2-3

「ほら、あーん」

「あ、あー……ん」

 カッと顔が熱くなる。

 何? これ――。

「美味しいでしょ? それ。毎年発売されるから、いつも楽しみにしてるんだよね」

 隣で飴の包みを破る音がする。佳くんは今の行動を全く気にしていないようだ。

 私の鼓動は苦しいほどに高鳴っている。どうしてこんなに動揺しているのだろう。今のは彼の親切心からの行動だ。ハンドルから手を離すと危ないから、わざわざ飴を口まで運んでくれたのだ。それだけだ。

「ねえ、俊太と螢ちゃんは、いつから一緒にいるの?」

 ぐるぐると考えを巡らせていた時、佳くんが私に尋ねた。

「俊太? 俊太とは、幼稚園に入る前から、気が付いたらいつも公園で遊んでたんだよね。母親同士が仲良くなったみたいで」

「そうなんだ。そんなに前から……」

「うん。学校は中学までしか一緒じゃなかったけどね。でもプレハブ小屋でたまに会うし、母親が今でも仲良く繋がってるから、俊太とは少なからず顔を合わせることがあるんだよ。だから疎遠になる理由がなかったというか」

 少し先に見える信号が、黄色になり赤へ変わった。ゆっくりとブレーキを踏んで停まる。

「ねぇ、二人はさ、……付き合ったりとかしたことあるの?」

「え!? ないない! 全然そんなこと考えたこともないよ」

 笑いながら佳くんをちらりと見た。すると、佳くんの瞳がこちらに向けられていたので、再び心が落ち着かなくなってしまう。

「本当に?」

 こちらの心をのぞき込むような、真っ直ぐで綺麗な眼差しが私を見つめている。

 私は動揺を隠すように、視線を出来るだけ自然に信号機へと戻した。

「うん。本当。……何で?」

「さあ、何ででしょう」

 そう言って、佳くんは少しおどけたように、両手を軽く上げただけだった。

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