第9話

[9月30日 雨

昨日から続いていた下痢と嘔吐がやっと止まった。]



「…最低だ…」

ぐったりと眠る君の顔を見下ろしながら、僕はやり場のない怒りに震えていた。

体重の減るのを食い止めようと、栄養のつきそうなものをいろいろ試した結果、君に合わないものまで食べさせてしまったらしい。君は一晩中吐き続け、げっそりとやつれてしまった。

(もういっそ…)

僕はぼんやりと、君の喉に両手を置いた。

(このまま、力をこめてしまえば…)

もう二度と、あんなに苦しむ姿を見なくてもすむ…


……コクリ……


僕の手の中で、君の喉がかすかに動いた。

口内にたまった唾液を飲み込む、無意識の動き…

まるで熱いものに触れたかのように、慌てて君の喉から手を離した。

「あ…」

信じられないものを見るように、両手を見下ろす。

ながれ落ちる涙が怒りのためなのか安堵のためなのか、僕にはもうわからなくなっていた。

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