第1章-9 面接

 目が覚めてすぐに感じたのは下半身の激しい痛みだった。

 半日以上歩くことなんて今までの生活ではあり得なかった。筋肉痛ってこんなに痛かったっけ。洗顔も歯磨きも浄化を使えばベッドの上でできるとは今の俺にはとてもありがたい。


 スマホは午前5時を指していた。浄化をかけて二度寝に入る。痛くて動けないし仕方ない。




「そろそろ起きなさい、ユウくん」


 起こしてくれたのは美鈴さんだ。時刻は7時前。再度顔全体に浄化をかけてベッドを出る。


「変な歩き方ねぇ」


「筋肉痛になりまして」


 こんだけひどい筋肉痛だ。1,2日は治らないだろう。


「筋肉痛は魔法でも治らないものね」


 一昨日に姉が言ってた回復魔法のことか。後で誰かに教わろう。



 朝の準備をしながら美鈴さんと会話をしていくつか収穫があった。


 まずはあとで回復魔法を教えてくれるとのことだ。

 あと昼に姉をノルマンディ邸に送ること。

 美鈴さんはしばらく俺の教育係を務めること。

 美鈴さんと美波さんはこっちの世界に来てもう5年になるとのこと。

 サクラサケの本拠地はここだが他にもたくさんの支部があることなど、とても有用なことを聞けた。




 支度を終えると姉や美波さんも合流して朝食を食べに昨夜の食堂を訪れる。

 昨日は外国人(こっちの世界の人)の酔っぱらいが多かったが、今日はほとんどが日本人だ。年齢層もバラバラで共通点は見つからない。

 俺は焼き魚がメインの和食を頼んだ。美鈴さんと美波さんはパンとベーコンエッグの洋食を、姉はこの2種類を頼んだ。というか姉が悩んでたところを美波さんが2つ頼んだ。よく気が回る人だ。

 姉はパンを持ち帰るつもりらしい。美波さんが自分のパンも渡してた。「食べきれない」と下手な言い訳をして。



 朝食を済ませたら俺は、美鈴さんと施設をめぐることになった。姉は美波さんが車で送っていった。

 本部長への挨拶も午前中にするらしい。緊張する。



 1階は食堂とその厨房 食堂は日本人だけでなくこの世界の人(現地人というらしい)も利用可能で地

球の料理を提供するという。値段は高めな設定。


 2階3階は宿舎。俺も2階に部屋をもらっている。個人で家を買ってる人も沢山いるらしい。因みに美

鈴さんと美波さんはここに住んでる。


 4階は図書室と会議室。本はみんなで日本のことについて書き連ねたという。教科書も全部1から作っ

ているとのことだ。延々と本を作り続ける役職の人もいる。めっちゃ大変そう。

 会議室ではサクラサケ全体の方針を決めているらしい。


 5階は色んな部署に割り当てられている。農業部、戦争部、からファッション部まである。

 屋上は解放されていて昼ごはんをここで食べる予定だったものの、ほとんど使われていないそうだ。


 あと地下に倉庫がある。食料から武器、あと大量の金塊や金貨等もあった。ちゃんと届ければタダで持っていけるらしい。金でさえ。金の価値が低いのかと尋ねたが金貨が最高貨幣で価値は高いらしい。とりあえず欲しい。




 さて一通り巡ったところで本部長に挨拶に行く。基本的に5階の政治部にいるらしいが、今日は俺の面談も兼ねているため4階の会議室にいる。各部署の長も何人か見に来るという。面談というかほぼ面接状態だ。



 会議室には長机と黒板が1つずつあるだけのシンプルな作りだ。既に10人くらいの人が机を挟んで座っている。年齢層は一番偉そうな人が5,60代でギャルっぽい人もいる。

 隣に美鈴さんがいてとても安心する。



「そんなに緊張しないでいいのでそこにかけなさい」


 声が渋いし、じいさんマジ怖い。


「私は本部長の鬼形だ。この面談では初めにあなたが所属する部署を決定するもので、あなたの特性や希望に則って決めていきます」


 やっぱり面接じゃん。


「材木ユウ、18歳、高校3年生、理系、正しいですか」


 多分美鈴さんが伝えてたのだろう。あってますと伝える


「なにか得意なことや特殊技能はありますか」


 優しそうなおばさんに変わった。特にないと伝える。


「どこの部署でも良いが理系であることを活かすならば戦争部や農業部、機械部などがおすすめです」


 正直どこもわからん。戦争部というのがよくわからん。怖い。この3つなら機械が一番マシかな。返事をする前に


「食堂の経営などを取り締まる総務部もありますよ」


 料理は得意でもないしウェイターも多分うまくできない。


「では機械部を希望します」

「よろしい。今日から機械部に勤めてもらう。詳しくはそこの今井に聞きなさい」 


 その今井さんは白衣を来た25.6歳くらいの若い兄さんだ。こっちに(チース)みたいなポーズを取っているので会釈しといた。


「暫くはこっちの生活に慣れるのが大変だと思うがゆっくり慣れてくれたまえ」

 じいさん意外といい人かもしれない。


 面接は終わった。疲れた。

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