第12話 カワラバトの冒険その2

 しばらく休んで身体を癒したカワラバトは心機一転再び空へ飛び立つ。


「うわっ!!」

「ほげぇ!!」


 随分と濁った声が出たみたい。

 飛び立った直後にアニマルガールの頭がお腹に激突してきて、カワラバトは自分の声とは思えない濁った悲鳴を上げて再び撃墜されてしまった。

 カワラバトに激突してきたアニマルガールはキュウシュウムササビ。

 この子も日本出身のアニマルガールだね。

 カワラバトの証言によると彼女の服装は袖がブカブカであり、ムササビの皮膜のようになっているっぽい。


 他人に見せられない顔をして悶絶するカワラバトに、声を掛ける新手のフレンズが現れた。


「わー!ゴメンゴメン!大丈夫?」

「口からお乳出そう……」


 カワラバトさん?

 アニマルガールの身体の構造だとね、ピジョンミルクは出ないんですよ。

 しかもピジョンミルクが出るのって雛がいる子育て期間だけだし……

 今のカワラバトの口から出るとしたらピジョンミルクじゃなくて、間違いなくゲロだからね。


「どうしよう……な、何か出来ることある?」

「パンを要求する!」

「何それ?あ、木の実あるけど食べる?」

「……食べる。うっぷ」


 キュウシュウムササビから詫び木の実を受け取ったカワラバトはそれを口に運ぼうとしたけど、お腹のダメージのせいで食欲が分かずに一旦リュックの中へしまった。


「ここで何してたの?」


 カワラバトはキュウシュウムササビがこの森で何をしていたかを聞いてみた。


「ここら辺でこの身体が入るくらい大きな木の穴を探してるんだよ。前使ってたのが入らなくなっちゃって」


 あー、身体の大きさが変化したことによる弊害が……

 元から人と同じくらいの大きさの動物ならともかく、小動物とかだと身体が急に大きくなるせいで巣が使えなくなっちゃうのか。


「きっとしーくいんさんなら良いアイデアをくれると思う」

「しーくいんさん?」

「そう。あっちに真っ直ぐ行くと大きな建物があるから、その中にいるカコさんって人に聞けばしーくいんさんの居場所を教えてくれる」

「そうなんだ。しーくいんさん……うん、ありがとう!」

「どう致しまして」


 キュウシュウムササビはトキと同じ様に研究所に向かって移動を開始する。

 良いことをしてちょっとだけ気分の良くなったカワラバトは今度こそ飛び立……


「……」


 右ヨシ!左ヨシ!前方ヨシ!後方ヨシ!

 二度目の突撃は懲り懲りなカワラバトは周囲の安全確認して今度こそ飛び立った。


 カワラバトの飛行は順調そのもの。

 そろそろホートクエリアの管轄に入ろうとした時にカワラバトの身に異変が襲った。


「あっつ!暑い!焼ける!焼鳥になる!」


 突然日差しが凄まじく強くなり、カワラバトの身を焼鳥にせんとばかりに焦がしまくる。


「ほえええぇ!」


 たまらずカワラバトは元来た空路を引き返す。

 そこはホートクエリアの砂漠地方。

 日中は気温40度も越える灼熱の大地。


 もっと高く飛べればそうでもないと思うけど、カワラバトの飛行高度だと地表の熱をもろに受けちゃうみたい。


「……」


 カワラバトは地図を取り出した。


「さばく……砂漠は無理」


 カワラバトは地図を見ながら迂回ルートを模索する。


「よし!」


 カワラバトは迂回ルートを通ってホートクエリアの管理センターへと向かう。

 ホートクエリアの管理センター付近には建設途中の小さな遊園地が存在している。

 確か他のエリアの管理センターも大体遊園地のところに併設されているんだっけ。


 でも、リウキウエリアはリゾート計画とか何とかで、あそこには遊園地は作られなかった筈。


「お届け物ー」

「お、ありがとうね」


 ホートクエリアの管理センターにたどり着いたカワラバトは管理センターの職員に荷物を渡した。


「じゃあ、君にはこれをプレゼントしよう」

「ほえ?」


 カワラバトに手渡されたのは炒り豆だった。


「君はハトだろ?なら、豆が大好物かなって思ったんだ」

「パンの方が良かった……」

「……」



 カワラバト、ここはあまり嬉しくなくても喜んだフリをしてあげて!

 管理センターのおじさんだって一生懸命考えてカワラバトの為に豆を用意してくれたんだから!


 ちなみにカワラバトの好物はパン。

 とりわけコッペパンが大好物なのだ!


「またねー」

「またね……」


 しょんぼりしたおじさんを尻目にカワラバトは帰路へ着く。

 行きはトラブルだらけだったけど、帰りは何事もなく私のところへ帰還することが出来たみたい。



「お疲れ様」

「うん、疲れた」


 たぶん、その疲れの原因の大半はトキってアニマルガールのせいじゃないかな?

 研究所の人が泣きながら対処してくれって私の方に連絡が来たし……

 これからトキに会いに行くことになるから、ちょっと怖いんですけど……


 ともかく!


「今度お届け物があったらその時はよろしくね」

「ウチに任せて!」


 どうやらカワラバトの悩みも解決したみたいだし、めでたしめでたしってところかな。


 さーて、私も頑張らなくっちゃ!!

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