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「すごいな…これ元は鋼鉄だったよな?どういう魔法を使ったらこうなるんだ…?」

「すっごくのびるねこれ!」


萎んだ元鋼鉄の風船を手でビヨビヨと手で伸ばすアキタカとアイドニ。


「うむ、6人目…これで全員か?」


その横ではアストラルが悪党をまとめて縛り上げていた。


「はい、俺達が見たのはこの6人だけです」

「そうか、残党がまだ居るかもしれないから今後も注意が必要だな…所で」


アストラルがアキタカの前で目線を合わせるように屈み帽子を取ると膨らんだ頭頂部が現れた。


「アキタカを殴ったのはどいつだ?」


それを聞いた悪党の一人がブルッと震えたのをアストラルは見逃さなかった。


「うーん、後ろからゴチンだったからわからないや」

「いや、もう大丈夫だ…アイドニ少年」


アストラルはアキタカの頭に帽子を戻し立ち上がるとアイドニ少年に目配せをした。


「はい、これから片付けで忙しくなるらしいからアキタカは俺と話をしような~なるべく離れた所で…そうだ、レプリカの使用感を試したいから見てくれよ」

「うん?いいよー!」



その後、遠くの方で悪党の叫び声が何となく聞こえてしまったアイドニ少年は少し身震いをしてアキタカに向き直る。


「お前の父ちゃんだけは敵に回したくないな…」

「?アストラルは優しくてカッコいいよ!敵にはならないよー」


そんなアキタカの様子にアイドニは「そうだな」としか返せなかった。



その後、ハザールとブルブルが村に来ていた冒険者に知らせてくれたお陰で悪党達の身柄は確保された。

その中の1人の顔が腫れ上がっていたのは藪に突っ込んせいで大量の虫に刺された…


どうやって捕まえたのかの説明は面倒ごとを避けるために…という事にした。

アイドニは不服そうだったがアストラルに頼み込まれた為、渋々承諾した。


本当の事に嘘を交えた説明を受けた冒険者の男はというとアイドニの後ろに居たアストラルをチラリと見て


「そうか成る程…そう言う事にしておいてやる…」


と笑って理解してくれた。



イレギュラーな1日ではあったがアストラルに予定を変える気は無かったようで、本屋の奥さんに説明をして狩りに行こうとしたが…


「肉はいらないよ!あんな事があったんだ!今日はアキタカちゃんの側にいておやり!」


と叱られ、奥さんの計らいでアストラルとアキタカはそのまま一緒に晩御飯の手伝いをして過ごした。



晩御飯をご馳走になり、家に帰ったその日の夜…。


「アストラル…話があるんだ」


いつになく真剣な表情をしたアキタカに呼び出された。

食卓に向い合わせで座る2人。

先にアキタカが口を開いた。


「アストラルは一体何者で…何処から来たの…?」


アキタカは賢い子だ。

ある程度成長して、自分の中で膨大な未知の情報の処理をしきれると判断したタイミングでアキタカの方から質問をしてくると、アストラルはそう確信していた。


そして、聞かれたその時は嘘偽りなく全ての質問に答えようと決めていた。


「私はオリアクスに創られた写本の内の1体、型番号Titanタイタン05…私が創られたあの場所に名前が有るとするならば、人間達はメイジレコードと呼ぶだろう」


アキタカは驚いた、聞き慣れない単語もそうだがオリアクスとメイジレコードが実在すると言い切ったアストラルに。

新たな疑問が増えたがアキタカは冷静に1つずつ聞いていく。


「アストラルは本なの?」


自らを写本だと言ったアストラルをアキタカは観察するがどうみても本には見えなかった。


「いや、姿は本ではないがオリアクスの書のだ」


アストラルはそう言うとおもむろに胴体の装甲を開き始めた。

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