第4話 交流するgirls!

「よし、これで朝のホームルームは終了だ。お前達、変わる事は大事だが過剰すぎるのはよくないぞ。いいか、ちょうどいい感じに変わるのが一番だからな!」


 そう言い残すと、住吉先生は教室を出た。変わる、という部分を凄く強調していたが、まあ桃ヶ池があんな風に変わったからだろう。いつもクラスで目立たない桃ヶ池だが、前よりも明らかに変わった姿に、流石のクラスメイトも動揺を隠せなかった。隣のやつなんて、チラチラ桃ヶ池の方見ていたし。


「桃ヶ池さんおはよー。随分イメチェンしたけどもしかして彼氏でも出来た?」


「枚方さんおはよう。ボク、主様の為に色々と頑張ったんだー」


「主様って彼氏の呼び方? えー! 本当に彼氏出来たんだおめでとう!」


「ふふっ、祝ってくれてありがとう」


 周りが動揺してザワザワしてる中、授業の準備をしている桃ヶ池にクラスメイトの枚方ひらかたまいが話しかけてきた。


 茶髪のハーフアップに、ナチュラルなメイクを施した整った顔立ち。ブレザーのボタンは全て外しており、スカートもやや短めにした服装。そしてピアスやらブレスレット等のアクセサリーを付けたギャル全開の女子生徒。


 そんな見た目から不良のようなイメージがあったが、気さくに話しかけ、困り事があればすぐ駆けつける優しさからクラスメイトだけでなく、学年全体でも人気があった。


 事実、俺も風邪で休んだ時に余り接した事の無いにも関わらず、ノートやプリントを見せてもらった事がある為、ほんとにいい奴だと思っている。まあ単純に前の席だったから、ってのも大きいだろうが。


「へー彼氏の為に頑張ったんだ。やっぱ大変だったでしょ?」


「いやーそうでもないかな。主様の事、もっと好きになりたくてやってる訳だし」


 好きになりたくて? そこは好きになってほしくてじゃないのか? そういや懸賞で彼女が当たったけど、何故桃ヶ池なのだろう? そこが少し引っかかる。気になるけど今は保留にしとくか。


「凄い一途なんだね……アタシ、ここまで出来ないよ」


「枚方さんは枚方さんのままでいいんだよ。ボクはこういうやり方が一番だと思ったからやっただけ。枚方さんには別のやり方があるはずだよ?」


「そっか、そうだよね! ありがとう桃ヶ池さん!」


「ふふっ、どういたしまして」


「あ、もうそろそろチャイム鳴るね。桃ヶ池さんまた話そ!」


 目一杯話した後、枚方は自分の席へと戻っていった。ここまで話すようになった桃ヶ池も意外だが普通に接してくれる枚方も凄いと思う。


「もしかして桃ヶ池さんの彼氏って柏原くん?」


 席に付いた枚方が体を俺の方に向けてきた。


「……よくわかったな。どうしてだ?」


「桃ヶ池さんの変化に1人だけ平然としてたからね。それに会話してる私達の方ジーッと見てたし」


「はぁ、なるほどな……」


 不自然だったとはいえあれだけの行動で俺を彼氏だと見切れるのか。察し良すぎだろお前。


「随分変わったよねー。見た目こそ派手だけど口数が多くなって前よりも話しやすくなって驚いた」


「だよなぁ。人ってここまで変われる物なんだなあって実感したよ」


「あれは異常だと思うけどねー、あはは……というか柏原くんの趣味にも驚いたよ。まさか彼女に主様って呼ばせるなんて……」


「そこはノータッチで頼む……俺も治してほしいって思ってるがどうにも上手くいかない」


 突如、設定を暴露した桃ヶ池がフラッシュバックし頭を抱えてしまう。色々な事情のせいでほんとややこしくなってるよな。


「まあ余り深入りはしないから安心してよ。それに可愛い彼女の頑張りを無駄にするのもよくないと思うけどな」


「まあ、わかってるけどなぁ……でも外でやられるとこっちが恥ずかしいっていうか」


「まあ、徐々にでいいんじゃない? なんでも最初から上手くいくとは限らないしさ」


「……そうだな」


 枚方の言葉に納得する。俺は桃ヶ池の事を何もわからないけど桃ヶ池も、俺の事をちゃんと理解できてないだけかもしれない。この場合、ゆっくりと向き合うしかないよな……


「ありがとな。お陰で少し気分が晴れた」


「そっか、なら良かったよ。また何かあったら相談に乗るからいつでも来てね」


 チャイムが鳴り枚方が前に向く。やっぱりいい奴だな、と再認識した所で俺は授業を受ける体制に移った

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