第26話 殺し屋と不死鳥の休日 その4
「珍しいな、お前がこんなところにいるなんて」
「お前らそんなにも俺が外出する事が不思議なのかよ」
驚く涼輝に俺は溜め息をついた。
確かにあまり活動的ではないかもしれないが、引きこもりではない。
「そういうお前はなんで1人でいるんだよ」
見るからにスクールカースト上位である涼輝が、友人とつるまずにショッピングモールに居ることが俺は不思議で仕方がない。
「別にいいだろ、最近みんなと遊び過ぎて疲れたんだよ」
1人の時間も欲しいしと、彼は言う。
嫌なヤツではないんだけどいちいち癪に触るんだよな。
「お前ってUFOキャッチャーとか得意?」
「いや、あんまりやったことないな」
涼輝は手を振って返す。
「じゃあアレは凄いのか?」
「うん、かなり上手い方」
そう言って俺たちは同じ方向を見る。
そこには、ぬいぐるみを3回のプレイでとっていく未来の姿があった。
「意外と簡単でしたね」
「普通、あんな風にはいかないと思うよ」
そう言って俺は、せっかく空いた手を塞ぐ荷物を見た。
未来はお菓子や時計なども取り続けるのだが、軽い人だかりが出来たところで強制終了させた。
「あれ以上やり続けると店員さんに出入り禁止になるぞ」
「いや、もう既に遠目から睨むような目で見られてたよ」
涼輝は手を頭に当てながら笑う。
そういや、このぬいぐるみなんか不気味だな。
若干悪魔みたいなスタイルしているし、こんなのが未来の好みなのか。
「いやいや、こういうカッコかわいいのがいいんじゃないか」
「そうですよ、ひかるくんは分かってないです」
「なんか凄い意気投合しているな…」
2人の真剣な目線に俺はたじろぐ。
「次は音ゲーしましょうよ」
「良いけど、俺あんまりリズム感ないよ?」
「なんでお前も一緒にやる雰囲気になってんだよ」
「え、ダメ?」
涼輝は眉をひそめる。
別に嫌なわけではないんだけど…
「そっか、せっかく2人きりのデートだもんね」
「なっ!そんなんじゃねーよ!」
そう言って未来を見るが、彼女も顔が赤くなっている。
「そんな、デートだなんて…」
一方で涼輝はからかうようにケラケラ笑い続ける。
「いいよ、分かったよ」
「えー、でも悪いし帰るよ」
「いいから残れ!」
俺は溜め息をついてゲームの品定めをし始めた。
「これ、結構難しいやつだな」
そんなこと言いながら涼輝はスコアSSをとる。
やったことないんじゃなかったのか?
「流石ですね、やっぱりパリピの方は違います」
「いや何言ってるの未来さん!?俺はパリピじゃないよ!」
だんだん未来も涼輝に慣れてった気がする。
「次は未来の番だな」
はい!と彼女は張り切って100円を投入する。
ちなみに、俺は初見ではなかったのでお手本ということで最初にプレイした。
結果?聞かないでくれ。
「お前は散々だったもんな」
「うるさいなー、見られると緊張するんだよ」
どうしても、プレッシャーがかかると外してしまう。
これは直さなくてはならないな。
殺し屋をやっていく意味でも。
「そういや、涼輝は進学するの?」
「ああ、親と同じように働きたいしな」
そういや、こいつの親って大学の研究員だっけ?
「ひかるはどうするの?」
「うーん、あんまり明確な目標持ってないしな」
殺し屋を続けるなんて死んでも言えない。
「ちゃんと将来のことは考えておいた方がいいよ、後々後悔することになるし」
「はいはーい」
説教するんじゃねーよ、この出木杉くんが。
「ふー、楽しかったです」
「終わったか、さあ結果は…ってはぁ!?」
まさか、難易度最高峰と言われる楽曲でフルコンボするとは…
人間、どんなところで才能が開くか分からないものである。
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