-貴公子来店-
衝撃音と砂煙…砕かれる地面と壁、黒い髪、白いパーカーとジーンズを着た少女賃貸屋イズミが長い金髪を後ろで束ね…【自由人】と書かれたTシャツ、細身に見える体しかしシャツの下には強靭な肉体が隠されている…男、アキトを追いかけている…
「待ちなさいアキトおおおおおおおおおおオオオ!!…貴方はまた余計な火種を!!」
「だって暇だったんだもおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!」
攻撃しあう二人…魔法が放たれては防ぎ、斬り込まれれば躱す、そのたびに街は破壊される…
先日から町中は開かれるかもしれない武術大会の話題で盛り上がりを見せているそんな中、暴風のように過ぎ去る二人を目撃した街の人々…一瞬で街の奥、遠くへ遠ざかって二人…響き渡る音とともに遠くでまた砂煙が上がった
「「「「まだやってるのか…」」」」
早朝から始まり…いまは昼時である
本日も王都リ・ワールドは平和である…その裏側では…
王都某所、蝋燭の僅か光に照らされるの地下内…
「マダムを失敗し…老子までも賃貸屋の術中にやられるとは…」
その男…キングは両手を前に合わせキングは神妙な面持ちで告げる…
会議の場に参加している物達も頷き合う…その場にはマダム、老子の姿はなく…
「いや~ただ魔道具と住宅に心惹かれただけですけどね~~~」
長い赤い髪を弄りながら興味の無いように言う男…連合内では貴公子の異名を持つ
「怪しからん!! 私も欲しいぞ!!」
「「「「そうだそうだ」」」
マダム、老子は賃貸屋【ISEKAI CHINTAI】から得た情報や商品、又は購入した物件に今頃夢中になっているであろう…自身達も欲しいと羨ましく悔しそうにする者たち…
「そう…ですか……しかしマダムと老子…やはり次は俺がいくしかないですね」
「貴公子!! お前がいくのか?」
「「「「つ、ついに貴公子が!!」」」」
「ふふふ…これであの賃貸屋も終わりだ!…期待しているぞ!」
「お任せください…必ずや賃貸屋を潰してみせましょう」
キングに向かい膝を折り座した姿勢で貴公子は誓いを立てた。隠れた顔に笑みを浮かべて…
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爆音と煙、倒壊する建物、傾く王城…
クロ―ドと賃貸屋の面々は店の外に出てその光景を眺めていた…東や西、南や北、王城で…王都の様々なところで爆音と煙、衝撃が伝わってくる…イズミとアキトの追いかけっこと言う名の災害…二人のステータス、称号、能力を使った過激すぎる追いかけっこ朝から続いている…
「誰か止めに行かないのか?」
「む~~~~り~~~~」
「無理ですね…」
「不可能ではないが…大怪我する…」
クロ―ドの問いにヒナタ、フィン、ヒスイが返答を返す…
「即答か…自分も無理だけど」
転生者と転移者の仲でも…そして王都リ・ワールドに住む中でも上位にある二人を止められるものはそう多くはない…クロ―ドの父、ジャンや働く職場、ギルドマスターのヴォルフでもだ…
クロ―ドは先ほど煙が上がった方がくを見ると…また煙が上がる…どうやらこちらに近づいてきているようだ
「く、くるぞ…」
「フィン…すまないけど回復をたのむ…私の…」
「わかりました…」
「竜王様~~骨は拾ってあげるからね~~~」
ヒスイが店舗前の通りに構える…周囲にいた物達は巻き込まれないように建物内に逃げていく、フィンが回復魔法を準備し、ヒナタが防御魔法、クロ―ドが障壁魔法を唱える、魔力の光に包まれるヒスイ…
息をのむ人々…そして砂ぼこりと共に見えてくるイズミとアキト
「—―――ッ!!避けろヒスイさん!!」
アキトは前方に立つヒスイに気が付き回避を告げるアキト…その後ろには…
「逃げるんじゃないわよ!!…これでもくらいなさい!!」
鬼の形相のイズミ…ヒスイに気が付いてない…そして膨大な魔力が集まっていく…上級…それ以上
強力な魔法であるほど複雑な魔法陣が現れる、魔法陣が3つ…
「これ・・・逃げよう」
普段の間延びした口調ではなく素の口調になるヒナタ…
「これはさすがに不味いですわね…」
「早く!店の仲へ入ろう!!」
苦笑を浮かべるフィンと彼女の肩を叩き退避を開始するクロ―ド…
「二人とも止ま……」
先行と衝撃…爆風…まともに二人…正確にはイズミの放った渾身の魔法、クロ―ドが張り巡らせ障壁を打ち破り…ヒナタの防御魔法を受けたヒスイだが、ダメージ相殺することはできず…ヒスイが前に立ち逃げ場を無くしたアキト…アキトとヒスイはまともに攻撃を受けて星となった…
「グッジョブよ!! ヒスイさん!」
「「竜王様!!」」
「あれは……まぁ…あの二人なら大丈夫かな…」
イズミとクロ―ドを置いて遥か遠くへ吹き飛んでいった二人を追いかけるヒナタとフィン、
勝敗を見届け歓喜を上げ高価を受け取る者と悔しそうに効果を渡すもの街の人々が金銭のやり取りをしている。
娯楽は終わり修復が進む王都、すでに通常運転に戻る、そんな街の人々を苦笑しながらクロ―ドは溜息をついた。
「やりすぎですよ…お気持ちはわかりますが」
「あいつは一度、封印するべきかしらね」
「そこまではさすがに…やりませんよね?」
「ま~すっきりしたしその内4人で戻ってくるから室内に戻ろうか…」
笑っていないイズミが店内に入っていくのを見送りながら冷や汗をかくクロ―ド…遅れながらも店内に入っていく。
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6人は店内でお茶を飲みながら寛いでいた…若干1名包帯だらけの少女…ヒスイに回復魔法かけながら介護をするフィン
「ひどいのじゃ! 私は止めようとしたのに!」
泣きながらイズミとアキトに言うヒスイ
「いい仕事だったわよヒスイさん…家で働くようになってから1番いい仕事したわ」
「…え…私、普段そんなに役立たず? …そしてなんでお前は無傷? 」
「いや~俺、頑丈だし?」
「……解せぬ」
「おかわいそうな竜王様」
回復魔法を止めて翡翠の頭をなでるフィン…そんな中…一人の男が大量の女子をつれてやってくる
赤い髪を左手で弄り、右手を女性の方に回して…
「やあ~君たち」
「「「「いらっしゃいませ…」」」」
イズミと賃貸屋の面々が男に向かって苦笑いをしつつ答え、アキトとクロ―ドはあからさまな険悪な態度を取る…男はイズミの方へいくと思いきや通り過ぎクロ―ドとヒナタの方へと歩いていく…
「君たちは美しいね~…俺の物にならないかい?」
「「え」」
「「「「……」」」」
「美しい君たちは僕の傍にいてこそ輝くという物…どうだい?」
赤髪の男は周りを気にせずつづけて言い放つ…そして男を取り巻く者たちは
「王子様にお声を掛けて頂くなんて]
「プリンスさまったら私達という物がいながら…」
「私だけをみて~~~~」
男の後ろから抱き着くもの、腕に抱き着くもの、ハンカチを噛む者、様々…その光景を前に沈黙する6人…
「あの~~」
「うるさい…男装まがいの年増に興味はない!!」
イズミを羽交い絞めにし止めるアキト…
「年増?…確かに中身は20ぜんは…体は18なんだけど?!」
イズミの次にフィンが赤髪の男に声をかける
「お客様…」
「だまれ!お前のような牛乳! 目障りだ!!」
フィンの腹部に手を回し抱き着くように止めるヒスイ…
「牛…」
「あのお客様? 」
「なんだ貴様?! 包帯の化け物か?!」
イズミ、ヒスイに興味を示さず、包帯だらけのヒスイは眼中になくクロ―ドとヒナタ前に膝をついて手を取り…その甲にキスをする。寒気で硬直するヒナタと男を振りほどき服で満面なくヒナタの手をふき取るクロ―ド…
「おまえ! なにするんだ!! 」
「ふふ、可愛い女の子がそんな声を上げちゃだめだよ?」
真っ白な歯を出しながらクロ―ドに言う男、そしてその鳥まきは
「「きゃーーーーーープリンス様ーーーーーー」」
「「「「「……」」」」」
その光景を死んだ魚の魔物のような眼で見る5人…クロ―ドの顔には青筋が浮かぶ、メキッと音を立てながらテーブルを掴むとなげる。
「俺は男だあああああああああああああああああああああ!」
クロ―ドが背後に投げたテーブルは壁を壊し…外の風景が見える…通りすがりの人々はぎょっとした面持ちで店内をみている。
「何を馬鹿な~細い滑らかな金髪、宝石のような蒼い目、獣人の子は非対称の銀と赤~二人とも僕の物にしたいね~」
崩壊した壁は気にせず、男は両手を胸に交差し、喜びに声をあげながらクロ―ドとヒナタを口説く…
「その健気でいて…」
男の取り巻きには特徴がある…イズミやフィンにはない…
「とても少女らしいく未熟な容姿ああなんて可愛らしい…」
そうこの赤髪の男は…
「「きもちわるいんだよ!! 」」
「「「「プリンス様あああああああああああああ」」」」
同時に魔力のまとった拳で赤髪の男を殴り飛ばすクロ―ドとヒナタ…硝子を突き破り店外の通りへ転がる顔を真っ青にし男へ近づき介護を始める取り巻き達、鼻の骨が砕け潰れ…美形だった男の面影はもはやない。
「そうか~ロリ専門の愛好者だったか…」
変態とその取り巻きを見ながらアキトは言う…イズミを羽交い絞めにしたままだ…
「イズミは18の体とは言えロリとは言えないし…いや貧乳だから見えなくもないか?…フィンさんは大人の雰囲気あるし胸は豊満…牛…ぶっ」
「「あ゛っ? 」」
「アキト…お前は馬鹿か? 」
巨大な二つの魔力の渦、飽きれた様子で店の外へとでていくヒスイ…羽交い絞めにしていた手をほどき
滝のような汗をかきながら慌てるアキト…もはや手遅れ
「「消えろ!!」」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああ」
閃光とそして爆音、賃貸屋【ISEKAI CHINTAI】はその日倒壊した…赤髪達を威圧するクロ―ドとヒナタそして倒壊した店をながめるヒスイ…
「そういえば私に興味をしめさなかったのはなぜじゃ?」
全・身・包・帯・だ・ら・け・の珍妙な姿のヒスイは口元に指をつけながら首をひねり疑問におもうのであった
後日…賃貸屋【ISEKAI CHINTAI」は新装開店した。
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