『君に私の想いが届け!』

夢見喫茶店からの帰り道。

私はふと、ネット小説を読みたい衝動にかられた。

私は、ネット小説サイトを開くと、私が小説検索というところで、君にこの想いが届け!と調べていた。

あるかもしれないって思ったから。

そして、あった。

存在したのだ。君にこの想いが届け!という小説が。

作者名も、翠というものが。

私は、嬉しかったけれど、疑問に思うことがあるのだった。

「……なんで、この小説は、この時間にあるの?」

さっき店の男性が言っていたはずだ、未来は変わらないと。

でも、確かに『君に想いが届け!』という小説は存在していた。

それは、ネットに中のことであるからできたことなのかな?と思ったけれど、すぐにそうではないと考え直すのだった。

もし、ネットの中なら未来に持ってくることができるのなら、それは、過去の物を持ってくることができるってことだ。

なにかの都合で削除されたデータをこちらに送ることだってできるわけだ。

「じゃあ、なんであるんだろう。…………まあ、ともかく読んでみよう」

そして、私は、『君に私の想いが届け!』という小説を読み始めるのだった。

私は、40分程使って全てを読み終わった。

「………これで、よかったのかなー。それに、敦君に新作は愛を題材にするとか言ったのになー、この小説は、愛を題材にしてないし」

これの、ハッピーエンドで碧と誠実が幸せになることはできたのか、もっといい終わり方があったんじゃないかって、考えてしまうけれど、この小説は間違えなくあの時私が書ける最高の小説だったのだから、そのことを後悔するわけには行かない。

そして、画面を戻していき、ホーム画面に戻った時に、ベルのマークがあるところの上が赤く

光っていたのだ。

だから、なにか私にメッセージでもあるんだろうと思いそのボタンを押した。

押すと、感想メッセージがありますと書いてあって、そのしたには、なにやら文章が続いていた。

私の小説に感想を送ってくれたのか、と思い感想メッセージを読むことにした。

感想メッセージにはこう書かれていた。

────────────────────こんにちは、私の名前は、中島敦といいます。

この度は、この小説を読ませていただきました。

とても面白い小説で、私の目を釘付けにしてくてました。

……でも、愛を題材ではなかったのが、少しだけ、悲しかったですが。ですが、あの時のことは、なんらか、また小説を書くことがあるのなら、題材に使ってくれるならとても嬉しいです。

そして、最後に、俺も貴方のことが好きです。

─────────────────────

と。

私は、自分に頬に涙が伝わっていくのを感じた。

………最後に貴方のことが好きですなんてずるいよ。

それから私は何度も何度も感想を見返した。

見返したところで、なにも変わらない文章が書かれているだけなのに。

でも、一度目を離してしまったら消えてしまいそうな気がして。

最初に感想メッセージを読んでから、もう20回程読んだ。

私は、そこで、感想メッセージを読むをやめた。

……もう、大丈夫。例えこのメッセージが消えたとしても、私の目にはしっかりと焼き付いているから。

そして、私は

「私も好きですよ。これからもずっと」

届くはずのないメッセージなんてことはわかっていた。けれど、伝えることに意味があるのだと。そう思ったから、これが、君に届きますようにと思いながら私は送信ボタンを押した。

私が、元の時間に戻ってきてから、2年ぐらいたったと思う。

私は、タイムリープで過去に戻ったあとから、こっちでの生活が少し変わっていた。

過去に戻る前は、時間がないと言って小説を書くことをしていなかった私だったけれど、今では毎日のように小説を書いている。

少しずつだけれど、でもそれぐらいが楽しいのだと思う。

そして、完成した小説を今はとある小説大賞に応募していて、今はその結果待ちというところ。

………まあ、たぶん落ちているだろうけれど。

私が、今回とある小説大賞に応募した小説は、"愛"をテーマにしたものだった。

タイムリープしてお母さんやお父さん、それに敦君から、といろいろな人から聞いた。

人それぞれに考え方というものは違っていて、それがまた面白かった。

………それに、約束も果たしたかったし。

私が敦君と交わした約束。というよりも、私が敦君と話すために使った口実であるのだけど、それをしっかりと果たしたかったから、私は"愛"をテーマにして小説を書いた。

始めは、ネット小説サイトにあげようかと思ったけれど、折角傑作が書けたと思ったのだから、小説大賞に応募してみるのもいいかもしれないと思い、小説大賞に応募した。

………もし、落ちたら、ネット小説としてあげるつもりだし。

私が、書いた小説の題名は、『私という錘』。

この小説は、凄く自信がある小説であるから、1次選考ぐらいは通ってないかなーと思っている。

で、今日が、その一次選考の結果発表の日なのだ。

そして、今その結果が載っている雑誌を買ったところである。

「どうなるかな?一次選考ぐらいは通れるぐらいの自信作ではあるんだけどなー」

「なにが、自信あるの?」

私ではない声が聞こえた。

声がする方に目を向けて見ると、そこには、巫女が立っていた。

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