第21話 センパイ からの アドバイス

 ウチの門の脇には、角度的に壁でちょうど表通りから見えない場所がある。


 そこで-。


「んっ……、ひゃっ? 妙子……センパイ?」


「いいから、動かないで」


「ぴうっ?!」


 ブレザーのスカートをたくし上げ、メッシュの飾りの入った白いショーツをずりおろしたゆーと。


 屈んでゆーと大事なところに指を這わす半眼美少女-もとい妙子先輩。


 指先に滴る液が触れ、ゆーとの顔が真っ赤に染まっているのが見える。


 れず? うわき? NTRプレイ? いやいや、そんなもんじゃなく。


「はい、ナプキン、装着完了」


「うー……」


 ゆーとの大事なところにナプキンを貼っつけた妙子先輩が、(作業中、困ったようにそっぽ向いてた)チャラ男-稲田先輩を誇らしげに見上げている。


「中に出されまくっても、こうすると、漏れないから、安心」


 ゆーと? 真っ赤な顔を両手で覆って悶絶中だ。 ショーツ下げたまま。


「ちゃんとショーツ、上げろって」


「ひゃっ? い、いきなり、ショーツ持ち上げないでよっ?」


「今更だろ?」


 これまで何度か手伝ってやったときのようにショーツをぐいっと釣り上げたら、泣きそうな顔で抗議された。


 うーん、かわいい。もう一度、押し倒したくなるな。


「流石にやめろ」


 げんなりした稲田先輩のツッコミが背後から入る。うーん、この人、見た目に反して、かなり生真面目だぞう?


「てか、なんで、先輩たち、わざわざウチに……」


「入沢センセから頼まれたからな」


「私達、センパイ、だし」


「いや、センパイっつっても……うん?」


 そこで、ふと、何かに気づく。先日のある違和感を思い出す。


「いや、あー……、その」


「うん、私も、性転換症候群の発症者。本名は、長谷川 多英たえい


「……と、そのつがいだ」


「……やっぱ、ですか」


「ふえっ?!」


 驚く俺たちを前に、ふふん、と微笑みながら腕にしがみつく妙子先輩。

 そして、稲田先輩は、どこかバツが悪そうに頭をかいている。


「まあ、何だ、この時期やってしまいがちなこと、考えがちなこと、一番わかってんの俺らだしな……、サポートってやつだ」


「えーと、……て、ことは?」


「センパイたちも、その」


「うん、やりまくり」


「タエ! んなあっさりいうな……ってか、腹出すな!」


 ブレザーとシャツをたくし上げ、平然と腹を見せる多英先輩。


 むき出しになった彼女の腰はくびれてた……んだけど、あれ? うっすらメロンのような白い線とたるみが見えて。


「……えと、妊娠、……線?」


 ゆーとがなにげにつぶやいてから、何か悪いことを行ったような気がしたのだろう、慌てて自分で口をつぐむ。

 けど、妙子-多英先輩は、相変わらずの半眼だけど、余裕の表情で頷き。


「そ、私、経産婦。ゆーとくん、今後、いろいろ大変だろうけど、助けるから」


 あっけらかんと言い放つ。てか。え? え?


「あのな、アフターピル期待すんなよ?性転換症候群には効かないこと多いし、まれに妊娠中毒症に似た症状、起こすからな。使えねーんだわ」


「性衝動の発作、危険日に多いから、多分、もう手遅れ」


 稲田先輩が肩をくんできながら、うんうんと気持ちはわかるよけど無理と首を縦に振り、多英先輩は、確信を込めて断言する。


 え、えーと。


「……」


「……」


 後戻りできない「繁殖」をしちゃったかもしれないという事実に。


 俺とゆーとは半ば愕然としたような顔を向け合い、いずれからともなく息を呑む。


「ビキニでへそ出しできるの、今年だけ。だから、水着、後で買いに行こう」


 多英先輩のさりげない気遣いというか、おせっかいというかのセリフが、ずがんっと俺たちの背中にのしかかったのだった。

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