第41話 殺し屋と2人目の同業者 その3

駅前のファストフード店に向かう。

それぞれ関わりはあるものの、こう4人で一緒にいるのは初めてだろう。

4人。

そう、もう1人連れが増えたのである。

俺と涼輝と未来で学門を出たとき、何故か園田さんが待ち構えていた。

「ちょっと、3人」

「げっ」

涼輝は速攻で逃走しようとするが、首根っこを掴まれてあえなく捕まる。

「相談事があるの、今日時間ある?」

「いや、用事があるからまた今度」

凛とした態度に慄きながら俺が断ろうとしたが。

「用事ってなに?3人で帰ろうとしてるんだから、どうせまたゲーセンとか遊びに行くんじゃないの?」

一向に引かない園田さん。

ていうか『また』って何?春休みの事知ってるのか?

「とある友人に聞いたの、3人仲良く遊んでた所を見たって」

怖っ、刑事の娘の情報網。

「みんなでご飯を食べに行こうって事になったんです」

「へぇ、じゃあ私も混ぜてよ」

「なんでお前とメシ食いに行かなきゃ行けねぇんだよ」

もがきながら涼輝は苦言を呈す。

っていうか、運動部の男子がもがいて抜け出せない園田さんの腕力すげぇな。

「いいですよ、ね?ひかるくん」

未来がこっちに振る。

こうなってくると、断る事は難しいだろう。

どうせ何を言っても付いてくるのは明白だし。

「わかったわかった」

俺がそういうと、園田さんは笑顔に変わりこう答えた。

「でも、まだ学校の敷地内だからボタンは閉めなさい」


店に着くと学校終わりということもあり、様々な制服の学生が屯していた。

「こういうところに行くのも久しぶりね」

そう言いながら園田さんは席に着く。

「……注文しに行かないの?」

「ええ、私は家に帰ってからちゃんとご飯を食べるから何も頼まないわ」

それより1人でも席を確保しておいた方が楽でしょ?と返す彼女。

「でも、それだと流石に気まずいだろうし、ジュースでも頼んどくよ」

「ありがとう、当然奢りよね?」

はあ?と声が裏返る涼輝。

「それぐらい払えよ」

「わかった、私が勝手に付いてきたし出すよ」

あっさり折れた園田さん。しかし、その後こんなことを言った。

「でも、そんな事も気にするなんて小さい男ね。なんでこんな奴がモテるのか分からないわ」

「へぇー!そんな事言うんだー!生徒会長になろうとしてる人がそんな事言っていいんだ!」

涼輝は机を叩いた。

口を大きく横に開いて目も見開く。

折角のイケメン顔も台無しな変顔である。

張り合っている2人を他所に俺たちは注文しに行った。

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