第31話 友達の従妹

 カコさんの従妹のナナちゃんがやってきた。

 どうやってやってきたん?


 私のへなちょこメモリーの中には外部から一般人を誘致するようなイベントは無かったと思うんだけど・・・


 そう思いながらカコさんの顔を見る。


「どどどど、どうやってジャパリパークに来たんですか?」

「お姉ちゃん忘れたの?去年これ送ってきたでしょ」


 そう言ってナナちゃんが取り出したのは光輝く一枚のチケット。

 そのレインボーな輝きを放つそのチケットはなんぞや?


「と、特別優待券!?た、確かにそれがあればプレオープン前のジャパリパークにも入れます。し、しかし、それでも今は許可を出すなんて事はしない筈です」


 カコさんの言いたいことは何と無く分かる。

 アニマルガールなんてびっくりガールズが現れちゃってるこのジャパリパークは、はっきり言って一般人に見せられる状態じゃない。


「確か、オーナーさんって人が許可を出してくれたんだけど……」

「……」


 やべぇ大物が出てきたなぁぉい!

 ジャパリパークのトップオブトップじゃん!

 それなら仕方無いね!


「……ね、念のために聞ききますけど、誓約書にサインしましたか?」

「誓約書?」

「捕獲ぅ!」


 私は素早くナナちゃんの背後に回って羽交い締めにする。


「え?え?何!?」

「だ、大丈夫ですよ。す、すぐに終わりますから……ふふ……ふふふ」

「お姉ちゃん!?そんなキャラだっけ!?」


 と、言うわけで!!

 ナナちゃんにはジャパリパークの事をSNSなんかに投稿しないようにしっかりと誓約書にサインをしてもらいました。


「別にこんなの書かなくても漏らさないよ」

「ナナさん、これは自分の身を守る為のものでもあるんですよ」

「お姉ちゃんがしっかりしてる!?」

「どどどどういう意味ですか!」


 ほほー、しっかりしてないカコさんとな?

 私の中じゃ割としっかりしているイメージなんだけど、身内だとちょっと違うのかな?


「ナナちゃんや。ちょいと飼育員のお姉さんにしっかりしてない部分を聞かせてくれんかね?」

「んー……まず、部屋がきた」

「ナナさん!!!!」


 慌てた様子でナナちゃんの言葉を遮るカコさん。

 これは放置したまま連絡一つ寄越さなかったカコさんが悪いんです。


 でも、きた……ってことは汚いで良いのかな?


 私はぐるりとカコさんの研究室を見る。

 何度も来たカコさんの研究室は様々な資料がところ狭しと並んでいる。


 それなりに整理整頓はされて……んん?

 もしかして、この資料って実は雑に積まれただけなんじゃ……


「そそそそうです!ナナさん、ここには他の動物園では見ることの出来ない希少な動物達の野生の姿を見ることが出来ます。せ、せっかく来たのですから見ないと損です!とっても!」


 割と強引に話題を変えようとするカコさん。

 これ以上恥ずかしい秘密を暴露される前にナナちゃんの機嫌を直したいらしい。

 もう、しょうがないにゃあと、言うわけで!!


 サファリにレッツゴー!


 私達は自動運転のバスに乗り込んでセントラルエリアのサファリへと出発した。


「え゛!?同い年!?お姉ちゃんと!?」


 ナナちゃんに自分の年齢を明かしたら驚かれた。

 知ってた!

 こういう反応になるの知ってた!


「ちなみにわたしの年齢は6歳、ヒト換算で35歳、アニマルガールとしての身体は15歳らしいのです」


 一緒に付いてきたコノハちゃんが話題に混じって年齢の事を言ってくる。


「えーと……???」


 いきなりこんなこと言われても分かんないよね。

 正直色々頭がこんがらがるから、ナナちゃんには必殺の考え方を伝授しよう。


「ナナちゃん、考えたら負けだよ!」

「しーくいんはもっと頭を使ってほしいのです……」


 コノハちゃん、私を残念な人を見るような目で見ないで!

 これでも毎日オーバーヒート寸前まで頭を使ってるんだから!

 たぶん!


「あの……ところで気になってたんだ……ですけど、度々出てくるアニマルガールって何なんですか?」


「わ、私が説明します。コホン、アニマルガールとは高濃度のサンドスターを浴びてヒト化した動物達の総称です。アニマルガールは動物だった頃の名残として特徴と能力を有してます。また、アニマルガール化のメカニズムには謎が多く、分かっていない事が大半です」

「わたしもそんなアニマルガールの1人、アフリカオオコノハズクのコノハちゃんなのです。気軽にコノハ助手と呼ぶことを許してやるのです」

「はぁ……?」


 気軽な呼び方逆じゃない?

 そんな顔をしたナナちゃんを乗せたまま私達はセントラルエリアのサバンナ地方へとやってきた。


 何かあると毎回お世話になるサバンナ。

 気候もちょうど良いし、見張らしも良いから何かやるときはいつもここになるんだよねぇ。


「すごい……ここって本当に日本なの?」

「一応、日本……でしたよね?」

「こ、国土的には日本ですね。一応」


 そして、目の前にあるのはアフリカのサバンナである。


 お手軽に海外旅行気分を味わえるのもジャパリパークの魅力の一つなのだ。

 と、言ってもまだ船でしか往来できないから片道で丸一日掛かっちゃうんだよね。

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