教師がすべきこと

 さて、ここまで制度がどうたら国がどうたらと理屈を並べ立ててきましたが……実際問題、そんな根本から変えようと思ったら政党を作って第1党になるレベルでないと無理です。机上論をこねくりまわしてても、実際子供のために動けてなければ意味がない。そういったことを主張していくことも大事ではありますが、できることから始めるのもまた大切なことです。


 これでも僕は教員免許の取得を目指している身でありますから、特に教師が今この時代に何をすべきなのか、僕なりにまとめてみたいと思います。


 まずそれ以前に、教師は始終子供のために動くこと、これは大前提です。正直今は教師の待遇が悪いだけでなく、ある程度テストが解ければ誰でも教師になれてしまうので、なんとなくで教師になる人間が以前より激増しています。そういう人は自分中心で物事を考えて周りの人間を振り回す傾向がありますから、即刻やめてもらいたいところではあります。現に、僕の周り、ネットの声、その他諸々で「トンデモ先生」は大量発生していますので、これは真面目に考えねばならない問題のひとつですね……。


 また、その大前提を押さえた上で、教育者が特に注意しなくてはならないのは自信過剰。自分の正義を信じて疑わない人間は本来の現状を見失い、暴走する可能性が高いです。僕の周りでもそれのせいで悪化したいじめや、不登校になった生徒もいます。本人は至って子供のことを真剣に考えているのですが、空回りしているのです。これの難しいところは、このタイプの人間は当事者以外からの評価はとてもよく、昇進しやすいです。僕が知っているだけで二人、いじめを悪化させておいて教育委員会に移動した人を知っています。そうなってしまったが最後、自分の過ちに気付くことは生涯ないかも分かりません。そういった事態を避けたいのならば、まずは自分の未熟さを理解しておく必要があります。「僕が/私がなんとかするんだ、なんとかできる」という考えは捨てた方がいいです。


 また、当事者たちの言うことをきちんと聞くことが大切です。教師の基本は本人たちの教育を受ける権利の行使を保障するすること。教師とは子供を操る傀儡師ではないのです。



 そういうわけで、教師がすべきこと一つ目は「生徒の意見を最大限尊重する」ことです。もちろん、生徒のわがままを何でもかんでも聞けというんじゃありません。違法行為はもちろん警察を巻き込んできちんと指導するべきですし、何回繰り返そうが指導しなければなりません。


 しかし、本人たちの要望、希望には常に耳を傾け続ける必要があります。例えば不登校にしても、積極的不登校なのか消極的不登校なのかで対応は変わってきますし、それはきちんと本人と面と向かって話をしないと分かり得ないことでもあります。前章で扱った校則にしても、生徒たちが不服と言うのならばその言い分をよく聞き、その意見をまとめ、主張をする手伝いをするべきです。


 もちろんルールはルールなのでそれを咎めちゃいけないとまでは言いませんが、僕自身が校則にそこまで意味を感じないので、僕は注意するつもりは毛頭ありません。これは自分の意見を主張する訓練にもなりますし、立派な「教育」の一環です。


 もし、教師自身が「これは近隣の人たちの評判が落ちそうだ」と感じるのであれば、それを生徒に説明し、説得する必要があります。国会とかでよく聞く「説明責任」ってやつですね。それで説得できなかったならば、その教師の力不足ないしはその教師の独りよがりなので潔くお帰り下さい。



 次に教師がすべきことは、ずばり「生徒との距離をできるだけ近くする」こと。「まてまて、教師が生徒の事情に深入りしたら駄目なんじゃないの?」と思われる方も多いでしょう。というかそれはそうです。深入りは禁物。


 ですが、そもそもの話、それって生徒と教師の関係だけじゃなく人間関係全般において言えるはずです。夫婦や兄弟姉妹、友達同士でも「深入りしすぎて共倒れ」とか、「入ってほしくないテリトリーにずかずか踏み込まれる」とかいう問題は存在するわけです。それは教師云々以前に人間性、人間関係の構築としての問題。それを回避するのは当たり前ながら大前提です。


 その上で、教師はできるだけ距離を近く、言い方を変えればフレンドリーな関係であることが望ましいと思います。極論、教師は生徒にとって「年上の友達」くらいの位置づけが一番ちょうどいいと思っています。さっきも書いた校則の話にしろ、いじめなどの相談にしろ、それを話せるほどの仲でなければどうしようもありません。子供のことを知りたいのなら、その輪に混ざるしかないわけです。


 もちろん、さっき言ったようにズカズカ入り込まれるのが嫌な生徒なんかはごまんといますから、あくまでも「信頼を得る」という意味の「距離を近付ける」という文言であることは再度確認しておきます。


 ちなみに、そういう考えですので、僕は「教師と生徒のLINEのやりとりは原則禁止」という制度に非常に不服です。LINEなどの文章ツールは生の感情が滲みやすく、特に普段表面を取り繕って、仮面を被って生きている人に関しては本心を引き出しやすかったりします。その手段を基本的に禁じられてしまうのは、いくらセクハラ性犯罪対策と言えどお世辞にも得策とは言えません。僕はクラスを持ったらすぐに、生徒全員の保護者に承諾を得ようと考えていますがどうなることやら……。


 また、「そんなんだと生徒に舐められるだろ」というそこのあなた。舐められる教師は大抵「正論を言うけど弱そうな人」です。正論を言うってことは何しても手出ししてこないのは分かってますからね。


 それに、真の意味で仲が良ければ標的にされることはまずありめせんからね……。仮に僕が標的にされたらされたで自分の力不足だと割り切っちゃいますがね……。



 それから勉強面では、「教えるのではなく一緒に考える」ことがとても重要です。まず大前提として押さえておかなければならないのは「基本的に正解はない」ということです。


 さっきも書きましたが、教師は神でもなんでもなくただ年上の人間なので、強いて生徒との違いを挙げるなら人生経験ぐらいなものです。ですから、それを生徒が考える材料として与えるのは構いませんが、それで「こうだ」と決めつけて「教える」のはやめた方がいいでしょう。


 あくまで教師は生徒と同じ土俵で勉強をしなければなりません。教師が説明できることならば力を尽くして納得してもらえるまで説明すればいいでしょうし、分からないことであれば一緒にネットで調べちゃってもいいと思います。


 教師が生徒から学ぶ、なんて話はありきたりですが、生徒「から」学ぶというよりは生徒「と」学ぶのです。一対一で、対等に議論ができるようになってからが、学問の始まりなのです。



 さっきの「人生経験が豊富なだけ」というところにも通じてきますが、「できるだけ多くの選択肢とリスクを提示すること」も教師の重要な役割の一つです。


 例えば進路。なんだか進路を勝手に先生が決めてるクソみたいな学校(というか地域)があるみたいですがその例外はさておき、就職、専門学校、大学、短大、その他に至るまで、その子が求めているであろう進路を探してあげることは教師の重要な役目です。


 その時に忘れてはならないのは、リスクも必ず同時に説明すること。


 例として漫画家志望の子がいたとします。もちろんその子には大学各種への進学、漫画の専門学校、それからアシスタントとしてプロの漫画家さんの下で修業する、などの選択肢を与えることができます。

 しかし当たり前ながら、アシスタントの給料なんてアルバイトですからたかが知れてますし、バイトを掛け持ちしなければ普通に暮らしていけるかどうかすら危ういですし、そもそもついていた漫画家さんが急に引退したりしてしまえば、また一からつく漫画家さんを探さなければなりません。そして、アシスタントになったからといって必ずしもデビューできるわけでもありません。この世には一生アシスタントのままで過ごしている人もいます。

 専門学校だって、かなりお金がかかりますから、お金のあまりない家庭ならば深夜はバイト、昼に学校、といったかなりつらい生活を強いられることになります。また、さっきも言ったように必ずデビューできる保証はないので、いざ別の職種に転換しよう、と思ってもかなり厳しいものがあります。

 逆に、大学では比較的その先の進路は自由に選べるものの、漫画そのものの勉強はあまりできず、場合によっては漫画家へなる道が閉ざされてしまうかもしれません。そもそも大学に行ったからと言って必ずしも就職して稼げるとは決まっていないわけで、夢を諦めてまで選ぶのは勿体ないとも言える。

 ……というように、選択肢には必ずリスクが付きまとうわけで、それを説明して初めて、本人が選択できるようになるのです。


 そして、このリスクまで全て説明し終わった後はその選択に干渉してはいけません。どんなに非常識に見えても、どんなにリスクの高い選択をしたとしても、リスクを知った上でなおも選ぶというのなら、それを止める権利は誰にもないはずです。し、教師であるならば信じて応援して然るべきではないでしょうか。強制はしないけど。



 まあ、僕が思う「教師のすべきこと」ってのはこんな感じですかね。なんか「生徒にとってのご都合主義」だとか思われそうですが、そのくらいの心意気でなければ生徒と向き合うことは容易じゃない気がするんですがね……。


 というか、これに関しては教師だけじゃなく親含めた教育者全員に当てはまるような気がします。そりゃあ他所の家庭に口出ししようなんざ思ってませんが、僕の意見を見て少しでも参考になるところがあれば幸いです。


 ちなみに、「そんなに業務量多かったら教師大変すぎる」「残業が増える」といった教師の待遇についてはまた改めて次章に書きたいと思っているので、そこんところのツッコミは一旦保留でお願いします。



 その他感想ご意見反論罵倒ございましたらどしどしお願いします。

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