い出もあるのだな、とデリバリンは酸っぱくも温かい感情になって、紙片を全部手渡した。
「捨ててもいいけど、そのページの言葉、素敵だと思わない?」
 彼はページに目を落とし、すこし目を見開くと、ひと粒の涙でページをぬらした。
 そうしたやり取りがあって、デリバリンは本に対する感情は人それぞれで、それがどんな形であれ大事にすべきなのかもしれないなと、ひとり納得して本の配達を続けるのだった。

 デリバリンは街の住民に広く知られるようになった。
 ひとりひとりの思い出と本を大切にする、“思い出の配達人”として。
 今日もデリバリンは、図書館から本をもらって、街のみんなに思い出を配ります。

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