第一章 第9話「護衛任務 その1」

ハヅキの特訓につきあいはじめて2日目、そう今日も俺たちには仕事が無かった…

第2隊の先輩達は朝、何か任務に出ていったが…

そういえば俺たちは何隊になるんだ?第3隊か?それに第1隊の郷田ごうだ隊長以外の隊員は何をしてるんだろうか…ズガッ


「いだぁ!」


ハヅキの打った弾が額にヒットする。


「ちょっ何ぼーっとしてるの」


「はははっ!」


今日は俺たちの特訓を見に来たアオイに笑われる。


「…お前も笑ってないで何かしろよ」


「やってるじゃん、こうやってリヴァイアと気力ヴァイタルを共有し合ってるんだよ」


リヴァイアの体に風呂のように浸かっているアオイを見る。


「くつろいでるようにしか見えんが…」


その時扉が開いて「3人ともいるか〜」と隊長がショウスケとダイチを連れて訓練所へ入ってきた。

あの2人もまだ何かやってたんだな…


「お前たちに仕事だ」


「ほんとですか!」


「ああ、仕事の内容は清水しみずメグミの護衛だ。先日第2隊がいった南の森の調査に同行してもらう、ウィルスマーカーの仕事を見るいい機会になるだろう」


「メグミさんかぁそういえば昨日は見てないね」


「俺たちもここから動いてないからな」


「以上だが何か質問あるか?」


俺はさっき気になっていたことを聞いてみる。


「隊長、第1隊の隊員は今何をしてるんでしょうか?見かけないのですが」


「ん?見てないか?昨日、第2隊と同じぐらいの時間に帰ってきてたぞ?」


なんだ俺が見逃してただけか、そういえば第2隊も安堂あんどう先輩がここに入って来なきゃ気づかなかったかもな


「まあその後すぐ任務を言い渡されてたから見てないのは当然かもな」


ダイチが質問する。


「隊長がいなくても大丈夫なんですか?」


「はっはっは!あいつらはここの主戦力だぞ?俺1人がいなくても問題ないさ。気になるなら資料室に名簿があるから見とくといい」


資料室か…また後で行ってみるか。


「では明日の朝、玄関前に集合だ、揃い次第出発するから遅れるなよ」と言って隊長は訓練所を後にした。


もう昼をだいぶまわっていたし俺たちも一旦解散して明日に備えることにした。


◇◇◇


「資料室…ってどこだ」


ここでも方向音痴を発揮しながら支部内を歩きまわる。


「無駄に広いんだよな…」


と前から北潟きたかた司令長が歩いてきた。


「おや、月永つきながヒロトくん、どうやらお困りのご様子ですね」


「はい…資料室ってどこですかね?」


「資料室ですか、これから私も行くところだったのでついてきてください」


と俺が今来た方へ歩き出した…また逆へ行ってたのか…

無言はつらいので話しかけてみる。


「あの司令長、司令長は何人までの声を判別できるんですか?」


「そうですね〜試したことはないですが恐らく100人でも1000人でも判別はできるでしょう。ただそこまでいくと私の頭が保ちませんけどね。」


なるほど、もちろん今もつけているインカムから何人もの声が聞こえてるのだろう…ん?そういえば


「そういえば、司令長は能力を行使しても大丈夫なんですね」


「当たり前です、これが仕事ですしちゃんと許可も取ってますよ。まぁ、私のような能力でないと許可は通らないでしょうが…」


扉の前で止まると「着きました」と言ってさっさと中に入っていった。

中はびっしりと書類やら何やらが保管されていた。


「月永くんは何を探しに来たのですか?」


「名簿をちょっと…」


「名簿ですか?あれは隊長以上の権限がないと見れませんよ個人情報がたんまり載ってますから」


「ですよね…」


そんな気はしていた、まあ普通に考えればそうだよな。


「ただ、隊員の活躍が載った記事などはその辺にあるのでそれは見れますよ、っと」


脚立から降りた彼女の手には1冊の本が抱えられていた。


「司令長は何を探しに来たんですか?」


「…秘密です」


と言うと資料室から出ていってしまった。あの本も何か権限がないと見れないものなのだろうか?

考えても仕方ないので俺はその記事たちに少し目を通した。


『サブサイド第3支部、凱旋』第4支部と合同で超大型自然の怒りナチュラルビーストを討伐!村ひとつが壊滅したものの死傷者は0。その活躍により互いの支部長が表彰された。


自然の怒りナチュラルビースト街中に発生』中型の自然の怒りナチュラルビーストが街中に発生!第3支部第1隊の早急な対処により被害は最小限に抑えられた。原因は川に気力ヴァイタルが溜まった水草が外部から流れてきたため、と発表。


『第3支部のウィルスマーカー、品種改良により気力ヴァイタルを全く溜め込まない種を発見!』第3支部の“ウィルスマーカー”清水しみずメグミ氏が気力ヴァイタルを全く溜め込まない“花”を発見。だが、寿命が極端に短くひと月も保たず枯れてしまった。原因は気力が無いために光合成などの能力が衰退してしまったことにあると発表した。

しかし、師である大門だいもんクニヤス氏は「これは大きな成果だ、彼女が弟子で誇りに思う。」とその成果を讃えていた。


いくつかに目を通し、先輩たちの活躍を見た俺は今一度気合いを入れる。そして、明日に備えるために俺は部屋へ戻った。


◇◇◇


「失礼します!」


と言って俺は支部長室に入った。


「来たか」


「私に用とは何でしょうか?」


「明日、お前は新人とは別行動してもらう」


「?」


「探してもらいたい男がいてな…」


机の上を見ると写真が一枚置かれていた。


大門だいもんクニヤス、3ヶ月ほど前から行方知れずだ、もしかするとこいつがここ最近の自然の怒りナチュラルビーストの異常発生のカギを握っているかも知れん。」


「この人って…確か清水の恩師では?」


「そうだな、清水も恐らくその男が頭をよぎっているだろうな、この辺りで有名なウィルスマーカーと言えば大門か清水ぐらいのものだからな…」


「で、このどこにいるかわからない人を明日中に見つけて欲しいわけですね?」


「そうだ」


なかなか無茶を言う人だ、3ヶ月前から行方不明でもしかしたらこの街に居ないかもしれない人を探せとは。


「…わかりました。できる限りやってみます。」


と写真を持って支部長室を出た。

こりゃ今から情報集めていかないと厳しそうだな…俺は朝からすぐ行動できるようにひとまず資料室で情報を漁ってみることにした。


◇◇◇


「おはよう」


俺が集合場所に行くともう全員集まっていた。

「みんは早ぇな」と言いながら列に加わる。


「よし全員揃ったな!それでは早速出発してくれ」


隊長はその場で仁王立ちしている。


「隊長は行かないんですか?」


「俺は他の仕事があるからな、今回はお前らだけで行ってくれ」


「了解しました」


隊長の顔は心なしか眠そうに見えた、隊長も大変なんだな。

そして、車に乗り込む。

男3人で交代で運転すると言ったのだが、私運転好きだからとメグミさんが運転席に座った。いらぬ気遣いなのか本音なのかはわからないが運転は任せることにした。


そして、南に広がる森へ俺たち6人は向かった。

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