HARTS-2011 『グラウンドゼロ構造体』


UVL:7

SL:4

ML:2

AL:2


《管理方法》

 HARTS-2011の中心地(北緯[??]度[??]分[??]秒、東経[???]度[??]分[??]秒)から半径5㎞以内への人間の立ち入りは完全に制限される。状態監視と警備のため、HARTS-2011本体とその周辺を無人カメラで24時間常に監視すること。

 調査の際には無人飛行機を用いるが、SPG適性の低い職員が作業をする際、回収された無人飛行機周辺へは5時間経過しないうちには近づかないこと。


《説明》

 HARTS-2011は黒色の砂鉄状の粒子が凝固し長さ2m~20m、直径10㎝~2mの鋭利な柱状の物体となって地上から突き出し、さらにそれらが集まって高さ30m、半径40メートル程の結晶状の巨大な集合体を形成したものである。

 柱表面にはある程度の硬度が有り、微弱な衝撃や時間経過などで破砕・風化する事は殆ど観察されない。しかし、長時間観察するとHARTS-2011の組織が緩やかに流動していることが確認でき、数年単位の観察では柱その物が盛んに収縮・顫動活動を繰り返していることが確認されている。

 20[??]年の赤い夜直後、旧スタニコフ陸奥自治州中央統合本部跡地(通常:グラウンド・ゼロ)に突如出現し、発見時の大きさは高さ40m、半径50m程であったが、現在にかけて徐々に縮小していっていることが確認されている。

 特筆すべきは、HARTS-2011が放つ特殊なスパギリー放射物(HARTS-2011-1)である。

 スパギリー放射物の量としては、世界的に見ても類を見ない程の放射濃度となっており、HARTS-2011の半径4㎞以内に立ち入った場合、SPG適性の低い生命体であればその身に著しい霊障が発生し、さらに半径1㎞以内においては凡そ殆どの生命体が10分以内に死亡する程の高濃度汚染地域となっている。

 HARTS-2011-1は他のスパギリー放射物と異なり、半減期は数分と短く、またSPG適性者によるテレクステロン還元作用はHARTS-2011-1に対して殆ど機能せず、そのためにスパギリー放射物の体内蓄積が進行し霊障が発生する。

 HARTS-2011-1は凡そ殆どの物質を透過するため遮蔽物による霊障の抑制は期待できない。テレクステロン絶縁体を用いた遮断実験も何度か行われたがいずれも失敗に終わっている。また、スパギリー放射物の残滓は水や大気、樹木などの自然物に微量ながら付着ないしは吸着されることがあり、付近の水脈源の流域や風下地域でのスパギリー数値が僅かに高くなることが分かっている。この性質は他のスパギリー放射物と同様の性質である。これらの性質からJ.D博士はHARTS-2011-1を『不完全なマナ』と呼称している。

 このような稀有な特徴を持つHARTS-2011のその構成物は、HARTS-023に見られるようなテレクステロン導体のような物質であると考えられており、『赤い夜』による3,5次元空間超変動によって攪拌・改変された付近の地脈から膨大なスパギリー原子を吸い上げて、それら構成を有機的に組み替えながら周辺空間に放散しているものと考えられる。

 上記のような特殊かつ稀有な特徴故、その使用価値を求めてHARTS-2011に接近する存在も多く、現状[検閲済み]や[検閲済み]、特殊監視対象団体-206、351等に対する警戒が求められる。

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