手順27 姉を守りましょう

 清水先輩:実はつづらちゃんと同じクラスの子達の協力してもらって教室に監視カメラを仕掛けてたんだ

 寺園先輩:そしたら私達のクラスの担任が犯人だってわかってもう大変!(×。×)


「は!?」

 つづらのクラスの担任……という事は、この前ボクが呼び出された飯田橋先生……?


 岡崎先輩:すぐにでも殴り込みたいところだが、今回わかったのは机に嫌がらせした犯人だけで、盗撮や私物の盗難の犯人は特定できてない

 大林先輩:たぶん同一犯だけどな


「私物の盗難……?」

 つづらは僕にそんな事一言も言ってなかった。

 僕が思っていたよりも嫌がらせは深刻だったんじゃないか……?


 尚:私物の盗難って、何が盗まれたんですか?

 長谷川先輩:使用済みの体育用の靴下がこの前無くなってたんだって。あと別の日に飲みかけのピーチティーも無くなってたらしいよ


「へ?」

 よくわからないアイテムチョイスにボクは首を傾げる。

 ペンケースやノートとか、教科書への落書きとか、そういう事じゃないのか?


 伊田先輩:つづらさんは大したものでもないし、なんでそれをと不思議がってましたけど、これを彼女のクラスの担任教師が密かにコレクションしていると考えるとどうでしょう

 寺園先輩:最高に気持ち悪いよね☆


 その時、ボクは思い出した。

 昔バラエティー番組で紹介されていた女の人の靴だったり、ストッキングだけを狙って盗んでいた下着泥棒の亜種を。


「うわあ……」

 そう考えると思ったよりも盗んだ物のチョイスが気持ち悪い。

 ペンケースとかノートとか取られるよりも妙に生々しいし、こんなのがつづらのクラスの担任だと考えると……。


 清水先輩:確信はないけど容疑者ではあるよね

 入谷先輩:それで急なんだけど、明日清水先輩の家に集まって今後、飯田橋先生をどうするかの話し合いをするんだけど、ナオミちゃんにも参加して欲しいんだ


 寺園先輩:もちろんつづらちゃんには内緒でね♪

 尚:わかりました、ボクも参加します!

 ボクは一も二もなく了承した。

 ……というか、入谷先輩は何でボクのクラスでのあだ名を知っているんだろう?


 寺園先輩:良かった~(*´∇`*)それで尚ちゃんにはちょっとお願いしたい事があるんだけど……

 尚:お願い?

 寺園先輩:できそうならでいいんだけど、もしつづらちゃんが犯人から送りつけられた写真をまだ持ってたらそれを借りてきてくれないかな、そこから特定できる事もあるし(`・ω・´)


 確かに、言われてみれば写真も犯人自身が撮った物なら、場所や時間帯、位置なんかを特定できれば、いつどうやって撮ったかという証拠になるかもしれない。

 とは言っても、つづらにどう説明したものか……。


 尚:うーん、ちょっと姉に聞いてきますね

 まあ、まずはつづらが写真を保管してるかどうかの確認が先だけれど。

 ボクだったらある日突然送られてきた自分の盗撮写真とか気持ち悪くてすぐ捨ててしまうと思うし。


「つづら、今いい?」

「いらっしゃい尚ちゃん、どうしたの?」

 つづらの部屋のドアをノックして声をかければ、すぐにつづらがドアを開けてくれた。


「うん、さっきふと思ったんだけど、最近よく届くとかいうつづらの写真って今も持ってる?」

「ああ、それならアルバムにまとめてるよ~」

「え、アルバム!?」

 単刀直入にボクが尋ねれば、つづらは笑って答える。


「最近は杏奈ちゃんと一緒にいる写真とか多くて、日付ごとにまとめると日記みたいにその日にあった事を後から思い出せていいな~って思って」

「そ、そうなんだ……」


 ボクはつづらに促されるままに部屋に入り、本棚を漁るつづらの後姿を見る。

 びっくりする程、盗撮されている事について気にしてないどころかむしろ好意的にとらえている節さえある。


「ね? こうやって見ると何気ない日常の一コマでもなんだか素敵でしょ? 送られてくる写真がどれもいいから、最近はちょっと楽しみにしてるんだ。写真が好きな子なのかな?」


 つづらが持ってきてくれた写真をケースに収納するタイプの可愛らしいアルバムには、妙にフォトジェニックな写真が並ぶ。

 数ページに一枚は日付が書かれたラベルシールがケースの上から貼られた写真がある。


 普通に楽しんでる……。


「……ね、ねえ、ちょっとこのアルバム借りてもいいかな?」

「いいけど、どうして?」

「さ、最近インスタグラムとか見るのにはまってて、これ、構図とかきれいだし参考になるかなって……」


 ここは変に否定的な事を言ってもつづらの心象が悪くなるだけのような気がしたので、ボクはなんとかそれっぽい理由を捻り出してアルバムを借りられないか聞いてみる。


「え、もしかして尚ちゃんインスタとかやるの?」

「いや、まだ興味があるだけで……」

「そうなんだ、じゃあもしアカウント作って写真とか投稿しはじめたら教えてねっ」

「う、うん……」


 そう言ってつづらはあっさりと二冊分のアルバムをボクに貸してくれた。

 度々思うけど、つづらは人を疑う事をしらないというか、心がきれい過ぎるんだろうな、なんて思う。

 でも、そんなボクはそんなつづらが好きだし、守りたい。


 だから、担任の教師がつづらに嫌がらせをしてるらしいとか、盗まれたつづらの私物の予想される使い道とか、実はつづらが気に入っているその写真はそいつが撮ってるかもしれないとか、そんな事は知って欲しくない。

 怯えたり怖い思いをしないで、いつも笑っていて欲しい。


 少なくとも、つづらが真実を知るのは全部終った後でいいと思う。

 僕一人だと今、つづらを守りきるのは難しいけど、幸い協力してくれそうな人達もいる。

 ボクは部屋に戻るとライングループで寺園先輩達にアルバムを借りられた事を報告した。


 つづらはボクが守る。

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