俺はどうしても主人公にはなれない

旅ガラス

すれ違い編

第1話 天文部に入部するまで

 高校1年生、俺はとある高校に入学した。

 偏差値普通、スポーツ普通。

 特に個性的な行事があるわけでもなく、家から近いという理由で選んだだけの学校。

 唯一噂されていることがあるとするならば、先輩でとても綺麗な人がいたということぐらい。


 友達と呼べる奴は、中学の時から一緒だった桐生きりゅうはやてぐらい。

 名前から既に滲み出ているけど、こいつはとんでもないイケメンだった。

 ひと昔前に流行ったような所謂やれやれ系主人公みたいな、決して明るいわけじゃないんだけどこいつがそういう態度を見せても様になっているみたいな。

 何でそんな奴と俺が友達なのかと言えば、特に劇的な何かがあったわけでもなく、ただ単に性格の波長が合ったから、としか言えない。

 中学時代はお互い運動するわけでもなくて、部活に入ってるわけでもなかった。

 だから一緒によく帰っていたりしてた。


 だいたい中学2年ぐらいの時ぐらいからだろうか。

 桐生がモテ始めた。

 まぁ見た目はジャニーズ系だし、見方を変えればクールにも見えるわけだから起こるべくして起こったイベントなのかなと。


 俺が知っている限りでも2桁は中学時代で告白されていたと思う。

 でも桐生は誰とも付き合わなかった。

 何でやねんって毎回突っ込んでたけど、断ってた理由が「あまりよく知らない人だから」だってよ。


 同じクラスの人も何人もいたのに。

 いくらなんでも他人に興味無さすぎだろって。

 もったいねーとは思いつつも、桐生の評判が全く下がらなかったことから、女子の方もある程度は無謀な告白だとは思ってたんだろーな。

 ただしイケメンに限る、とかずりーよ。


 俺?

 俺は告白されたことなんてゼロだよ。

 どうせイケメンじゃねーよ。

 でも別に女の子と付き合ったことがゼロってわけじゃねーよ?

 中学3年の夏に別のクラスの女の子に告白して、見事OKもらって付き合ってたよ。


 でも冬に入る頃に「最初から思ってたけど、私はあなたと合わないみたい。だから受験勉強に集中させて」ってメールが来て一方的にフラれた。

 すげーショックだったよ。

 結構好きだったんだぜ?

 でもそんなこと言われて未練たらしく追いかけるのも嫌だったからさ、連絡先消して、ラインとかもブロックして逆音信不通。

 学校でも一切話さなくなって、卒業式の日も一度も会わずにそのままバイバイ。


 …………思い出しても泣けてきた。


 まぁそんなこんなで俺は桐生と同じ高校に進学したわけで。


 入学してから桐生はその容姿からちょっぴり有名人になってたけど、男の容姿よりも盛り上がる要素といったら、どっちかっていうと女の子じゃない?

 別のクラスに凄い可愛い子がいるってことで見に行ったんだよ。

 桐生も誘ってみたけど、やっぱりアイツは「興味ない」って一蹴。


 で、実際に見てみたけど、高校で1番とかそういうレベルじゃなかったから焦った。

 確かに誰もが振り返って二度見するほどだ。

 身長は170弱ってほどで、茶髪のポニーテール、整った顔立ちで、笑うと口元にてをやる仕草がなんとも可愛らしい。

 そして誰にでも愛嬌を振りまくという、なんというヒロインりょく

 これは確かに噂になるレベルだよ。


 でも桐生は全然興味なさそうにしてた。

 お前本当に雄か?


 ついで、といっては何だけどもう1人有名な先輩のことも話しておく。

 最初に話した、噂になっている先輩というのも見てきた。

 こっちもやっぱり噂になるのが分かる容姿だったよ。

 こっちの先輩はどちらかというと綺麗系で黒髪ロング、特徴的なのは泣きぼくろがあることで、性格的には桐生に似ているなって思った。

 大人びているというか落ち着いてるというか。


 ちなみに同学年の女の子の名前が天条てんじょう美咲みさきちゃん、先輩の方が海野うんのあおいさんというらしい。

 情報収集は欠かせないからな。

 今後、なにかのきっかけで絡みがあるかもしれないし、知っていて損はない。


 他にも何人か可愛い子もいたけど、やっぱりこの2人が群を抜いているので霞んでしまう。

 高嶺の花すぎるんだぜ。



 高校に入ってからも仲良くしてた俺と桐生が部活に入ったのが4月の終わり頃。

 突然桐生が、部活に入るからお前も入らないか? って誘ってきた。

 今まで一度も部活になんて興味なかったのに、急にどうした? って思ったけど、何でも最近知り合った先輩が部活を新しく作りたいから、知り合いがいたら一緒に連れてきてくれとのことだ。

 要は人数合わせのためらしい。


 その部活というのが『天文部』という何とも微妙な部活だったけど、断る理由もないため、俺は二つ返事で答えた。


 それで後日、部活を作るっていってた先輩と会ったんだけど、ビビった。

 一体いつ、どういう流れで桐生が知り合ったのか全く不明だけど、その先輩っていうのが……海野先輩だったんだ。

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