stage 50 スピリチュアル・ボム -Kazu side-

『プラーナ通信~第七号(後編)~ 』 

超越神力ちょうえつじんりきのエビデンス②~


カズ「この辺で本日のメインイベントとなる電撃発表のコーナーに移らせてもらいます」

 

アルチャナ「Mr.カズ。今からお伝えする内容は、地球のエネルギー政策を根底からくつがえすになるでしょう」

 

カズ「お言葉ですがアルチャナさん。これまでにシャンバラ国が辿ってきた足跡は私たちの常識を遥かに超えるものでした。今さら何を聞いても、ちょっとやそっとのネタでは驚きませんよ。すっかり耐性がつきましたからね。アッハハハハ」

 

アルチャナ「いいでしょう。先ほど述べたヴァジュラについてですが、私はこないだ、そのエネルギーを一点に凝縮する技術を論文にまとめました。高濃度のヴァジュラをピンポイントで"ある物"に照射すると、仰天の現象が起きることを突き止めたんです」


カズ「仰天の現象?純然たるオールドタイプの私には、もはやイメージすらわきません・・・。続きをお願いします」

 

ヒロ「カズさん、もったいぶるわけではないですが、これはシャンバラ国が未発表の大スクープです。明後日の昼に各国のメディアを集めた記者会見を予定しておりますので、それまでは絶対に口外しないでくださいね」

 

カズ「了解です。プラーナ通信へのアップはそれ以降とお約束しましょう」


ヒロ「では、ラクシュミー・・・」

 

アルチャナ「はい。その現象とは・・・」

 

カズ「・・・・・・」

 

アルチャナ「純粋核融合です」


カズ「・・・・」


ヒロ「あれ?もっと盛大なリアクションを待ってたんですが・・・」


カズ「申し訳ない。正直どんなレスポンスを返せばいいのやら・・・。お恥ずかしい次第ですがそれすらも分からない。記者失格ですね」


アルチャナ「ウフフ。それでは純粋核融合の概略を手短に説明します」


カズ「・・・・・」


アルチャナ「純粋核融合とは"起爆に原子爆弾を用いない核融合反応"です。従来、1億度もの熱が必要な核融合をプライマリ(核分裂反応・核爆発)なしで引き起こす研究は、"イカれた科学者による机上の空論"とされてきました。しかし、サマディに入ったヨガ行者が発するヴァジュラがこれを可能にします」

※サマディ=三昧さんまい三摩地さんまじ。深い瞑想状態。


ヒロ「解説を加えると、ヴァジュラスカウター(ヘッドギア)を進化させた"ブレイン・コンピュータ・インターフェイス"を信者たちの頭に埋め込むことで、回収できるエネルギー量は飛躍的に増加します。以上の技術の早期完成を目指しつつ、我々は特殊核融合炉の建設をスタートさせる予定です」


カズ「とてもロマン溢れる話に聞こえますが・・・。原子力となれば放射性物質の危険がつきまといますよ?」


アルチャナ「心配にはおよびません。ヴァジュラ核融合は法身シャンバラからのサプライズギフト。不思議なことに瞑想中の信者のボディは中性子線や陽子線の影響を受けません。また、そればかりか爆発量を細かくコントロールできるため、発電設備もテニスコートほどのコンパクトなスペースで十分です」


カズ「なるほど。核融合の原料は基本的に水素のみ。つまり無尽蔵のエネルギー・・・。実現の可能性はどのくらいありますか?」 


アルチャナ「法身シャンバラによるシュミレーションでは99.9%の確率で実現可能との結果がでています」


カズ「いやぁこれぞシンギュラリティという印象です。となると最後にこれだけは確認しなければなりません。ヴァジュラ核融合を軍事技術に転用するお考えは?」


ヒロ「う~ん。困りましたねぇ。安全保障の問題はノーコメントでご容赦・・・」


アルチャナ「マンジュシュリー。公になるのは時間の問題です。言ってしまいましょうよ。ウフフフ」


ヒロ「致し方ありません・・・」


アルチャナ「我々シャンバラ国の勢力範囲である山梨県北東部は、すでに法身シャンバラによる鉄壁の飛翔体防衛システム" アクショーブヤ(動じない者)"に守られております。しかしながら、今後は不測の事態に備え、あらゆる先制攻撃から国土を守るための弾道弾迎撃ミサイルを配備すべきとの結論に行き着きました」


ヒロ「その名もスピリチュアル・ボム・・・。アッハハハハ。キマまったぜ・・・」


カズ「あの~、ヒロさん。若干調子に乗ってませんか?さっきからテンションが変ですよ」


ヒロ「いやいや。これは失礼。この美しい神の国に2度と悲惨な原爆を落とさせてはならない。聡明なるシャンバラ王は、仏子たる私たちに平和の礎となる下生げしょうされたのです」


アルチャナ「空中に打ち上げられたミサイルに、どのような方法でヴァジュラを照射するかについては研究の余地が残りますが・・・。必ずや地球に舞い降りたニュータイプたちが未来を切り開いてくれると信じております」


カズ「・・・・」


ヒロ「アハハハハ。さすがに顔色が変わりましたね。どうかそんなに不安がらずに。発射ボタンを握るのは愚鈍なホモ・サピエンスではなく、智慧の完成を遂げられたシャンバラ王です。ハッハハハハハ」 


アルチャナ「ウフフフ」


カズ「未来永劫、ミサイルが発射されないことを祈ります。本日はありがとうございました」 


ヒロ・アルチャナ 「ありがとうございました(合掌)」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る