物語を否定する「物語」

中学校で、ひとが続けて死ぬ。それを偶然と片づけるには、人間は賢すぎ、繊細すぎ、脆すぎる……
疑心暗鬼にとらわれた共同体が、狂騒と恐慌で沸騰してゆく学園ホラーです。

事件になにか意味を見いだし、解決しようとする者が、ことごとく退場してゆきます。それは、愚かな者でなくても。正義や愛情を抱いた者でも。ひいては、この物語を一生懸命に追いかけ、先の展開を予想している読者すら、物語の側から「物語を作ってはいけない」と否定される。

黙って最後まで見届けることだけが、この物語に読者が示せる、唯一の誠実さでありましょう。おそろしい小説です。だから、とてつもなく蠱惑的な小説です。

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