其の参

 京狐の唐突な発言にポカンと口を開けて茫然とした。今何て言ったのだろうか。いや、解ってはいるが、もう一度確認しなければならない。


「あの、すいませんけど、今何て?」


「ウチと接吻してや」


「え!? せせせせせせせせせ接吻!?」


 京狐のような美人とキスができるなんてこの上ない幸せというか、もう男達に嫉妬されてもおかしくない。などと考えていたら頭が熱くなり顔が真っ赤になってきた。

 しかし、深呼吸して一度考えてみた。妖狐は確か人の分泌物で妖力を補充する。妖力を得るために自分とキスしようとしているなら、もしかしたら良からぬことをしようとしているのかもしれない。


「どうしてキス……なんですか? それにどうして私なんですか?」


 遠まわしに聞こうと思ったが、そんな気の利いた言葉をすぐに思い浮かばせることができなかった。


「ちょっと所要ができたんや。そのために妖力を補充しておかんくてな。それにあんたは特別やからな。特別」


「私が特別?」


「特別は特別や。ウチから話してもえぇけど、そのうち嫌というほど解ることや」


「あの、所要って何ですか? 言えないことですか?」


 京狐は妖艶な笑みで


「別に言ってもえぇけど」


「教えてください」


「ちょっとウチを付き纏ってる邪魔な奴がおってな、少し懲らしめたろって思ってなぁ、だから力が欲しいんや。別に相手を殺したりはせぇへんから安心してや。それだけ。理解?」


「邪魔な奴って宮部先輩ですか? 美鬼ちゃんですか?」


「あの二人と戦う理由はウチにはないなぁ。まぁ誰かは言えんけど、あんさんは会ったことないでぇ。心配することはない。少し信じてもらえんかなぁ? 信頼、大切」


 それでもこれで良からぬ方向になってしまってはいけないと思った。それでも京狐は


「ウチに力をくれる見返りに三回だけ、あんさんのお願い。何でも叶えたるでぇ。大感謝」


「何でも……ですか?」


「そやなぁ。例えばなぁ、誰かを呪い殺して欲しいでもえぇで。呪殺」


「そんなこと思っても願ったりしません!」


「じゃあ、誰かを狂うほど自分に惚れさせたりとか? 恋殺」


 それには少し惹かれたが、それでも


「絶対に駄目です! すいませんけど……こないだはありがとうございました。それには感謝してます。でも、そのお願い私には無理なので。じゃあ失礼します」


 家に歩き始めた紗理奈の後姿を見ながら、京狐は


「いつでもえぇから。待っとる。それにもう始まってるんやで」


「始まってるって、何がですか?」


 紗理奈は一度立ち止まって振り返り京狐を見たが、そこにはもう彼女の姿はなかった。紗理奈は振り返りもせずに家に入って行ったが、電柱の上にいる京狐には気付きもしなかった。不敵な笑みで京狐は


「そろそろ余興は終わりやね。どうないするんやろ。楽しみやな。享楽」


 家に入って「ただいま」を言っても返答はなかった。家の鍵も開いていたので誰かいると思うのだが、階段を登ろうとしたらリビングから靖子の声が聞こえた。怒鳴っているように聞こえるのは気のせいではない。


「――だから言ってぺした! おれは知らねぇって!」


「お婆ちゃん?」


 紗理奈はリビングのドアの前で声を聞き耳を立てた。


「――おれに言ってもしょうがねぇべや! しっかりしりょや!」


 靖子が起こった姿など見たことがなかったし、怒鳴った声を聞いたのも初めてだったので怖かった。

 今まで優しいお婆ちゃんだと思っていたのもあるが、それにしも聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がした。

 これ以上は聞くのが嫌になったので自分の部屋に向かった。鞄を置いて制服から私服に着替えてから、リビングに向かった。

 リビングの前で少し躊躇っていたが、もう怒鳴り声が聞こえなかったので話は終わったのだと思って入った。


「ただいまお婆ちゃん」


 靖子はソファーでテレビを見ていたが、紗理奈を見て驚いているようだった。


「紗理奈どうしたんだい? 学校は?」


「今日は休校になったの。先生のお婆ちゃんが……その……」


「何だい?」


「失踪事件に巻き込まれたらしくて、昨日見つかった十二名の中にいたみたい。でね、意識不明の重体で、多分、動揺する人がいるから、急遽だと思う」


「そうかい。さっき帰ってきたのかい?」


「うん」


「じゃあ、おれの声がうるさかっただろう」


「……う、うん、どうしたのお婆ちゃん? 何かあったの?」


 紗理奈は靖子の隣に座って心配そうに見つめた。孫の顔を見て靖子は笑って


「実はね、おれに言い寄ってくる爺がいんのさ」


「え!? お婆ちゃんに!?」


「そうさね。おれは今も昔もモテんだなぁ。んでな、その爺が一昨日から行方不明らしいのよ。それをそいつの息子がさ、おれに居場所知ってんじゃねぇかって電話してきてよぉ」


 確かにお婆ちゃんの若い時の写真はとても綺麗だったことを思い出した。靖子は続けて


「だから知らねぇって言ったら、あっちが怒鳴ってきてさ。こっちも怒鳴り返してやったんだよ」


「そうだったんだ。でもさ、そのお爺さん何処行ったの? もしかして――」


「解んねぇけど、もしかすると最近の失踪事件と関係あんのかも知れねぇな。俺の家の近くでもあったからよぉ」


「だから、家に来たの?」


「どうだかね。孫の顔見たかったんだよ。それにね……」


「それに?」


 紗理奈をじっと見ていた靖子は唐突に目を逸らした。苦しそうな、苦悩している、そんな顔だった。


「……おれのせいだからね」


「何が?」


 靖子は深い溜息を吐いて苦笑いのような顔で


「何でもないよ。忘れちゃいけない過ちってのがあんのさ。それを背負ってみんな生きてんだよ」


「お婆ちゃん? それ、どういう意味?」


「良いかい紗理奈、覚えておきなよ。善人の振りした悪い奴ほど良く笑う。信じられる相手か笑顔で見極めるんだ。絶対忘れるんじゃないよ」


 っと言って靖子は満面の笑顔になった。紗理奈はそれを見て笑いながら


「もうお婆ちゃん、今めっちゃ笑ってるけど。どんな人でも笑うよ。みんな笑顔は、大切な人達の為にくれる笑顔なんだよ」


 しかし、自分で言った言葉に自信が持てなくなった。ふと京狐のことを思い返した。彼女はいつも笑っている。それに、はじめも、凜も、麗も、笑っている。

 笑顔を見て相手が信頼できるか見極めることは難しいのではないかと思うと、奥が深い言葉であることを考えてしまったら気持ちが沈んできて顔を曇らせた。

 テレビを見て家で過ごしていても暇なだけだったので、瑠美に《今から会える?》っと連絡を入れたが、一向に返事が来なかった。

 テレビをずっと見ていたら昼頃になって太陽が一番高い所に位置した。涼しいクーラーの効いた部屋にいるので暑さにやられることがなくて、幸せだったが何か足りない。


「紗理奈、お昼どうする?」


 靖子の問いかけの答えを少しばかり「うーん」っと唸りながら思考していて


「あ! ラーメン食べたい!」


「折角だから食べに行くかい?」


「うん、じゃあさ、この間できたばかりのお店あるから、そこでも良い?」


「紗理奈が行きたいとこで良いよ」


「じゃあ、行こう行こう」


 家から出ると暑さで身体が溶けてしまうのではないかと思った。また、蒸し返したほど暑くなってきた。お婆ちゃんは麦わら帽子を被っていて、紗理奈はキャップ帽で少しボーイッシュな格好で出掛けた。


「そこの冷やしラーメンが美味しいって話なんだぁ」


「なんだいそりゃ? 冷やし中華みたいなもんかい?」


「冷やし中華とは違うみたいだけど、食べてみてからのお楽しみかな」


 新しくお店が出来たと言っても新しく立てた訳ではないので、外観は少し古臭い気もしたが、店の中に入ると少し綺麗過ぎるくらいで良さそうだった。


「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」


 二人は座敷の席があったのでそこに座った。紗理奈は他のお客さんを観察してみた。カウンターは二席だけが空席で、座敷はまだ紗理奈達の後ろが空いているだけだった。


「結構混んでるんだね」


「そうだねぇ」


 靖子は返事をして、店内を見渡しながら麦わら帽子を取った。優しそうなお姉さんがお冷のピッチャーとコップを二つ持ってきてくれた。


「いらっしゃいませ、ご注文が決まりましたらお呼び下さい」


「はい」


 紗理奈は早速メニューを見たが写真がないのでどんなものか解らなかった。しかも、メニューにはしょうゆと味噌しかなく、他は冷やしラーメンと冷やし中華だけだった。

 チャーハンや餃子などのサイドメニューがないのにも驚いたが、何よりラーメンが一杯八百円なのにびっくりした。しかも一人前でも二人前の量に相当する麺と注意書きが書いてあった。

 結局は当初の目的であった冷やしラーメンに決めた。その時、ガラガラと店の引き戸を開けて二人の女性が店に入ってきた。


「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」


 その二人は紗理奈達を見ると一人は笑顔で、もう一人はとてもバツが悪そうな顔をしていた。


「あれ? 紗理奈ちゃん、こんにちは」


「こんにちは麗さん」


 麗は靖子にも


「どうも、宮部麗です。初めまして」


「黒木靖子です。宮部って水木神社の娘さんかい?」


「はい。恐らく、私が跡継ぎです」


「いやぁ、宮部さんには昔からお世話になっております。孫もお世話にまってます」


「いえいえ、ほら、恥ずかしがってないで挨拶して」


 少しばかり怪訝そうな顔ではあったが、一応は作り笑顔をして


「わっちは、美鬼でありんす。姉様の――麗さんの弟御の許嫁でやんす。生娘――っじゃなかった、紗理奈とは大切な友達でやんす」


「紗理奈のお友達かい。紗理奈よりも綺麗だねぇ」


「どうも、ありがとう、ございます」


「良かったら一緒の席に座りんしゃい。おれたちも来たばっかりだから」


「じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔します」


 麗がお辞儀したので、美鬼も「失礼しやす」っと言って一緒に座った。紗理奈は靖子の隣に移動して、麗と美鬼は隣同士で座った。

 美鬼と面と向かって正面で見たのは初めてだったが、どうしても顔を合わせてくれない。恥ずかしいのだろうか?

 追加でお冷を店員さんが持ってきてくれた。二人はメニューを仲良さそうに見ていたが、この間の凛と麗の会話を聞く限りでは、美鬼のことを良く思っていないのを知っているだけに見ているのが辛かった。


「私決まった。お婆ちゃんは?」


「おれは紗理奈と一緒で良いよ。全部は食えねぇから少し紗理奈食べておくれ」


「良いよ。私もそんなに食えるかな? 麗さんと美鬼ちゃんは?」


「姉様、これで良いでやんすか?」


 美鬼は少し心配そうにというか麗のご機嫌でも伺っているように聞いていた。メニューで見えないが、美鬼は品物を指差しているのだと思った。麗は優しそうな笑顔で


「良いよ。私達も決まったよぉ」


「解りました。すみませーん!」


 紗理奈の声に店員さんが駆けつけてきた。


「はい、ご注文はお決まりですか?」


「はい、冷やしラーメン二つと――」


 紗理奈に続いて麗が


「えっとですね。私達も冷やしラーメンで四つ下さい」


「かしこましました。冷やしラーメンが全部で四つですね」


 注文を繰り返した店員さんに麗が少し恥ずかしそうに


「あ! 違います……あの、この娘が三つ食べます……」


「はい!?」


 店員さんの目が点になっていた。それは紗理奈も靖子も同じだった。麗は続けて


「えっと、だからこの席に冷やしラーメン全部で六つ下さい。大丈夫ですか?」


「しょ、少々お待ちください」


 店員さんは慌てて厨房の方へと早歩きしていった。靖子は


「細いのに美鬼ちゃんはすごい食べんだねぇ」


「えっと……ラーメン……大好きなんで……やんす……」


 美鬼の恥ずかしそうな顔は、とても可愛らしくて女の子らしいと思った。すぐに店員さんが戻ってきて


「あの、ウチの店は一人前でも二人前くらいの麺の量ですけど、大丈夫ですか?」


 美鬼は店員さんを見ることなく麗が代わりに


「大丈夫です。お願いします」


「かしこまりました。お時間少しいただきます」


 紗理奈はこの間、美鬼が家に来た時のことを思い返してみた。確かに美鬼はやたらと一人で食べていたような気がする。

 異質なメンツでの食事がどうなってしまうか一寸先の未来を想像する事ができない。暑さなのか、それか極度の緊張のために喉が乾いてしまって勢いよく水を飲んだ。

 麗はニコニコと笑っていて、美鬼は先程から落ち着かない様子でそわそわしている。靖子は普段と変わりないように思える。


「大変でしたねぇ。修復工事は、いつまでなんだい?」


 靖子の何気ない話から麗が会話を繋いでいく。


「来月の初旬には終わります。神前祭がありますから、その前には何とかってところですかね。神前祭には紗理奈ちゃんも巫女さんとして手伝ってくれるんですよ」


「え!? あ!? うん……はい……」


 そういえば家に泊まる時にそんな話を瑠美があきこにしていたが、まさか本当にやることになっていたとは思っていなかったので不意を突かれて動揺してしまった。


「神前祭に出るのかい?」


「う、うん、そうだよ」


「おれの孫が神前祭かぁ。これりゃ今夜は赤飯でも作るかねぇ。こんなに嬉しいことはねぇな」


 思えば神前祭の巫女さんは何をするのか全く知識がなかった。子供の頃には行っていたようだが、思い出すことができない。何をするのだろうか?


「今年は紗理奈ちゃんと美鬼ちゃん、あと瑠美ちゃんって娘の3人も巫女さんがいるので、華やかになると思います」


「じゃあ、神前祭まではこっちにいようかねぇ。楽しみが出来たよぉ」


 靖子は相当嬉しいのだろう。満面の笑顔でプラスして少し泣きそうになっている気がした。美鬼を見ると何か言いたそうな顔で紗理奈を見つめていた。そして


【おぬし、女狐の匂いがするのぉ】


「うわぁ!」


 突然の糸電話に驚いてしまい大きな声が出てしまった。周りのお客さんも何事かと思って紗理奈達に視線を向けてきた。もちろん、麗も靖子もビックリしていて目を見開いていた。美鬼は怒っているように見えて恐らく伝えたいセリフは【このおおうつけ!】だった。


「どうしたぁ、紗理奈?」


「ううん、何でもない。が、学校に忘れ物したなぁって思い出した、だけ……」


 自分はきっと嘘を吐くことが下手な人間なのだろう。だが、周りを良い人たちに囲まれているので、まず靖子は


「そうかい。まぁたまにはそんなこともあるさね」


 続いて麗は


「紗理奈ちゃんって見た目はクールに見えるけど、意外とおっちょこちょいなんだね」


 美鬼は「は、ははは」っと空笑いをして睨んでいるようだった。


【不意打ちだったからつい……】


【まぁ良い。おぬしから女狐の匂いがする。あやつに会ったのか?】


【うん、何かね。家の近くに現れて、付き纏わってる誰かを懲らしめるから、接吻してくれって言われた】


【良いか、絶対にあやつに力を与えてならんぞ!】


【そんなこと言われなくても解ってるよ】


【一応念のために言っておくが、あやつが力を取り戻したら――】


「お待たせしましたぁ」


 そのタイミングでラーメンを持って店員さんがやって来た。最初は2つで、それを全部で3回繰り返してテーブルが一気に狭くなった。麗が店員さんに軽く頭を下げて


「ありがとうございます」


 冷やしラーメンには、普通の醤油ラーメンと見た目は変わりがない。メンマにチャーシューとナルトに葱は定番だが、スープに氷が浮かんでいた。


「夏にピッタリで美味しそう」


 紗理奈の言葉に靖子は「そうだねぇ」っと相槌を打ってくれて、麗も同じような事を言った。美鬼は先程まで真剣な話をしていたにも関わらず、獲物を狙っている肉食獣のようなよだれが口から出て来そうだった。四人は手を合わせて


「「「いただきます」」」


「いただきんすぅ!」


 紗理奈は麺をすくい上げると「ふーふー」っとやってしまったが、熱くないことに気が付いて恥ずかしくなったが、他の三人も同じことをやっていたのでみんなで笑った。

 麺を口に含んだ途端に冷たく、そして普通のラーメンと変わりのない美味しさに思わず


「不思議な味―だけど、ウマ―」


 氷が入っているがスープも飲みやすく暑い日に丁度良い。美鬼を見るとズルズルと麺を啜って良く噛んで味わっていた。そして、喉に流し込んで


「ウマ―!」


 っと至福で恍惚な顔になっていた。紗理奈は結局スープを全て飲むことができなかったが、靖子が少し残した麺を食べてお腹がはち切れそうになった。

 麗は全部食べ切ってお腹を叩いて「まんぞくぅー」っと言って、時を同じくして美鬼は本当にラーメン三つを全てスープも残さず全て平らげていた。それを見た靖子は


「美鬼ちゃんは良い食べっぷりだねぇ」


「……お、お恥ずかしいでありんす……」


 食べ終わって他愛もない雑談を少しして、お会計をレジでする時、靖子が


「宮部さんにはずっとお世話になってるからね。ここはおれが出すよ」


「そんな悪いですよ。自分達の分は払いますから」


 麗は財布を出しながら靖子を説得しようとしていたが


「良いんだよ。これからも黒木家を守ってくださいな」


「……はい、お言葉に甘えて、ありがとうございます。ご馳走様です」


「お婆様、ありがとうございます。こなたのご恩は忘れんせん。ゴチになりんす」


 美鬼も深々とお辞儀をして感謝を言葉と態度で示した。それを見た靖子は


「美鬼ちゃん、紗理奈と仲良くしてやっておくれ」


「はい!」


 店を出て麗が「ご馳走様でした。ではまた」っと言って美鬼と一緒に駅の方に向かって歩いて行った。紗理奈と靖子も家に帰ろうと歩き出そうとした時に


「ちょっと待ちなんし」


 美鬼が走って戻ってきて


「お婆様、これ、持っていてくんなまし」


 っと言って靖子に手渡したのは手の平サイズの可愛らしい小さなクマのぬいぐるみだった。


「これを俺にくれるかい?」


「わっちが作ったお守りでありんす。ラーメンのお礼でありんすぇ。きっと役に立つ時が来んすよ。大切にしてくんなまし」


「ありがとうね」


 美鬼は笑顔で手を振りながら麗の所に戻って行った。靖子は紗理奈に


「良い友達じゃないかい。あの笑顔は、本物の笑顔だよ」


「うん、私もそう思うよ」


 家に向かって歩き始めた二人だったが、猫達がその後を追っていたことに気付くことはなかった。普通の猫の姿になっていたココは静かに呟いた。


「みつけたにゃ。やすこばあちゃん」

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