第31話 殺し屋と不死鳥と新学期 その1
『桜咲いたら一年生』なんて歌があるけど、最近は地球温暖化のせいで、新学期始まる頃には桜なんて散っているんだよね。
そもそも、俺が通っている高校に桜の樹なんてないし。
あったとしたら死体を埋めるのに最適なんだろうけども。
まあ、そんなどうでもいい話は置いといて。
「そろそろクラスの組み合わせでも見に行きましょう」
「ああ」
ブレザーの袖を引っ張る未来を見て、俺は校門をくぐった。
玄関周辺では生徒が張り紙を見て一喜一憂している。
俺は3年生の所へ見に行こうとした。
どうも人の波で溢れて思うように動けない。
これだけ密着していると人を刺しても誰がやったのか分からないのだろうな。
と、未来は隙間を縫って移動していく。
変なところで彼女は器用だ。
俺も未来の通ったところを真似するように進んでいく。
玄関にたどり着いたら、箇条書きに並ぶ自分の名前を探しにいく…訳ではなかった。
携帯のカメラで写真を撮り、人通りの少ない廊下でじっくり観るとしよう。
とりあえず、2年の時の下駄箱に行くため、また人混みに戻ろうとした。
「ランドセルに気をつけろ」
不意に声が聞こえ、とっさに振り向いた。
しかし、誰が言葉を発したのか全くわからない。
幻聴だろうか、それとも誰かの差し金で俺に忠告したのか。
まあいい、さっさとここを抜けよう。
廊下には俺を待っていたかのように未来が壁にもたれていた。
相変わらず無表情に近いが、笑っているようである。
「良かったですね、同じクラスですよ」
「え、あそうだったのか」
「あれ?見ていないんですか?」
未来は不思議そうな顔で俺を見つめた。
「さっき写真を撮っただけで、あんまり見ていないんだ」
「そうなんですか」
「あまり人混みは好きじゃなくてな」
「では、ネタバレをするのは止めておいた方がいいですね」
「別にクラス替えをそこまで楽しみにしていた訳でもないし、そんな配慮はいらないんだが」
と言いながら俺は携帯を開き写真を見る。
どうやら、俺と未来は2組になったようだ。
「って、涼輝も一緒なのか」
「この前、ゲームセンターに居た人ですね」
あいつ、あの後ラインで未来と再選させろとせがんでいたな。
「げ、園田さんも同じクラスか…」
「そうですね、あの人は私も苦手です」
「なんか嫌なんだよ、あいつ俺に何でか付きまとってくるんだよ」
「払い落としましょう!あんなルールに縛られた堅物の虫なんて」
「…そんなに酷く言うか?」
未来は軽く頰を膨らませる。
「一通り見たし、教室に行くとするか」
「そうですね、ひかるくんと同じクラスは少し楽しみです」
そうかいと、返しながら俺の頭の中には人混みの中で聞いたあの一言を思い出していた。
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