阿鼻叫喚

店に入るとママがルンルン

「NaNaチャン見て近所の人にミミズ貰ったの」


ミ…ミミズ?


良く見ると

ボックス席のテーブルの上に

ガラスの瓶に入ったメダカが

「ママ…メダカですね」

「あ、そうそうメダカ」

可哀相だから何かに入れてあげなくちゃね


次の日

店の前に立派な石灯籠が

えっと

大きい腰ぐらいの太い石の上に

洗面器の倍位の形の石の器が乗っている?

そんな感じを想像して下さい


置いてあり

水を入れてメダカがスイスイ泳いでました

いくらしたんだろう?


「買ってきたのよ」

「ママ水草とメダカのエサも買わないと」

「あらそうなの?

じゃぁ明日買って来るわね」


次の日

出勤すると例の石の洗面器の様な入れ物に

水草が入ってました

ママちゃんと買ってきたんだ

感心しながら店に入ると


「 NaNaチャン…ミミズのエサってないんだってぇ」

泣きそうな顔で迫ってきた


ママ…

ミミズのエサはないでしょ

ってか…

ミミズ自体がエサじゃね?


「ママ…メダカ…」

「あっそうかメダカね!店員に何のエサか聞かれてミミズって言ったらないって言われてわかんなくなってね一応これ買って来たけど…だめよね」

ママが出したエサには

可愛い真赤な金魚の写真が…

「…ママ、エサは明日私が買ってきますから」


次の日

ちゃんと買って来て

ママに渡しました

「ママはいメダカのエサ

一日置きにひとつまみあげて下さい

私が店に来た時あげましょうか?」


「ありがと大丈夫ママにだってその位出来るから」

メダカのエサを引き出しにしまったママ


「ママせっかく買ってきたから今あげなくていいですか?」

「さっきママがあげたから今日は大丈夫よ」


さっき…?


さっき…?


嫌な予感

すぐに見に行く私


外に出てメダカの容器を覗くと

中にお茶漬けのあられの様な物がふやけてウニウニしている

それが邪魔でメダカが泳げなく固まっていた


ママが…金魚のエサあげてた…

小さいメダカが食えるわけない

ママに言うと

「だって折角買って来たのにもったいないから少し砕いて入れたのよ」


ちゃんとママに説明しました

金魚のエサはふやけるからいくら砕いて入れてもメダカが食べたらお腹の中でふくらんで死んじゃうかも


もうあげないように

ママわかってくれました


その日は私が掃除しました

水槽と違って水取り替えるの大変だし


水を大量に汲み置きしておいて

古いお玉とお鍋をもらいメダカをすくって中へ

石の器を洗い汲み置きしておいた水を入れてメダカを戻す

1時間半位かかりました


その後しばらくは綺麗でしたが

やはりたまにママが金魚のエサをやってるらしくあられ状の物がふやけてました

そのたびにママに言いますが

「あら?そうかい?」

で終わり


私も店があるので

そうそう掃除も出来ないし

段々

見て見ぬふりを…


そして

そのうちに水が黒っぽくなり始めいつの間にか石の器の上に板が乗せられ植木が置いてありました

店の前なのでお客様にみっともないと思ったママが乗せていたのです


そうなってから

約半月後

世にも恐ろしい光景が…


(はい!ここから先は

食事中の方

気の弱い方

動物(魚類?)愛好家の方は

読まない事をお勧めします)


メダカの存在を忘れていた私

ある日

ふっ?と気付き


「あっメダカどうしたかなぁ?そろそろ掃除しなくちゃ」

と思い

店に入る前に植木を下ろし

板をどけた瞬間…


ぷ~ん

ドブの様な何とも言えない悪臭が

私の目の前に現われた光景は…


黒い水の中に

大量の白っぽいウニウニした物が…

確実に何かが大量にふやけている

あられの様な金魚のエサか?


よ~く覗くと

その中にやはり白くふやけた

メダカの

頭…

胴体…

しっぽ…


などが

何十匹もちぎれて金魚のエサと共にバラバラに交ざっていた


多分

死んでしまったメダカが

ふやけて

それをまだ生きている

メダカが突っ突いて共食いをし

バラバラ死体に…


の…繰り返しをし…

そして…

誰も居なくなった


まさに阿鼻叫喚…地獄絵図


見なかった事にしよう!!

私は静かに板を戻し植木を置きました!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る